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日本マンパワー「新型コロナがキャリアコンサルティング現場に与える影響調査」結果

調査研究

調査

2020.10.29


コロナ禍によって働き方、就職活動に大きな影響 ストレスやキャリアに関する相談が増加

国家資格キャリアコンサルタント養成講座を開催する株式会社日本マンパワーは、新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言を受け、国家資格キャリアコンサルタント有資格者を対象に、相談の対象者(従業員、学生、求職者)ごとの相談内容やその変化について調査を実施しました。
今回の調査の結果により、コロナ禍による緊急事態宣言を受け、個人のキャリアや生きかた、働きかたに、さまざまな影響が出ていることが明らかとなりました。従業員では先行きの見えなさによるキャリアへの不安、学生では就職活動への影響、求職中の方では収入面や雇い止めなどへの影響、そして共通してストレスや鬱などメンタル面などへの影響が挙げられます。
日本マンパワーでは、新しいライフスタイルへの移行によるこれからの働きかた、生きかたへの支援としてキャリアコンサルティングが有効だと考えています。弊社は、withコロナ時代の有効な支援者として質の高いキャリアコンサルタントの養成を通して社会へ貢献して参ります。
調査名:「新型コロナがキャリアコンサルティング現場に与える影響調査」
調査方法:弊社キャリアコンサルタント養成講座受講生向けメール配信、Web回答
調査期間:2020年5月23日(土)~5月29日(金)
調査対象:弊社キャリアコンサルタント養成講座を受講され、国家資格キャリアコンサルタントに合格された方かつ緊急事態宣言中にキャリアコンサルティングを実施された方
回答者数:387件
有効回答数:252件
<回答者の役割>

調査結果①【従業員】今後のキャリアや、在宅勤務、ストレスなどの相談が増加

就業者向けに相談業務を行っているキャリアコンサルタントによると、相談が増えたテーマは「今後のキャリアについて(47.9%)」、「リモートワークや在宅勤務について(43.5%)」、「ストレスや鬱、メンタル面について(39.5%)」「会社の事業や業績について(38.7%)」の順となった。
コロナ禍によるリモートワークや在宅勤務などの働き方の変化に戸惑い、今後のキャリアや会社の先行きなどに不安を抱える従業員の姿が浮かび上がる結果となった。

調査結果②【学生】就職活動や今後のキャリアや、在宅勤務、ストレスなどの相談が増加

同様に、相談が増えたテーマは「就職活動について(47.8%)」「オンラインによる授業について(34.8%)」「ストレスや鬱、メンタル面について(34.3%)」「学費や生活費など金銭面について(25.0%)」の順となった。
企業側の採用が止まり、WEBやオンラインでの対応に変わりつつある中、就職活動中の学生に大きな影響が出ていることが明らかとなった。また、従来と変わりオンラインによる授業への対応や、外出自粛などにより、ストレスやメンタル面にも影響が出ていることが浮かび上がった。

調査結果③【求職者】収入の減少や金銭面、雇用の終了の相談が増加

同様に、相談が増えたテーマは「収入減や生活費など金銭面について(57.2%)」「雇用期間の終了や雇い止めなど雇用について(43.9%)」「求職活動について(43.9%)」の順となった。
収入減や雇用、求職活動と、景況感が悪化しており、契約社員やパート・アルバイトなどの契約終了や雇い止めなどが生じていることが考えられる。

調査結果④キャリアコンサルタントの支援のマインドや心がけが重要

キャリアコンサルタントとして活かしているものについて、「支援のマインドや心がけ(68.7%)」が圧倒的にポジティブな回答となった。相談者が急な環境変化に戸惑い不安を抱えている状況下においては、知識やスキルよりも、気持ちや感情に丁寧に寄り添っていく姿勢がキャリアコンサルタントにとって重要だと考える有資格者が多いという結果となった。
また、政府の提唱する新しいライフスタイルに順じて、キャリアコンサルタントに求められる知識やスキルも変わっていくため、状況に即した最新の知識やスキルへとブラッシュアップが必要だと思われる。

所感「キャリアコンサルタントは個人の自律と、集団自己効力感の醸成の支援を」

新型コロナウィルスの感染拡大の影響は、①予測できないところから、②急速に拡大し、③広範囲(世界規模、ほとんどの業種・職種)に、④大きな影響(対人接触回避や特定職種への過負荷)を与え、⑤長期にわたり収束の見通しが立たない、という5つの特徴があります。
このため、調査結果からも、生活(お金や家族関係)や仕事(会社業績や就職)、学業への不安、働き方の変化へのとまどいが見て取れます。背景には、個人では対処できない「無力感」、生活や働き方の大きな変化に対応しなければいけないという「被強制感(義務感)」がありそうです。働き方の変化への対応はコロナ前から言われていましたが、変化を望まずやり過ごしたいと考えていた人たちにとっては大きなストレスとなっているのでしょう。
このような中、キャリアコンサルタントには、以前にも増して、相談者の「良しとする自分や社会(自己概念)」を明確化し、そこを目指すエネルギーをもとにして、出来事(コロナ禍)を自分事化し、できることから着手していけるような支援が求められています。また、リモートワークや在宅勤務では、業務上の細かい指示がなく個人の裁量が大きくなるため、自ら仕事を計画し実行するという「自律心」が求められます。この「自律心」の有無により、個人のスキルの蓄積にも、組織のパフォーマンスにも大きな差が出てきます。これはオンラインのキャリアコンサルタント養成講座の受講生にも実際に見られています。ここでも働くことへのモチベーションの源泉となる自己概念を明確化することから、「自律心」を引き出すような支援が望まれます。
最後に、キャリアコンサルタントへの期待として個人への支援だけではなく社会や組織への働きかけについて述べたいと思います。今回のような問題は、個人で対処するには限界があります。社会、組織として、ありたい状態を共有し(共に創り)、そこへ向かっていくことが必要になります。そのためにキャリアコンサルタントに期待されるのは、自分たちが目指す先に何があるのかという「集団結果期待」と、自分たちにはそれを実現することができるという「集団自己効力感」の醸成を支援することです。その他、物理的に人が会ってコミュニケーションすることの意味が見直され、オンラインによるコミュニケーションの可能性や限界が見えてくるなど、キャリアコンサルタントにとっても大きな環境変化が起きています。こんなときこそ、予測できない環境変化を前提に、出来事を自分事化するプロセスを学んできた我々が真価を発揮するときです。キャリア相談だけがキャリアコンサルタントの役割ではありません。できることから取り組んでいきましょう。

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