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「それってイミありますか?」 -Z世代が問いかける、これからの働き方のリアルとは-

イベント

2022.2.8


Z世代が話題となっています。世界の人口の四分の一を占めると言われ、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんや昨年の東京オリンピックでもメダリストが続出するなど、世界をリードする存在となっています。では彼ら彼女らは、どのような背景のもとで、どのような価値観や働くことへの意識を持っているのでしょうか?昨年末、早稲田大学社会人キャンパスWASEDA NEOで行われた講座「Z世代のリアルから見える『働き方』の未来」のレポートを通じて探って行きます。
本講座で講演者を務めたのは、株式会社電通で「若者から未来をデザインする」をミッションに掲げ活動する電通若者研究部(電通ワカモン)の皆さん。同社では、社員一人ひとりの問題意識に根差した社内横断ラボが多数活動していますが、中でもワカモンは「最も未来に近い人」そして「未来をつくる人」である若者の視点を通じて、常に未来の姿を探求・提唱して来ました。その活動指針は「データ×リアルな感覚」。様々なリサーチを実施すると共に、現役大学生との共創プラットフォームを通じてリアルな感覚を収集しソリューションを開発しています。
電通若者研究部(電通ワカモン)若者から未来をデザインする (dentsu-wakamon.com)

【「電通ワカモン」の皆様】

同ラボに参加する3人のラボメンバーによる講座は、以下の3つのパートでプレゼンテーションが行われました。

〇成長背景から見る、Z世代インサイト

最初のテーマ「成長背景から見る、Z世代インサイト」についてのプレゼンテーションは西井美保子さんから。1950年代の「太陽族」「カミナリ族」以降、常に社会の注目を浴びて来た若者像の変遷を年表でたどりながら、Z世代の特徴を生んでいる4つの成長背景が紹介されました。
第一は、不況、世界的テロ、東日本大震災をはじめ未曽有の自然災害といった様々な変化と隣り合わせに育って来たため「環境変化の常態化」に馴れていること。第二は、初めて持ったデバイスがスマートフォンであり、SNSを当たり前のように使いこなす「スマホネイティブ」であること。
こうした時代背景のもとで、Z世代はどのような価値観を持っているのか。ミレニアル世代との対比で浮き彫りにされました。
まずミレニアル世代は多感な時期にSNSが発達し、世の中と急激につながったために「周りの眼」にさらされたことで、「自分の本音」と「実際の行動」の間に【周りにどうみられるか】というフィルターが生まれました。それによって以下の3つの価値観が生まれた、と西井さんは語ります。
第一は、検索すれば正解がわかると考える「検索ど真ん中世代」という特徴。第二は、2007年の流行語大賞になった「KY」に象徴されるように、空気が読めないとコミュニティの中で浮いてしまう、脅迫観念が生まれたこと。第三は、ゆとり教育を受けて来たことから、競争より協調を重んじること。総括すると、ミレニアル世代とは、主語が「私」から「みんな」へと変化した世代と言えます。
これに対して、Z世代は物心がついた時からSNSが身近にあり、周囲の眼があるのは当たり前、世の中と常時接続する環境で育って来ました。それによってミレニアル世代とZ世代を隔てる4つの特徴が生まれた、とワカモンでは分析しています。

第一の特徴:「より進む合理主義」。

これまでの当たり前が通用しない時代に育ったことで、これまでの時代が当たり前とされてきたことに対して、前提を疑い本質を問いかける力が育まれて来ました。それを象徴する言葉が「それって、意味ありますか?」。

第二の特徴:「タイムパフォーマンス重視の行動」。

情報大爆発とも言える時代に生まれ育ったために、情報は自ら探しに行くというより選んで捨てるものという捉え方をしています。そして、同じ時間でどれだけのものが得られるか、コストパフォーマンスならぬタイムパフォーマンスを重視するようになりました。

第三の特徴:「サステイナビリティ・ネイティブ」。

地球規模の持続可能性が注目を集める時代に育ち、多くの災害を目にしたり体験したりすることで、サステナビリティは、決して意識が高い概念ではなく、学校でも習う当たり前の概念になっています。これによって「リーズナブル」という言葉も、単に価格が安いだけではなく、明確な理由があるかどうかを求めるようになっています。

第四の特徴:「バーチャルもリアル」。

Z世代にとって、リアル(現実世界)とバーチャル(仮想空間)は対立軸ではなく、リアルの中にフィジカルとバーチャルが存在し、両者はフラットな関係性にあると言え、その境界を自在に行き来しているのです。同時に、裏側が見えるネットの世界の体験を通じて、あらゆる企業活動において「透明性」を求めるようになっています。
Z世代の価値観とは何か。西井さんは以下のように総括しました。
西井さん 「絶対に大丈夫」なものはない、という漠然とした不安が自分らしい能力・スキルを獲得したいという意欲を増幅させ、一般化された正解よりも、自分だけの正解つまり「納得解」を求めている、という事が言えそうです。

〇激変する「働く」価値観の変化の兆し

ミレニアル世代との対比で浮き彫りになったZ世代の価値観ですが、コロナという環境変化によって「働くこと」の価値観も変化する兆しが見え始めています。それを解き明かしてくださったのが、湊康明さん。
最初に紹介されたのが、いくつかの衝撃的なデータ(データソース)です。「入社前に配属保証して欲しい」と回答したのが96.1%。「ミスマッチを感じたら3年以内に離職する」が84.3%。「複数の会社に勤めると言う働き方に興味ある」が67.7%。こうした価値観を持つZ世代の、働くことへの想いを一言で表現するとすれば「石の上にも3年も待てない。だが、好きなことには全力」
続いて、Z世代の生の声を定期的に収集しその傾向を分析する「ツギクル」というレポートでは、その3つの兆しが紹介されました。

新しい兆し#1:自己犠牲的な〇〇の崩壊

プライベートの時間や自分のポケットマネーを仕事の人間関係に捧げるような仕事観、ガマンして〇〇をするといった企業戦士的な概念が崩壊し、プライベートの充実や抗ストレス市場が盛り上がっていく傾向が見られます。それを示す事例として、グリーンオフィスや定額制宿泊サービスなどが急速に拡大しています。

新しい兆し#2: パーツ化する職場意識

メインの仕事で、一本気にがんばる職人気質な概念が崩壊。例えば「安定感×意思の発露」という2つのニーズを掛け合わせ、複数の職場をパーツのように組み合わせ自己表現できるように空間を編集する取り組みや、自己表現のためにスキル習得や環境づくりに積極的に投資する動きが生まれています。それを示す事例として、女性のための働き方を支援するためのクリエイティブスキルレッスンやコーチングプログラム、ジョブ獲得サポートの機会を提供するサービスが次々と生まれています。

新しい兆し#3:帰属母体としての地元

不況の時代に生まれデフレの時代に育ったZ世代は、その80%以上が日本の将来に不安を抱えています(ワカモン調べ)。母体としての企業の安定感が弱くなったからこそ「会社以外の帰属母体」を求めるようになっています。地元や副業は、その典型例。そんな「新しい帰属の形」を支援するサービスの需要が拡大しています。
働く環境を心地よいものに整え、複数の職場を組み合わせて自己表現し自身の帰属を安定させたい。それが、Z世代の働くことへの価値観。こうした変化に伴い、企業への影響度が最も大きかったのが学生のリクル―ティング領域です。

〇明日からできる!採用手法の新たな潮流

副業を認める企業が増え、終身雇用が崩壊し、採用ルールが変化するなど、就職活動を取り巻く環境も大きく変化しています。そして、コロナというインパクトによって今までの
採用手法も通用しなくなっています。しかし、見た目のエントリー数は減らないためにその変化に気づきにくい。知らず知らずの間に「選ばれない企業」になるリスクが増えています。

そう語るのは、このパートを説明した用丸雅也さん。ポイントは、採用を人事課題ではなく「経営課題」つまり全社ゴトと捉えること。ワカモンは、マーケティング・クリエイティブの発想を採用に取り入れ「個社別の採用活動・採用広報の型」を作成し、自走できる自社採用チームの強化を支援しています。その取り組みから導き出した「明日からできる、採用手法の3つのヒント」を紹介くださいました。

ヒント1:3C分析を踏まえたコアメッセージの開発

多くの企業が自社視点だけで採用を行っており、結果的に競合に埋もれ、学生と温度差が生まれている、といいます。しかし、Z世代にメッセージを伝える時に考えるべきは競合の存在。また「綺麗ごと」を語るだけでは埋もれる可能性が高くなります。
こうした分析を踏まえ、メッセージ開発に際しては以下の2つのステップを踏む必要があります、と用丸さん。まず「What to say(何を言うか)」で差別化する。つまり、その企業の本質や哲学を言語化する。続いて「How to say(どう言うか)」で差別化する。つまり、オリジナリティのあるコアメッセージの開発が必要となります。

ヒント2:コアメッセージを起点に、採用コミュニケーションを設計する

ワカモンは、採用ブランデイングにおける基礎的な型シートを開発。コアアイデアの開発に始まり、企業広報ステークホルダーへの活用に至るまでを5つのフェーズで可視化しています。中でも重要なのが「インターン開発領域」。しかし、インターン市場も多様化しつつあります。
用丸さん ありがちなのは「新規事業を考えよう」というパターン。しかし、これでは学生の側にメリットがありません。また、自社を全面に出したインターンシップの場合「もともと自社に興味がある人」というフィルターがかかってしまいます。そこで、コミュニケーションの入り口を変えることで採用効率は下がっても新たなターゲット層が参加したくなるインターンシップをつくる必要があるのです。
こうした分析に基づいて、ワカモンでは就活の地方格差問題に一石を投じるべく、コロナ禍だからこそできる就活アクションとして、47の都道府県から一人ずつ選出された47人の学生が参加するオンラインインターンシップ「47INTERNSHIP」などの取り組みを開発しています。

ヒント3:個社別のリクルートジャーニー

ヒント2で紹介された型シートに基づき、ワカモンでは内定承諾までの動きを可視化しカスタマージャーニーを採用活動向けにアレンジしたた個社別のリクルートジャーニーを作成。毎年、定点・定量調査を行うことでアップデートしています。

〇質疑

講演の後は、参加者からの質問が相次ぎました。

「日本のZ世代の特徴は?」。

アメリカのZ世代との比較調査を行った結果、アメリカの若者にとって「政治に関わることはCool(カッコいい)」。それに対して、日本の若者の政治への関心の薄さが明らかになりました。一票の格差が大きい、国会の意思決定に関われないなど、政治との距離の違いによるもの、という分析を行いました。

「Z世代へのNG(やってはいけないこと)は?」。

ここでのキーワードは「上から目線ではなく、横から目線」。正解がない時代に「こうやれ」ではなく「なぜ、やらなければならないのか」というコミュニケーションが求められます。リーダーシップも「俺についてこい!」ではなく、時にはいじられる「伴走する」あり方が求められています。

「Z世代は、好きなことをどのように探しているのか?」。

個人の能力で稼げる時代になりつつあるいま、Z世代の悩みは「会社に入るか、会社に入らずに”自分の好き”で生きて行くか」の2択。一方、好きなことを持たなければいけない同調圧力に苦しむ若者も増えています。
「逆説的なようですが、Z世代で括らない、決めつけない視点も大事です」とワカモンの皆さんは講座を締めくくりました。「最も未来に近い」一人ひとりが輝きを放つことは社会全体が混迷から抜け出すことにつながり、その姿を他人事ではなく自分ゴトとして捉えることが、私たちにとっても未来を生きるヒントになるのではないでしょうか。