条件を整えられるか
それが分かる前は、知識の伝達部分だけをオンラインで実施して、ロールプレイング等は後日実施するということも実は選択肢として存在していました。Zoomのブレイクアウトセッションの機能が使えるということが突破口となって、知識伝達とグループ学習を組み合わせた対面での養成講座と同様の形態の実現にめどが立ちました。
手探り
最初は、できるだけ確実に講座を進行できるよう、ブレイクアウトルームの使用頻度を多くなりすぎないように、また休憩も頻繁に取るようにとカリキュラムは考えられました。講座45分に対して15分の休憩を取って、受講生の疲れを軽減するようにし、またスマートフォンで受講している方の電池の充電にも配慮するようにしました。
対面から急遽オンラインに切り替えを行ったため、最初に作成されたのはキャリアの理論を学ぶ講座5日目のカリキュラムでした(当時)。さまざまな要素を勘案しながら1日分のスケジュールを組み立てた結果、試験的に実施したブレイクアウトセッションも充分使えることがわかり、以降のカリキュラムではそれらの経験を十二分に生かしていく方向性となりました。
決断
しかし当社では、「感染者を出さない」という大原則を守りつつ、6月の国家試験に向けての学びの提供を継続することを選択しました。その解が「通学講座の全面オンライン化」だったのです。
この選択は、受講生には感染者を出さないことになる一方、講座を運営する社員や講師には感染のリスクが高まるということを意味します。この点について、事業責任者である田中は大いに悩んだと言います。万が一、感染者が出たら退職願を書くつもりだったと話してくれました。
「辞めて責任が取れるというわけではないけれど、誰かが責任を取るのだとすれば、そういう形になるんだと思った。」
おそらく、こんな決断が日本全国に、そして世界各地に存在しているのでしょう。
こうした決断に講師のみなさんが応えてくれました。
「こういう対応ができる会社で講師ができて幸せ」
急ピッチで進むオンライン化の中、多くの講師がそんな風に言ってくれたそうです。講師陣が心を合わせて素早く対応してくれたことは、オンライン化を支えた大きな要因だといえるでしょう。
品質を支えるもの
結論を言えば、全く同じであるはずはなく、それぞれに長所短所がある、というのが正直な答えになるでしょう。
例えば現状において、オンラインのほうが感染リスクを抑えることができ、受講する方は受講に集中することができるでしょう。通学では出会えない全国の多様な方たちと一緒に学び、刺激を受け合うことも可能です。さらには、受講生の要望に応えて、講座とは別枠で「地域別交流ルーム」や「ロープレトレーニングルーム」を開設するなど、対面講座にはなかった要素も取り入れています。
その一方で、これをお読みのみなさまも想像がつくかと思いますが、オンラインと対面とでは違いがあるのも現実です。1対1のロールプレイなど話をするときに、相手の全身が見えているかどうか、そして例えばその際に、手元の動きなどの相手の微細な様子を見て取れるかどうかなど、現状では埋めようのない差が存在しています。こうした点に、不安や不満を示される方も、中にはいらっしゃいました。プラスの部分を評価するというよりも、マイナスに感じられる部分に目が行ってしまうケースがあったということです。厳しいことですが、そうした声に真摯に向き合いながら、これまでも講座の改善を図ってきましたし、そして今後もその姿勢は変わりません。
あるとき、事業責任者の田中がCDA事務局のメンバーに向けてこう言いました。
「厳しいお声をいただくこともあるけれど、受講生のためを思って当社としてはできることを精一杯やっている。そのことをしっかり認識して、強い気持ちを持って対応するように。」
聞くと、自分たちは考えうる最善のことをやっているのだと、そういう自負を持ってもらえるように伝えたいと思ったそうです。
「ふと思ったんだ、家で。それを伝えるのが自分の仕事だ。」
長らくキャリアカウンセリング・CDAの広報として活動、現在は新規事業開発に挑戦中。集いと人文社会学と仏像巡りを好む。
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