先日、こちらの記事でご紹介しましたが、2021年1月15日、「キャリアのこれから研究所」設立記念イベントを開催します。
今回のイベントですが、日本キャリア開発協会会長の立野さんも映像出演してくださいます!立野さんがどんな方なのか、そしてインタビュー時に考えさせられたエピソードについて日本マンパワー緒方からご紹介します。
今回、なぜ立野さんをインスピレーション映像ゲストに選出したのか?
立野 了嗣(たつの りょうじ)氏プロフィール
日本キャリア開発協会会長、ACDA(Asia Career Development Association)会長。
1953年生まれ。
1977年関西大学社会学部社会学科産業心理学専攻(現:心理学専攻)卒業。
1978年株式会社日本マンパワー入社。
2003年日本キャリア開発協会理事長就任(~2016)。
2010年日本マンパワー取締役辞任退社。
2013年NPO日本キャリアコンサルティング協議会会長(~2015)。
2016年日本キャリア開発協会会長就任。
元大正大学客員教授、同志社大学専任講師、明治大学専任講師。
立野さんは、日本におけるキャリアコンサルティング普及推進の立役者といっても決しておおげさではないでしょう。1999年、当社が日本で初めて「キャリアカウンセラー養成講座(現・キャリアコンサルタント養成講座)」を開講した時の総責任者が立野さんでした。
また、2003年に日本キャリア開発協会理事長に就任されて以降、キャリアコンサルティングを誰にとっても身近なものにしたいという思いのもと、そのための活動に日々邁進されてきました。
また、2003年に日本キャリア開発協会理事長に就任されて以降、キャリアコンサルティングを誰にとっても身近なものにしたいという思いのもと、そのための活動に日々邁進されてきました。
今回のイベントで、「キャリア支援の未来」を考える場を作ろうという話になった時、「コロナ禍の中、日本のキャリアコンサルティングの歴史を作ってきた立野さんは、今後をどう展望されているんだろう。お話を聞きたいね」と企画メンバーから意見があがり、立野さんに映像出演をご依頼しました。
若い時の原体験が、活動のエネルギー源になる
インタビュー冒頭、先に取材したアーティスト小松美羽さんのエピソードを紹介すると、立野さんはとても共感しながら聞いてくださいました。特に、幼少時の原体験を、居ても立ってもいられず何かで表現したくなる気持ちは、よく分かると頷かれていました。
(※小松さんのご紹介記事も、当サイトで近日アップ予定です。お楽しみに!)
(※小松さんのご紹介記事も、当サイトで近日アップ予定です。お楽しみに!)
立野さんご自身も、大学時代のある体験が、キャリアコンサルティングへの探求心・普及推進活動のエネルギー源になっているそうです。
人との関係・宇宙との関係を、自分の中に取り込む
インタビューで伺った立野さんの原体験をもう少しご紹介します。
大学2年か3年の夏休み、ほとんどの学生が帰省してしまい、下宿先に、立野さんともう一人の先輩だけが残された時のことです。夜、ひとり静かに読書する毎日。ある夜、ふと「自分は何なのか。なにものも介さずに自分をこうだと規定したい」と立野さんは思いつきます。
大学2年か3年の夏休み、ほとんどの学生が帰省してしまい、下宿先に、立野さんともう一人の先輩だけが残された時のことです。夜、ひとり静かに読書する毎日。ある夜、ふと「自分は何なのか。なにものも介さずに自分をこうだと規定したい」と立野さんは思いつきます。
なにものか(誰か)を入れると、その誰かとの関係の中で自分を確認している気がする。関係を切った上で、自分をどう表現できるかやってみようと思ったそうです。夕食を食べた後の数時間、ひたすら考え続けたと言います。
しかし、その思考実験で立野さんが感じたのは、発狂しそうなほどの孤独感でした。その時、関係を切っていった上で残る自分という考え方は間違っていると悟ったそうです。
しかし、その思考実験で立野さんが感じたのは、発狂しそうなほどの孤独感でした。その時、関係を切っていった上で残る自分という考え方は間違っていると悟ったそうです。
「関係は外にあるのではなく中にある。人との関係、まわりのものとの関係を自分の中に取り込もう」と考えたと言います。現在、キャリアコンサルタント養成講座カリキュラムで習う「経験・関係の内在化」です。
全てを取り込もう、世界・宇宙を自分の中に取り込めばいいと思った時、とても平和で安らかな気持ちになったそうです。
全てを取り込もう、世界・宇宙を自分の中に取り込めばいいと思った時、とても平和で安らかな気持ちになったそうです。
経験の内在化と自分らしさ
この時の経験を、その後30年間、折々に思い出したと立野さんは語ります。「人や世界との関係を、具体的に自分の中に取り込む方法」が宿題として残っていたからです。多忙な毎日を過ごす中、なかなかじっくり考える時間は無かったそうですが、機は熟し、2009年、立野さんは「自己概念」や「経験代謝」という考え方を発表されました。
自己概念とは「自分と自分を含む世界をどう捉えているか」だと定義されています。自分を表す言葉だけでなく、世界をどう見ているかにも、実はその人らしさが表れるのです。また、「自己概念」の意味をもっと具体的に言うと「“よし”としているものの見方、考え方」だと言われています。
キャリアコンサルティングを進める上で、相談者の自己概念がどのように働いているか意識することはとても重要です。
キャリアコンサルティングを進める上で、相談者の自己概念がどのように働いているか意識することはとても重要です。
そして、経験代謝とは、人から経験の再現を導き、意味の出現をさせ、自己洞察を深めていくことで顕在化していなかったキャリアに関する悩み、課題、相談を表出させていくキャリアコンサルティングの手法です。
さて、立野さんの原体験のお話、大変長くなってしまいました。しかし、今までの話を通じて、自分らしさ・自己概念について、ちょっと理解できたかもという方がいらっしゃったらとても嬉しいです。
コロナ禍でキャリアについて考えること
「コロナは大災害で、人類にとって不幸以外の何物でもない。しかし、コロナショックで次のステージに変わる大きな変化が起こるのではないかという期待がある」と立野さんは語ります。
コロナ禍により、グローバルに限らず国内でも様々な人の行き来・関わりが分断され、私たちは今、分断による弊害を強く実感しています。しかし、分断によって多々困りごとが生じているからこそ、今までは空気のように当たり前の存在だった『つながり』が、強く意識されるようになったとも言えます。
「社会は『つながり』によって保たれていたのだと、人々の意識に浮き上がってきたのではないか。
今まで、キャリアカウンセリングが向かっていく方向は、『つながりの幸福』とずっと言ってきた。コロナ禍によって『つながりの幸福』が見直されるようになるのではと思っている」と立野さんは言います。
今まで、キャリアカウンセリングが向かっていく方向は、『つながりの幸福』とずっと言ってきた。コロナ禍によって『つながりの幸福』が見直されるようになるのではと思っている」と立野さんは言います。
未来展望 今後は1つの企業で働き続ける方が不自然な時代になる!?
先ほどの「つながり」の話にも関係してきますが、立野さんは、コロナ禍の中起こっている従業員シェア、副業活発化の動きがとても興味深いと言います。
企業が、人手不足の企業に自社従業員を派遣する「従業員シェア」。従業員が主体的にしていることではありませんが、従業員が1つの企業に囲われるのではなく、複数の企業とつながっている方が、自然で人間らしい気がすると、立野さんは言います。
また、コロナによって、副業を始める人がますます増えてきました。今後は、月火はA社、水はNPOのB団体、木金はC社というのが普通の時代になるかもしれないとも語っていました。
言い切ってしまうと、今後は1つの企業で働き続ける方が不自然な時代になると。
また、コロナによって、副業を始める人がますます増えてきました。今後は、月火はA社、水はNPOのB団体、木金はC社というのが普通の時代になるかもしれないとも語っていました。
言い切ってしまうと、今後は1つの企業で働き続ける方が不自然な時代になると。
ちょっと話が極論すぎるでしょうか?
立野さんのこの未来展望、賛否両論あると思います。日本では長らく終身雇用が続いてきました。1つの会社に長く在籍し、経験値を重ねることで発揮できる価値ももちろんあります。また、収入のことを考えると、現在の日本では、1つの会社で正社員でいた方が有利なようにも思われます。
立野さんのこの未来展望、賛否両論あると思います。日本では長らく終身雇用が続いてきました。1つの会社に長く在籍し、経験値を重ねることで発揮できる価値ももちろんあります。また、収入のことを考えると、現在の日本では、1つの会社で正社員でいた方が有利なようにも思われます。
立野さんの未来展望、私もとても深く考えさせられました。少し発想を転換し、企業と人のつながりを、人と人のつながりに置き換えて考えてみることにしました。
企業と人のつながりを、人と人のつながりに置き換えて考えてみると・・・
人と人の関係だと、1つの関係より、複数の関係を持っていた方が安定すると言われます。例えば、親子関係だけより、親と子・夫と妻・仕事仲間・趣味仲間というように複数の関係を持っていた方が良い。どこかの関係が危機に陥った時、違う関係があることで、1つの関係への依存・無理が生じにくいと。
また、筆者である私自身の話になりますが、仕事仲間の前の自分と、趣味仲間の前での自分は、ちょっと違っている気がします。会社では「全体を見て、手がまわっていない所に気がついて率先して動ける自分」であることを意識していますが、趣味仲間の前では、自分が年下ということもあり、「先輩の後をついていって、作業をお手伝いするのが楽しい自分」がいるのです。
また、筆者である私自身の話になりますが、仕事仲間の前の自分と、趣味仲間の前での自分は、ちょっと違っている気がします。会社では「全体を見て、手がまわっていない所に気がついて率先して動ける自分」であることを意識していますが、趣味仲間の前では、自分が年下ということもあり、「先輩の後をついていって、作業をお手伝いするのが楽しい自分」がいるのです。
人と人とのつながりにおいては、複数の関係がある方が、無理なく自然体でいられたり、「それぞれの関係性の中で引き出される自分」を楽しめたりする面があるのではないでしょうか。
こう考えると、収入面、複数の場所でバランスよく働けるのか等の不安は尽きませんが、複数の企業とつながることで、色々な自分らしさが引き出されるメリットはあるのかもしれないと思えてきました。
こう考えると、収入面、複数の場所でバランスよく働けるのか等の不安は尽きませんが、複数の企業とつながることで、色々な自分らしさが引き出されるメリットはあるのかもしれないと思えてきました。
しかし、今まで書いたことは私の個人的な感想です。今までの記事を読まれて、お一人おひとり、色々なご意見・ご感想をお持ちだと思います。ぜひ、イベントで皆様からご感想・ご意見をいただければと思いますし、対話の場が色々な刺激につながっていったらいいなと思っています。
立野さんのアフターコロナへの願い「分断と管理の経営から、対話とつながりの経営へのシフト」。また、人間性の発揮というイベントテーマからいただいた「人間性と生産性(効率)は相反する存在ではない」との投げかけについても、イベントやイベントレポートで、またご紹介できれば幸いです!
最後に一言。私が立野さんとお会いしていつも感じるのは、人に対する温かい眼差しです。キャリアコンサルタントは、相談者の成長する力を信じて、好意的関心を持って関わることが重要と言われますが、立野さんはいつも体現されているな~と感じます。
いつか、当サイトで、立野さんと私のエピソード(立野さんが引き出してくださった、私の「自分らしさ」)をご紹介できたら嬉しいです ^ ^
いつか、当サイトで、立野さんと私のエピソード(立野さんが引き出してくださった、私の「自分らしさ」)をご紹介できたら嬉しいです ^ ^
プロモーションイベントの運営・実務を担当。趣味は読書といけばな。最近、涙もろいのが悩みです。
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