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キャリこれ

オンラインでキャリアコンサルタント養成講座を! ~「学び」の実現に向けて経験したこととは?(その3)

調査研究

開発

2021.1.13


「キャリアコンサルタント養成講座のオンライン化」は、私たち社員だけでなく、多くの人たちとの関わりによって成り立っています。講師のみなさんや、講座の運営をお手伝いいただくサポーターの方々などの運営側。そしてもう一方にたくさんの受講生がいらっしゃいます。本稿ではオンライン化するうえでの検討ポイントの第4点目、約800名の受講生への対応について話を進めたいと思います。

ひとつひとつが学びの蓄積

前々回の原稿でお話ししましたが、弊社が初回のオンライン講座を実施したのは3月14日のことでした。時系列的に追ってみますと、政府が全国すべての小中高校に休校要請をしたのが2月27日の木曜日。翌2月28日の金曜日には厚生労働省から「新型コロナウイルス感染防止等のための当面のキャリアコンサルタント養成講習・更新講習に係る対応について」が示されました。当社はその日のうちに受講生に対して、翌日・翌々日の土日に実施される会場での講座の受講を控えるよう呼びかけを行っています。そして、その分の振替として実施されたのが、3月14日から開始されたオンライン講座だったのです。
こうした新型コロナウイルスへの対応を、ひとつひとつ決まり次第お知らせしていくと、受講生のみなさまからのお電話での問い合わせも増えていきました。最初に目立ったのは、受講環境についてのお問い合わせです。手持ちのパソコンやスマートフォンでの受講はできるのか、自宅のインターネット環境で受講はできるのか。なかには1回あたりの通信容量について、具体的に算出してお伝えするといったケースもありました。また、各企業が在宅勤務を増やしていった時期には、デスクトップパソコンに取り付けるWebカメラの在庫がなくなってしまい、どこであれば調達できるのだろうか、といった問い合わせもありました。そうした問い合わせに、一つ一つ対応することが、私たちCDA事務局にとっても学びの蓄積になっていきました。

テストルームという場

「テストルーム」も学びの蓄積につながりました。「テストルーム」とは、受講生のみなさんがZoomで接続できるかどうかを実際に試していただくために実施しているものです。最初には3月10日から13日までの4日間、CDA事務局メンバー全員が交代で18時から21時まで実施しました。当時は、Zoomでの接続に慣れていない受講生も多く、「音声が聞こえない」「映像が見えない」「通信が途切れてしまう」といった相談が少なからずありました。Zoomでつながらない方には、携帯電話でお話をしながら、一つ一つ症状を確かめながら対応を進めました。こうしたケースというのは、シンプルではない症状ばかりで時間はかかりましたが、Zoom上での会話が可能になったときには、受講生の方とお互い喜んだものでした。私たちCDA事務局にも、当時は分からないことも多く、インターネットで検索して情報を収集しては受講生にお伝えして試してみるなど、少しずつ対応方法を学んでいったのがこの時期でした。
「テストルーム」はその後も継続され、現在もオンライン講座の開講前には実施しています。
「テストルーム」を終えたある夜、それは緊急事態宣言発出の数日後だったと思いますが、会社から帰宅のために駅に向かって歩いた神田の街が、人気がなく、とても静かだったことを今でも鮮明に記憶しています。歩きながら若い同僚とこんな話をしたものです。
「静かだねー」
「静かですねー、どうなっちゃうんでしょうねー」

それぞれの背景

もともと各地の会場で実施される予定だった講座を、オンラインで実施するということは、受講生の方が講座を受ける場所が変わるということを意味します。この受講場所についての相談も、最初の頃は多く受けていました。多かったのは、Wi-Fiの環境がすぐには整わないという相談です。また、家庭内で受講するのが実は困難だというお話もありました。よく聞くと、お子さまが小さくて、お母さん(その方が受講生)が家に居るとなると、どうしてもお子さんが近づいてきて、落ち着いては受講できないということでした。いろいろとお話をうかがいながら、この方の場合は、ご家族と相談して受講を検討するということに落ち着きました。これとは別に、0歳児のお子さんを持つ方からは、預け先を探そうと思っていたが、それが必要なくなって、さまざまな面で助かったというお声もいただいたりしました。講座を受講していただく場所ということにも、さまざまな意味があるんだということを気づかされたお話でした。
中には、新型コロナウイルス対応の最前線で働かれている方もいらっしゃいました。人によっては受講を断念せざるを得ないケースもありました。詳しくは書けないのですが、たいへんに神経を遣われながら、日々過ごしていらっしゃることが良くわかりました。おそらく、CDA事務局のメンバーの一人一人が、そうしたお話に耳を傾けていたのだろうと思います。これまで以上に、受講生お一人お一人の背景を、深く感じとりながら相談に対応する日々となりました。

つながり

オンライン講座への移行が進み、ノウハウが蓄積されていくと、徐々に講座の運営は安定していきました。講座での学びが進んでいくと、次に受講生から要望がでたのが「つながり」でした。
オンライン講座の一つの特色は地理的制約を受けないということです。全国各地の同じ志を持った人同士で学ぶこと。それがとても刺激になったという声を数多くいただきました。その一方で、会場での受講であればできていたであろう、住まいの近い方同士の「つながり」も作りたい、という声があがってくるようになりました。キャリアコンサルタント試験には実技試験があります。これは、相談者に対するキャリアコンサルティングを試験官の前で行うというものですので、どうしても一人だけでは学習を進めることができません。一緒に学ぶ相手が必要なのです。また、弊社講座の修了生が、講座を受講してよかった点として挙げてくださるのも、受講生同士の「つながり」なのです。
こうした期待に応えるために開始されたのが「地域別交流ルーム」でした。講座の時間とは別に、地域毎に集まるためのZoomミーティングを設定し、受講生同士での情報交換の場を設けました。ある時は、先輩の有資格者にボランティアで参加してもらって、資格の活用方法などの質問に答えていただいたりもしました。「地域別交流ルーム」は、現在もオンラインでの受講期間中に2回、主に平日の夜間に実施しています。私も時折、司会進行役で参加させていただていますが、各グループでは展開されているお話はこんな感じです。
「私も、○○駅を利用しているんです。お近くですね!」
「通信教育の添削課題、どこまで終えました?私、進んでいなくって…」
「ロープレの勉強会って、いつ頃から、どれくらいやるといいんでしょうね…?」
こうしてできていった「つながり」は、講座終了後もさまざまな形で続いているようです。

かかわる世界を広げる

私たちCDA事務局の経験は、今も現在進行形で続いています。これから、どのような事態が起こるのか、だれにも予想はできません。幸いなことに、本日時点では、受講生にも社員・講師にも感染者は出ていません。ほぼ毎週、そして全国で講座を実施しているという状況においては、これは本当に幸運なことなのかもしれません。しかしそれは、いつまで続くかはわからないのです。今後もおそらく、その時その時の状況に応じて考えて、スピード感を持って対応していくことになるのでしょう。
今日に至るまでには、厳しい声をいただくこともありましたが、一方で私たちを支える言葉にもたくさん触れることができました。例えば、電話相談が終わった後の「ありがとう」という言葉。例えば、講座の最終日に書いていただくアンケートに「ここまでやってくれたことに感謝します」とたくさんの方が書いてくださったこと。こうしたプラスのメッセージに、私たちも救われていたのではないかと思います。
こうした言葉に接していると、人は、今度は自分がプラスのメッセージを発する番だと思うようになるのかもしれません。それを通して自分が働きかける対象を増やし、それぞれとの関係を深めつつ、自分事だと思う世界を広げながら、「私たちのしごと」は明日に続いていくことになるのでしょう。
(終)
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