キャリコン講座責任者に聞く!ニューノーマル時代に求められるキャリアコンサルタントとは?分断とは?これから身に着けておくべき力とは?
インタビュー
社員
2021.4.8
2020年4月の緊急事態宣言発出から1年が経ちました。
環境が劇的に変化する中、対人支援を行うキャリアコンサルタントはどうあるべきなのでしょうか。また、相談者にどのようにかかわっていくことが必要でしょうか。
事業責任者で取締役の田中に聞きました。
環境が劇的に変化する中、対人支援を行うキャリアコンサルタントはどうあるべきなのでしょうか。また、相談者にどのようにかかわっていくことが必要でしょうか。
事業責任者で取締役の田中に聞きました。
田中さんのご紹介をお願いします
日本マンパワーでキャリアコンサルタント養成講座の責任者をしております田中です。
部署全体のマネジメントをはじめ、カリキュラム作り、試験対策講座、スーパービジョンなど事業の責任者をしております。
部署全体のマネジメントをはじめ、カリキュラム作り、試験対策講座、スーパービジョンなど事業の責任者をしております。
まず日本マンパワーの考えるキャリコンサルタント像を教えていただけますか
私どものキャリアコンサルタント養成講座では、就職・転職での悩み、職場にうまく適応できないといった「キャリアや働くことへの悩み」に対する支援ができ、さらに、相談者が自分自身で問題を解決していけるよう、相談者の成長を促す関わりができるキャリアコンサルタントの育成を目指しています。
「相談者の成長」という言葉がありましたが、もう少し詳しく教えていただけますか
まず、「自己概念」という言葉を紹介させてください。
自己概念とは、自分自身をどう捉えているか、またもう少し広い意味で、社会の中での「自分」をどう捉えているのかということです。
自己概念とは、自分自身をどう捉えているか、またもう少し広い意味で、社会の中での「自分」をどう捉えているのかということです。
当社のキャリアコンサルタント養成講座では、相談者の「自己概念」の成長を支援することを重視しています。自己概念の成長は、まず自己理解から始まります。例えば、価値を感じていること・自分が好きなこと・得意なことをどう認識しているかに気づくことなどです。そして、社会の中での自分自身についての客観視がすすみ、それをもとに価値観・興味の幅を拡げたり、能力をさらに伸ばしたりしていくことを自己概念の成長と呼んでいます。
また、相談者が、所属する集団・社会の中でいかに貢献している実感を得られるかも、相談者の成長の一つと考えています。
また、相談者が、所属する集団・社会の中でいかに貢献している実感を得られるかも、相談者の成長の一つと考えています。
相談者個人が、自分の「やりたいこと」だけを追求していくのではなく、やりたいことを通じて所属集団の中で承認感を得る、貢献している実感を得られる。相談者の成長を支援するには、この両面での支えが必要であると考えています。
キャリアコンサルティング(キャリアカウンセリング)というと、相談者に、自分のやりたいことだけをやるように勧めるイメージを持つ方もいるかもしれませんが、決してそうではありません。社会との繋がりの中で幸福感を得られるように、その人なりの役割の持ち方や取り方を考えていけるようにサポートしていくのがキャリアコンサルタントであると考えています。
さらに言えば、人は発達・成長していくと、はじめは身近な人に対する貢献や、身近な社会における自分の役割を考えますが、徐々に視野が拡大していきます。地域社会、日本社会、世界や環境全体などの中で自分が果たすべき役割を意識するようになってくると言われています。それが徳を高めるということなのかもしれません。
このような視野の拡大も、成長の一つです。このように相談者が「成長」していける支援、そして一人一人が「成長」を実現していくことで役立ち感を得られるような社会の実現を意識して、キャリアコンサルタント養成講座のカリキュラムを作っています。
■キャリアコンサルタント養成講座 ホームページ
https://www.nipponmanpower.co.jp/cc/
https://www.nipponmanpower.co.jp/cc/
昨年1年間を振り返ると、パンデミックによる大きな環境変化がありました。このような変化の激しい時代において、キャリアコンサルタントには何が求められていると思いますか
明日何が起こるかわからないという状況が当たり前の世の中になりました。今回のコロナのパンデミックのことで言えば、本当に急に大きな変化が起き、予測していなかったことが多々あったと思います。
こういった予測のつかない急激な変化が起こる世界が常態化すると、人々は漠然とした不安、将来に対する不安を抱きやすくなるでしょうし、自分が所属する集団や社会に対しても不安を持ちやすくなると思います。
特に、生きていくための方向性、こういう存在でありたいという方向性を持っていないと、その時その時の判断や意思決定がぶれてしまい、戸惑い不安になってしまうことが多いでしょう。パンデミックを経て、ますます自分がどういう自分でありたいのか、どういう自分を「良し」として生きていくのか、しっかりと考える必要のある社会になってきていると思います。
一方で、別の思いもあります。
予測のつかない急激な変化が起こる時代、変化に適応するために準備しましょうという風潮が勢いを増しています。キャリアにおいても、「前もって、キャリア教育やキャリア開発を行って準備しておこう」という流れになっています。
予測のつかない急激な変化が起こる時代、変化に適応するために準備しましょうという風潮が勢いを増しています。キャリアにおいても、「前もって、キャリア教育やキャリア開発を行って準備しておこう」という流れになっています。
この事前に準備する・予防するという支援方法は、それらの支援を受けても、想定されたレベルに到達できなかった人に対し、より自己責任を問う傾向があります。「あれだけ支援してあげたのに、なぜあなたはできないのか」と責めがちです。
社会の各方面で、自己責任論が問われる時代になってきているように思います。支援が充実すればするほど、できなかった人に対する風当たりが強くなる。自己責任論には、そういったマジョリティが良しとする社会への過剰な適応を強いる面もあるのではないでしょうか。
しかし、いくら支援が充実しても、全員が同じように想定レベルをクリアすることは不可能です。また、様々な事情や特性などにより、今の社会には適応しにくい方もいらっしゃるのです。今の社会では、そういった方たちがダメな人とレッテルを貼られ、こぼれ落ちてしまいがちです。
教育を受けて、できるようになる人は沢山いると思います。キャリアについて考える機会を提供すれば、自分で自分のキャリアについて考えられる人もいることでしょう。一方で、固有の事情を抱え、自分ひとりではキャリアを考えるのが難しい方も大勢います。
そういった方たちの最終的なサポーターとしても、私たちキャリアコンサルタントの存在意義があるのではないかと最近思っています。
そういった方たちの最終的なサポーターとしても、私たちキャリアコンサルタントの存在意義があるのではないかと最近思っています。
世の中の多様な人たちに目を向け、それぞれの個性・強みを引き出し、社会との繋がりの中で幸福感を得られるよう、その人なりの役割の持ち方を考えていけるようにサポートしていく。それが今のキャリアコンサルタントの役割だと思います。
昨年は、分断や多様性が注目をされた年でした。こういった世の中の動きをどう見ていますか
分断を声高に叫ぶ人たち、自分と仲間、内と外を分けて、自分の身内の良いように物事を解釈したり、それ以外の他者を責めたりということが目立ったように思います。
ダーウィンの進化論を、「環境に適応できる強さを持ったものが生き残り、他は淘汰されていくこと」と捉え、権力や軍事力をかざして強くなっていくことが人類の進歩の方向だと思っている人たちが、分断を進める人たちの中にいるように思えます。
ダーウィンの進化論を、「環境に適応できる強さを持ったものが生き残り、他は淘汰されていくこと」と捉え、権力や軍事力をかざして強くなっていくことが人類の進歩の方向だと思っている人たちが、分断を進める人たちの中にいるように思えます。
しかし、生き残っていく「強さ」とは、本当に、軍事力や権力なのでしょうか。
私は、共に働く力や、多くの人たちを仲間と思って行動できる共感力、こういったものこそが人類が生き残っていくための「強さ」だと思います。
共働力や共感力を持っている人たちが最終的にみんなから支持されて生き残っていく、そう信じたいですし、そうなるだろうと思っています。
私は、共に働く力や、多くの人たちを仲間と思って行動できる共感力、こういったものこそが人類が生き残っていくための「強さ」だと思います。
共働力や共感力を持っている人たちが最終的にみんなから支持されて生き残っていく、そう信じたいですし、そうなるだろうと思っています。
ちょっと大きな話になってしまいましたが、分断を推し進めようとする人たちより、協調を推し進める人たちの方が最終的には強いことを、人類は証明していかないといけないと思います。それが人類の進むべき道ではないかと考えています。
このような環境下で、キャリアコンサルタント自身が意識していくことや、身につけておくべきことがあれば教えてください
そうですね、思うところを3つお話しします。
一つ目として、自分が持っている規範や価値観、善悪の基準など、自分の自己概念をいったん脇に置いて相談者に向き合うことを心がけてほしいです。共感や受容は、そこが前提になっていると思います。自分の心をニュートラルな状態にするのは難しいことですが、様々な判断基準・多様な価値観があふれる今だからこそ、このことを改めて意識してほしいのです。いうまでもなく、そのためにはキャリアコンサルタント自身が自分の自己概念を知っておく必要があります。
続いて二つ目。養成講座の受講生やキャリアコンサルタント有資格者の中に、人の役に立ちたいという気持ちが強い方が大勢いらっしゃいます。その気持ちは尊いものですが、全ての人の役に立てるという万能感を持っていると、時に、自分が役に立てない相談者が来たときに、「相談者側に問題があるのだ」と捉えてしまうことがあるかもしれません。
ですから、万能感と無力感のバランスを取ってほしいと思います。無力感だけではつらいので、万能感と無力感の間で、自分自身がどこにいるのかを常に意識してほしいと思います。
ですから、万能感と無力感のバランスを取ってほしいと思います。無力感だけではつらいので、万能感と無力感の間で、自分自身がどこにいるのかを常に意識してほしいと思います。
最後の三つ目。「キャリアには正解がない」ということを忘れないでください。数学であれば正解がありますが、キャリアコンサルティングでは、大半のことに正解がありません。相談者は自己概念に合致する方向で「自分にとってはこれが正解だろう」と意思決定していくのです。
答えがないことに耐えられる・答えがない状態に佇んでいられる、ということを身につけていただきたいと思います。
答えがないことに耐えられる・答えがない状態に佇んでいられる、ということを身につけていただきたいと思います。
■有資格者向け 更新講習のご案内
https://www.nipponmanpower.co.jp/cc/update_course/
https://www.nipponmanpower.co.jp/cc/update_course/
最後に、これからキャリアコンサルタント養成講座の受講を検討されていらっしゃる方へメッセージをお願いします
今までもお伝えしてきましたように、当社のキャリアコンサルタント養成講座は、相談者の自己概念の成長を支援する関わりを大切にしています。
色々な方にお会いする中で「自分にはキャリアの悩みが無いから、キャリアコンサルティングは必要ない」とおっしゃる方もいます。しかし、キャリアの悩みが無くても、キャリアコンサルティングを受けて、自分の価値観・興味・能力の幅が拡がることや、貢献したい対象や領域が明確になることで、個性を発揮しつつ役立ち感も得られる人生が見えてきます。
キャリアコンサルティングを通じて、相談者の成長支援(人生をより豊かにするお手伝い)をしたい方、そして、相談者の支援を通じて社会の発展に関わりたい方に、ぜひ当講座をご受講いただきたいと思っております。
本日はどうもありがとうございました。
本日はどうもありがとうございました。
CDA、キャリアコンサルタント、認定心理師。
趣味は公園やカフェで読書、シュノーケリング。最近の癒しはレッドビーシュリンプの育成。
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