【目次】※青の目次部分をクリックすると各章にジャンプします
1,組織開発のプロセスとなったプロジェクト
2,デザイナーは、「私たちの想い」をどのようにカタチにしたのか?
3,物語の運び手となった名刺
4,対話から浮かび上がって来たキーワード
5,キャリアと創造性の関係
6,クリエイターと非クリエイターは、どのように協業するのか?
7,すべての人に創造性がある
1,組織開発のプロセスとなったプロジェクト
2,デザイナーは、「私たちの想い」をどのようにカタチにしたのか?
3,物語の運び手となった名刺
4,対話から浮かび上がって来たキーワード
5,キャリアと創造性の関係
6,クリエイターと非クリエイターは、どのように協業するのか?
7,すべての人に創造性がある
去る9月13日に「クリエイティブの力で『働く』を元気にする方法」というイベントが開催されました。本イベントは、キャリアのこれから研究所にも参画頂いているメンバーであるレベルフォーデザイン・清水啓介さんと、私クリエイティブ・ジャーニー・酒井章が立ち上げた「みんなのクリエイティブサロン」が主催。
いま、デザイン思考やアート思考が注目されていますが、クリエイティブが持つ力の大きさ、その本当の価値に私たちは気づいているのか、クリエイター自身は、どのようなプロセスをたどってプロジェクトを開発しているのか。本サロンは、クリエイティブが持つ力やその魅力に触れるとともに、私たちの誰もがクリエイティブな存在になることができる可能性を感じて頂くことをめざしてスタートしました。その第2回として、日本マンパワーのCI(コーポレート・アイデンテイティ)プロジェクト「私たちの想い」の取り組みを取り上げました。
当日は、まずキャリアのこれから研究所所長の水野みちさんから「私たちの想い」の成り立ちをご説明した後、清水さんがデザイナーの立場で話し、司会の酒井を交えてのディスカッションという進行で行いました。このレポートでは、イベントを通じて浮き彫りになって来た「創造性とは何か」「キャリアにとっての創造性とは」についてのヒントをご紹介します。
1,組織開発のプロセスとなったプロジェクト
水野:プロジェクトのスタートは3年前に遡ります。創業から50年が経ち、未来の複雑性が高まる中、将来にわたり社会に価値を提供できる会社であり続けるために、改めて存在意義や実現したい姿を問い直し明確にして行くことが必要なのではないか。そんな問題意識から立ち上がりました。その手法も「日本マンパワーらしさ」を重視し、社員全員が参画するというプロセスで組織の活性化を図りました。
ビジョンの策定期(2018年から2019年初頭)には、対話型組織開発の手法を使って経営者と社員が合宿を行うなど対話を積み重ね、続く計画期(2019年春)は「求心力から遠心力」をキーワードに社員の意識を高め、社外に発信するプランの策定へ。そして、実行期(2019年夏から2021年夏)では、理念を体現する12色の名刺を制作。社内の求心力を高めるための名刺ワークショップを実施したほか、社外の方へのコミュニケーション発信ツールとして名刺を使用しています。
こうして社員全員が自分ごと化した「私たちの想い」。その想いをもとに社会との対話を進めるエンジンとして立ち上がったのが『キャリアのこれから研究所(通称:キャリこれ)』であり、オウンドメディアも発信中です。
特にオウンドメディアは、自主的に手を挙げた社員が自ら取材し原稿を作成しています。社員それぞれが、自分の想いや、どのような夢中になれる社会をつくりたいか、を自分の言葉で語り社外の方々に発信するというアクションが、組織の活性化とモチベーションの向上につながっています。
「こうしたプロセスを通じて、社員のミッション、ビジョンへの理解が高まり、社員同士が協力する力が高まったことがアンケートでも実証されました。それはお互い顔を合わせることが難しいコロナ禍において貴重なことだと思います」という言葉で水野さんは説明を締めくくりました。
2,デザイナーは、「私たちの想い」をどのようにカタチにしたのか?
清水さん率いるレベルフォーデザインの皆さんは、まず、これまでの日本マンパワーの歴史や理念を尊重しつつ「私たちの想い」に沿って、人同士が対話で目線を合わせる意図がより伝わる形でロゴをデザインし直し、次いで名刺のデザインに着手しました。複雑な時代をいかに乗り切るかを課題として捉える日本マンパワー側の想いを受け取り、自分の価値観だけではなく多様さを表現するために「12色の名刺」というアイデアに行きついた裏舞台も明かしてくださいました。
また、アイデアをいかに効果的に目に見える形にするか、がデザイナーの腕の見せ所。「数十案の中から現在の案に絞り込み最終案に行く着くまで、試行錯誤の連続でした」と清水さん。
3,物語の運び手となった名刺
では、このアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
通常、「これをつくりたい」という依頼が多い中、本プロジェクトでは「私たちの想い(ビジョン)は決まったが、それをどのように形にすればよいか、どう社内外に浸透させて行けばよいかを一緒に考えて欲しい」という日本マンパワーからレベルフォーデザインへの相談から両者のコラボレーションは始まりました。
通常、「これをつくりたい」という依頼が多い中、本プロジェクトでは「私たちの想い(ビジョン)は決まったが、それをどのように形にすればよいか、どう社内外に浸透させて行けばよいかを一緒に考えて欲しい」という日本マンパワーからレベルフォーデザインへの相談から両者のコラボレーションは始まりました。
「プロジェクトの初期から参画させて頂く方が、クリエィティビティを発揮できます」
と清水さん。
と清水さん。
そして、複雑な時代・世の中をいかに乗り切るかを課題として捉えていらっしゃることを深く受け止め、自分の価値観だけでなく多様さを表現するためにどのようなアプローチがあるのか、を考えた時に視覚的に直接訴える「色」というアイデアに行きついたと話してくださいました。
4,対話から浮かび上がって来たキーワード
このようなプロジェクトの成り立ちを通じて、創造性とは何か、キャリアにとっての創造性とは何か。イベントでの対話を通じて、いくつかのキーワードが浮かび上がって来ました。
第一のキーワードは「物語の力」。
名刺ワークショップで、自分のカラーを真剣に選ぶ社員
「デザインの力とは、モノだけではなく、それをいかに社内の物語に組み込むかが重要だということを学んだ」そして「デザイナーの皆さんと一緒に、名刺というカタチにするまでの物語の構築をできたことに大きな意味があった」と水野さんは振り返ります。
そして、出来上がった名刺を通じて、社員一人ひとりの物語が紡がれていきました。
そして、出来上がった名刺を通じて、社員一人ひとりの物語が紡がれていきました。
「私はなぜ、この仕事をしているのか?何を実現したくて教育・人材ビジネス業界に入ったのか?その『自分語り』が生まれたんだと思います。」
と水野さんは、名刺が果たした役割について振り返っていました。
と水野さんは、名刺が果たした役割について振り返っていました。
第2のキーワードは「実験する力」。
清水さんは自分が経営する会社の今年2021年度の経営方針を「実験しよう!」にしたそうです。先の見えない時代だからこそ、まずはやってみてダメだったらやり直す。それも学びになるという思考と行動が、会社にも社員にも必要になる、という思いからのもの。
水野さんも、この考えに賛同。キャリアにも試行実験(アジャイル)が必要、世代や分野の異なる人と付き合う多様性(ダイバーシティ)から発見があり、面白い場所に連れて行ってもらえるワクワク感がある。「私たちの想い」や、そこから生まれたキャリアのこれから研究所やオウンドメディアも実験そのもの、と2人の意見は一致しました。
第3のキーワードは「遊び心という力」
「実験」についてのディスカッションの中から浮かび上がって来たのが、この言葉でした。
レベルフォーデザインでは、いま30ほどの実験が計画されていて、その中には例えば「クリエイティブ・チャージ」9連休休暇というアイデアも。そうした遊び心から創造性が生まれる、と清水さん。
レベルフォーデザインでは、いま30ほどの実験が計画されていて、その中には例えば「クリエイティブ・チャージ」9連休休暇というアイデアも。そうした遊び心から創造性が生まれる、と清水さん。
水野さんも、この考えに共鳴。「プレイフル・ラーニング」という言葉があるように、クリエイティブから教えてもらうことは遊び心。そこからゆとりが生まれ、さらに探索行動や実験行動も生まれる、それはキャリアにも通じる、と語りました。
5,キャリアと創造性の関係
では、キャリアと創造性の関係とは?水野さんは、仕事を自分にとって面白いものに引き寄せ、自分の在りたい姿につながるような創意工夫がますます重要になる、とした上で、
「変化が激しく思い通りにならない時代だからこそ、キャリアをより有機的に楽しんで構築できることが大切です」とコメント。
「変化が激しく思い通りにならない時代だからこそ、キャリアをより有機的に楽しんで構築できることが大切です」とコメント。
次いで清水さんは、クリエイティブに深く関わるデザインの仕事の中にも、必ずしもクリエイテイビティを発揮しにくい仕事もある、とした上で
「その時、なんのためにその仕事をやっているのか、という考え方は個人個人の発想の仕方で変わる」と話してくれました。
「その時、なんのためにその仕事をやっているのか、という考え方は個人個人の発想の仕方で変わる」と話してくれました。
キャリアとデザイン。異なる分野の両者の見解が一致し、改めて働くための創意工夫(ジョブクラフティング)の重要性が浮き彫りになりました。
6,クリエイターと非クリエイターは、どのように協業するのか?
水野さんが本プロジェクトを通じて心がけたことは
「対話をしながら、そのデザイナーの方が何に関心があるのか、どういう人なのかを理解しながら、どう伝わるかを考え、それによって能力、才能や発想を引き出したい」
「対話をしながら、そのデザイナーの方が何に関心があるのか、どういう人なのかを理解しながら、どう伝わるかを考え、それによって能力、才能や発想を引き出したい」
清水さんからも「対話を通じて、キャリア=仕事だけなく人生や生き方を考えるということを学んだからこそ、想いをカタチにできた」というコメントが。キャリアのこれから研究所のプロジェクト会議では、日本マンパワーの社員に加え社外のメンバーが参加して意見を交換しています。それが、互いの思考の枠組みを外すリフレーミングにもなり、互いに率直に学び合う創造的なプロセスになっている、と言えるでしょう。
7,すべての人に創造性がある
本イベントを通じて何を感じたのか。
企業や自治体の方たちとの仕事の現場では、何のために働いているのか、今後どうなりたいのかという本質的な相談が多くなってきた、と清水さん。だからこそ、そうした課題を解決したり、より良い方向に進めて行くクリエイティブやデザインの可能性を、「私たちの想い」やキャリアのこれから研究所という取り組みを通じて確認した、と話されました。
企業や自治体の方たちとの仕事の現場では、何のために働いているのか、今後どうなりたいのかという本質的な相談が多くなってきた、と清水さん。だからこそ、そうした課題を解決したり、より良い方向に進めて行くクリエイティブやデザインの可能性を、「私たちの想い」やキャリアのこれから研究所という取り組みを通じて確認した、と話されました。
「私が持ち帰りたいのはプレイフルさ(遊び心)」と水野さん。争いを減らしたり障がいを持つ人が生きやすくなったり、世の中をより良くする力がデザインやクリエイテイビティにはある。働く中にも、もっとデザイン、プレイフルさとクリエイテイビティを増やして行くことでキャリアをより良くできる発想を持てたら良いな、と締めくくりました。
「クリエイター」というのは肩書に過ぎません。しかし、その肩書を越えて、クリエイターと非クリエイターが協業し物語を紡ぐことで、働き方やキャリア、そして社会をもっと創造的なものにすることができる。その可能性に挑戦しているキャリアのこれから研究所。それは、すべての人に眠っている創造性を覚醒させる取り組みなのかもしれません。
キャリアのこれから研究所プロデューサー。美大の大学院に飛び込んで
自ら創造性の再開発を実験中
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