株式会社日本マンパワー(以下、当社)と株式会社サイダス(以下、サイダス)は、2021年12月、タレントマネジメントシステム「CYDAS PEOPLE」の新機能として、「キャリアビジョン」「プロフェッショナルCDP」を共同開発しました。
社員のWill(やりたい)を引き出し、社員自らキャリアの未来を描くことをサポートする機能です。新機能の活用と定期的な1on1を通じて「個人の成長」と「企業の成長」のベクトルをすり合わせることで、社員のエンゲージメント向上が期待できます。
また、2022年1月28日、「社員のエンゲージメント向上につながる1on1施策」をテーマにセミナーを開催しました。ゲストは元ヤフーの堀井氏、きらぼし銀行の山本氏、サイダスの井嵜氏です。
今回はセミナーでファシリテーターを担当した荒川が、当日の内容をご紹介します!
※グラフィックレコーディングはサイダス様ご提供(画像をクリックで拡大されます)
1.エンゲージメントを高める1on1ミーティングとは?
1on1エバンジェリスト 堀井 耕策 氏
まず、かつてヤフー株式会社で1on1ミーティングの浸透を人事の立場で主導され、現在は1on1エバンジェリストとして1on1施策の導入支援や講師として活躍されている堀井氏に、エンゲージメントを高める1on1ミーティングについてお話しいただきました。
■エンゲージメントとは、社員(個)と組織が一体となり、イコールパートナーとして共に成長できる状態
そもそも“エンゲージメント”とはどういうことなのか。参加者の皆さんへの問いかけから堀井さんの話は始まりました。
「会社に貢献したい気持ち」「組織が活性化している状態」・・などの意見が出る中、堀井さんは、「エンゲージメントとは、社員(個)と組織が一体となり、上と下という縦関係ではなく、イコールパートナーとして、共に成長できる状態。」と答えました。
「働き続けたいと思える会社。そして、働き続けてほしいと思われる社員。エンゲージメントを高めるというと、組織から社員に矢印が向くように思われますが、相互に努力をしていくことが大事です。」
社員は自分の熱意や強み、目的を言語化し、組織はそれらを活かせる人事施策をつくり続ける。社員と組織双方が、互いに成長している状態こそ、エンゲージメントが高い状態である、と堀井さんは言われていました。
堀井さんは、以前「ヤフーの1on1」著者 本間浩輔氏から「30度理論」を教わったそうです。下の図で紹介しているように、組織と自分の方向性が30度の枠の中に収まっているかどうかを見るものです。この理論、自分の今の状態を確認するのに役立ちそうですね。
■ヤフーの人事施策「個の才能と情熱を解き放つ」「異動こそ最大の人財育成」
ヤフーの人事施策として掲げていたスローガンが「個の才能と情熱を解き放つ」でした。
そのために社員にはいろいろな経験をさせ、多くのフィードバックを受けることにより、自分の強みや熱意を言語化する、ということを徹底的に始めたそうです。
ヤフーでは異動が経験になると考えられていました。「異動こそ最大の人財育成」というもう一つのスローガンから、社内転職制度ができました。堀井さんはこの制度を利用して人事に異動されましたが、一年経って、これこそやりたい仕事だと思ったそうです。まさしく、堀井さんの才能と情熱が解き放たれた結果なのでしょう。
「一つのことだけを深堀りしていくと既成概念にはまってしまうことがある。そこから抜け出すためには、いかにいろいろな経験をしているかが重要。ヤフーはこのスローガンでどんどん人財育成をしてきました。」
■1on1はすべての施策のベースとなる
自身の熱意、強み、目的を言語化するのに特に重要なことが以下の2つだと堀井さんは言われていました。
①経験したことを内省しましょう。
②他者からのフィードバックを受けましょう。
堀井さん自身、経験・内省・フィードバックを繰り返し、自分の強みや熱意、目的を言語化することで成長してきたと言われていましたが、1on1はまさにこれらを実践するための手段だと言えます。
「他人からこう見えてるよ、あなたはどう思うの。ヤフーではこういった機会がもう本当に多くありました。最初は、このたくさんもらうフィードバックがすごく痛い。しかし、だんだん心地よくなっていくのです。経験したことを内省し、フィードバックを受けるというサイクルが、人財育成の要だと思います。」
対話をしながら、自分の熱意や強み、目的を言語化し、組織の向かっている方向との連接点を探していきます。
そしてこの1on1は、すべての施策のベースになる、と堀井さんは言われます。
「組織と業務と個人という形を考えたときに、自分の業務に成長実感が持てているのか。自分の成果は組織の貢献につながっているのか。そして個人のキャリアと組織の方向性は合っているか。1on1で対話しながらそれぞれレベル感を高めていく。その先に、社員と組織が共に成長するエンゲージメントがあり、向上につながっていくのだと思います。」
2.きらぼし銀行におけるCYDAS PEOPLEを活用した取組事例
株式会社きらぼし銀行 HR部所属 次長 山本 頌 氏
次に、きらぼし銀行のHR部に所属され、現在はサイダス社へ出向されている山本氏に、タレントマネジメントシステム「CYDAS PEOPLE」を活用した取組事例をご紹介いただきました。
■社員情報を見える化し、社員間のつながりをつくる
きらぼし銀行は2018年5月、東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京の3行合併により誕生しました。山本さんは、9年間の法人営業を経て、人事部に異動され、合併後は人事改革プロジェクトの責任者を担当します。
そして、多様な価値観や働き方が増えていく中で、社員が成長機会や働きがいを感じられエンゲージメントが高まるような仕組みづくりを、人事部門のミッションとして掲げます。
「言われたことをちゃんとやります、という社員は多いが、キャリア意識が低く、自発的に動ける社員が少ないことが課題でした。そこで、社員一人ひとりがキャリアデザインを持って自ら成長していく組織作りに取り組みました。」
まず手を付けたのが、社員間のコミュニケーションを高める施策。社員同士がお互いの情報が見えることでつながりを持つことを目的に、タレントマネジメントシステム「CYDAS」を導入しました。
初めに取り入れた機能は二つ。
①社員全員を対象とした検索機能
人材情報を見える化することで、本部・支店間のネットワークを強化
②自由に投稿できる社内SNSのようなニュースフィード機能
本部と現場、役員と社員など今までなかった接点をつくり出し、情報をつなぐ
「ニュースフィード機能では、研修でできた関係性を継続できる場をつくりたいと考え、勉強会や読書会などの開催を投げかけると、自主的に集まるようになりました。」
この二つの機能だけで毎月1万件ほどのログイン数となったそうです。
■社員のキャリア意識を高める
次に取り組まれたのが社員のキャリア意識の向上。そのために施策の一つとしてキャリアデザインシートを導入されました。
キャリアデザインシートは、仕事を通じて実現したいことに対し、どんな知識やスキルが必要なのか、それを身に付けるにはどうすればよいか、直近1年間で自身が成長した点、取り組んだ自己研鑽の内容等、約20問の質問に全て文章で回答するもので、will-can-mustのフレームでしっかり考えてもらう内容となっています。
「2020年、キャリアデザインの各項目を明確に記入できた人が1割、うっすら書けた人が2割と合わせて3割に過ぎませんでした。キャリアデザインシートの記入ができる、つまり、キャリアビジョンを描ける社員を増やしていくにはどうしたらよいか、考えていきました。」
そこで行った施策の一つが、キャリアビジョンが明確な1割の方を積極的に希望職務に異動させることでした。そうすると、「本気で書いたら、異動させてもらえるんじゃないか」という意識が社員の間に広まっていったそうです。
さらに、社内SNSの「ニュースフィード」には、「人材を募集している業務」と「求める人材像」などを掲載。社員から挙がっていた悩み(「社内にどんな仕事があるかわからない」「そのためにどんなスキルが必要なのかわからない」等)に応えました。
人事制度でも、社員のキャリア意識向上を目的とした改訂を行いました。まず、これまでの年次制度を撤廃。専門性を高めたプロフェッショナルな人材が、年齢に関係なく抜擢される仕組みに変えていったそうです。さらに、自己研鑽の費用補助制度、動画学習ツール等の提供も行いました。
その結果、2021年では、キャリアビジョンを明確にかけた人が2割に増えたそうです。
■経験から学ぶための1on1ミーティング
きらぼし銀行では、1on1ミーティングも実施しています。
目的は、上司部下の関係の質を高めること、社員のキャリア意識を高めるための伴走、経験から学ぶための振り返り支援。
また、情報の一元管理のために、CYDAS PEOPLEの機能「1on1 Talk」を導入しています。
「1on1 Talk」では、キャリア希望や業務目標がすぐに確認でき、過去のメモ履歴も残っているため、振り返りがしやすく、次につなげる意識をお互いに持つことができるそうです。
「アンケート機能も付いているので、ミーティングが役に立ったかとか、ルール通り行われたかなど、具体的な内容についての結果が毎回出ることが上司の内省する機会となります。効果が見えるので、1on1の質が高まっていくのが分かります。」
■組織変革を進める際に意識していること
きらぼし銀行では、制度等のハード面だけでなく、社員の意識や、企業文化等のソフト面を変革するための運用も重視。そのため、社員データの構築・指数化に取り組んできました。
「タレントマネジメントで適所適材を実施しようと思った時、今ある情報は人事評価しかありませんでした。これだけだと最適配置なんかできないね、と。社員満足度調査やキャリアの明確度、360度評価などの様々なデータを指数化することによって、人事評価だけではなくコンピテンシー的なところが分かるようになり、判断できるようになってきています。」
2年間ほどのデータで、変動・相関性からやっと分析でき始めてきたそうです。今後も実効性を高めていくために、データを作っていくということを意識していきたい、と山本さんは言われていました。
3.CYDAS PEOPLE最新機能の紹介
株式会社サイダス プロジェクト推進室 井嵜 綾 氏
「明日が楽しみになる世界をつくる」をミッションに掲げるサイダス社。タレントマネジメントシステム「CYDAS PEOPLE」では静的データと動的データを一元管理することができます。
ミスコン世界大会で優勝経験があるという異色の経歴を持つ井嵜さんからは、CYDAS PEOPLEの最新機能「JOBアドベンチャー」をご紹介いただきました。
「JOBアドベンチャー」は社員のwill-can-mustを可視化する機能。社員自身が強みや価値観、キャリアビジョンを言語化することで、現状を認識することができます。また、上司や人事、経営層とキャリアビジョンを共有することで、会社のミッション・方向性とキャリアビジョンのすり合わせがしやすくなります。
すり合わせによって、目指すゴールを具体化して、今の自分に足りないものを明確化する。JOBアドベンチャーでは、このような運用サイクルを回すことができるようになり、社員のモチベーションアップにもつながっていきます。
言語化されたこれらのデータは蓄積され、1on1に活かすことができます。
「データを共有しながら1on1を行うことで対話が豊かになり、フィードバックを受けた自分自身はアップデートされていきます。是非JOBアドベンチャーを、社員が自分を知るツール、そして上司や人事、経営層が社員のことを知るツールとして活用していただきたいです。」
4.効果的なキャリア対話を支援するソリューションの紹介
最後は当社より、キャリア対話をより豊かにするソリューションを紹介しました。
効果的なキャリア対話を行うことで、明確になったスキルや価値観、キャリアビジョンをJOBアドベンチャーに入力し1on1時に活用することで、エンゲージメント向上につながる施策の実現に近づいていくと考えています。
最後の質疑応答の時間ではたくさんのご質問を頂きました。こちらは上記のグラレコをご参照ください。
今回ご紹介させていただいた1on1施策、CYDAS PEOPLEやキャリア対話を支援するソリューションにご興味がある方は是非以下よりお問い合わせください!
★ゲストプロフィール★
堀井 耕策 氏
株式会社サイダス 外部アドバイザー 1on1エバンジェリスト
日本NCR株式会社でITソリューション営業(POSシステム)に携わり、ヤフー株式会社で営業企画・事業管理、人事、グループ会社人事責任者(出向)を経験。現在は独立し、大手企業や、官公庁での研修講師などを多数行う。
山本 頌 氏
株式会社きらぼし銀行 HR部所属 次長
きらぼし銀行HR部で社内コミュニケーション活性化、キャリアデザイン支援等の組織開発施策を推進、2021年9月まで人材・組織開発の責任者を担当。現在サイダス社に出向し、新機能開発プロジェクトに参画中。
井嵜 綾 氏
株式会社サイダス プロジェクト推進室
日系半導体メーカ、米国のデジタル資産管理会社にて営業を経験し、サイダスに入社。企業に勤める一方で、様々なミスコンテストに出場。2017年ミス・グローバル日本代表となり、2019年ミス・ユニバースワールドインターナショナルにて優勝した経歴を持つ。
5年間の九州支社勤務を経て、現在はマーケティングを担当。
3歳の娘の成長とソフトバンクホークスの活躍を楽しみに毎日を過ごす。
好きな食べものはチョコとあんこ。