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超年齢プロジェクト発信イベントレポート~日本に年齢から解放された働き方を~

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イベント

2022.4.8


大きな社会的テーマとなって久しい「ミドルシニアの働き方」。
コロナ禍での環境変化(DX化の加速・ジョブ型雇用の導入本格化など)によって、一層注目度が高まっています。
私たち日本マンパワーとキャリアのこれから研究所は、このテーマに対し、「働く当事者がイキイキと、自分に誇れるキャリアをつくる」を理念とする『超年齢プロジェクト(詳細はこちら)』を始動いたしました。
「もう年だから、新しいチャレンジはちょっと・・・」
「役職定年後の自分は、若手の補佐に徹した方がよい・・・!?」
そんな年齢に囚われた思い込みの枠を超えた、一人ひとりの働き方やキャリアがあってこそ、組織や社会はもっとイキイキしたものになると考えます。
2022年2月24日、『超年齢プロジェクト』の活動紹介、及び、「ミドルシニア社員がイキイキとはたらき続けるためのマインド・スキル」をテーマにしたイベントを開催しました。
イベントの内容を、日本マンパワー中村がダイジェストでお伝えします!
私自身、就職超氷河期と言われる1998年に社会人になり丸24年。現在46歳でミドルど真ん中の世代です。このイベントは私にとっても「自分らしい生き方やキャリアとは?」を深く考えさせられるものでした。

1.ミドルシニア社員が輝くために必要な「超年齢」とは?

「超年齢」とは、年齢から解放された働き方。そんな人が一人でも多くなればきっと組織や社会はもっと輝くものになる。
冒頭、事務局より年齢にとらわれずに成長するために必要な「アンラーニング(学習棄却)」、会社が個人を支援し「ワークエンゲージメントを高めること」など、ミドルシニア社員がイキイキとはたらき続けるために必要なキーワードを交え、超年齢プロジェクト発足の背景や目的が紹介されました。

2.トップアスリートのキャリアストーリーを自社の課題解決に活かす

第一部として、その具体的な施策としてトップアスリートから逆境やキャリア転機の向き合い方を学ぶ「トップアスリート研修」の体験プログラムを行いました。
登壇者はラグビー元日本代表キャプテンの廣瀬俊朗氏。現役時代、東芝で企業人として働きながら日本代表キャプテンという重責を担われ、現役引退後は慶応大学でMBAを学ぶ傍ら俳優業やニュース番組のコメンテーターなど既存の枠にとらわれず多方面で活躍されている、まさに「超年齢な働き方」の体現者です。
そして廣瀬さんが語る言葉を咀嚼しビジネスパーソンにも理解しやすいように落とし込む役割を担うのがファシリテーターを担当する株式会社Criacao(クリアソン)の神田義輝氏。神田さんご自身もアスリート支援やスポーツクラブ経営、人材・組織開発、副業支援など幅広い分野で活躍しています。
写真左:登壇者 廣瀬俊朗氏(ラグビー元日本代表キャプテン)
写真右:ファシリテーター 神田義輝氏(株式会社Criacao)
いよいよ本題スタート。受講者から本日の期待や学びたいことがチャットでどんどん投げ込まれます。
●年齢という縛りから解放されるのはなかなか社会構造含めて日本では難しいと感じていますが、
マインドセットをどうすれば良いか興味があります。
●キャリアトランジションとどのように向き合ってきたのか、そのなかから学びを得たことなどぜひ伺いたいと思っています
●ミドルシニア社員のモチベーションアップ方法を知りたいと思います。
●役職定年前後のモチベーションの保ち方やセカンドキャリア開発について、
早い段階から考える仕組みがあればと思っています。
まず、神田さんから、キャリアトランジション(転機)の3段階プロセスに関する説明がありました。
①何かが終わるとき(喪失感)
②ニュートラルゾーン(受け止め、耐える)
③何かが始まるとき(次にキャリアに向かう)
例えば、予期せぬ異動を命じられた時、会社の人事制度が変わった時、プライベートで大きな変化が起こった時。私自身を振り返ってみても、様々なキャリアの転機が訪れていたことを思い出しました。これまで培ってきたものの終わりを感じる際に、その喪失感をどう受け止め、次のキャリアに向かうきっかけにするのか。このことは何もアスリートに限らず、すべてのビジネスパーソンにも重ね合わせることができると感じました。
ここから廣瀬さんのキャリアストーリーが語られていきます。
廣瀬さんの話には、経験から学び続け、アクションを起こし、さらに学び直すことが大切であるという超年齢の働き方にも通じるキーワードがたくさん散りばめられていました。

3.キャリアトランジションとの向き合い方

ファシリテーターの神田さんが廣瀬さんのキャリアストーリーの深堀りをしていきます。
「キャプテンを外されたときにどのように受け止められたのでしょうか?」という神田さんからの問いに対し、「プレイヤーとして試合に出られなくなったから外されたのか、キャプテンとしていいチーム作りができなかったからなのか」と最初は悶々とした気持ちを抑えきれなかったと言います。
私たちビジネスパーソンに置き換えてみると、一生懸命にマネージャーやリーダー職を担っていたにも関わらず成果や組織づくりを上層部から評価されず役職を外された、というようなことでしょうか。
自身を取り巻くあらゆる環境が変化する中で廣瀬さんの助けになったのはこれまでともに戦った仲間の存在だと言います。「人間性やこれまでの努力を認めてくれたことが大きな救い」になりました。次のキャプテン・リーチマイケルをサポートするという新たな役割を監督から与えられ、「自分にしかできない役割を認識できた」ことや「当事者ではない第三者が悩みを聞いてくれ新たな気づきを得られた」ことも大きかったといいます。
仕事においても、役職やポジションを外されたとしても周りから承認され活躍できる場所が与えられることはモチベーションを保つうえで非常に大切なことです。また、企業内において人事とは別組織としてキャリア相談機能を設ける企業も増えてきています。当事者ではない第三者に、素直な悩みを吐き出せる「場」があることが、立ち直るきっかけを与えてくれる。廣瀬さんの原体験はそうした「場」の重要性も示唆していました。

4.「まずはやってみる」という行動が次の展望を拓いていく

次に「プレーヤーとしての引退」にテーマが移ります。
ビジネスに置き換えると、第一線の現場から退く、定年を迎えるといったシニア社員が間近に抱えるテーマに近いでしょうか。そこでいかに学び直しをしていくのかのヒントが語られていきます。
廣瀬さんは、引退時、ラグビーに関してはやり切った感があり迷いはなかったものの、何か心の中に燃え尽き感や物足りない気持ちがずっと残っていたと言います。それをどのように気持ちを切り替えたのでしょうか。そこには大きなポイントが2つありました。
ラグビーで得た興奮や成功体験と同じものを追い求めない(より詳しく言うと、過去の栄光にすがらない、とらわれない)ようにした」ことが1つ、そしてもう1つは「何が自分を物足りない気持ちにさせているんだろうと客観的に自分自身を見つめ直した」ということでした。
ここで廣瀬さんは行動に移します。『ラグビーの廣瀬』でなく『いちビジネスパーソンの廣瀬』として客観的に自分を知るために、慶應義塾大学のMBAに入学し学び直しを始めました。
神田さんは、さらに問いを深めていきます。
「アスリートの引退はキャリアトランジション理論で言うと「①何かが終わるとき」に該当しますが、成功体験もある中でそれに囚われずにどうやって終わらせ、次に向かっていったのでしょうか?」
「与えられた仕事をまずはやってみることから始めました。そうした経験を経ながら、なぜラグビーが好きだったのか要素を抽象化して次の「面白い」「ワクワク」を少しずつ探していきました。「これはまだ人がやってないな」「スポーツとは違うフィールドでこれをやったら何が見えてくるかな」と考えていくと、スポーツの価値をもっと広めていくことにつながったり、次世代に向けて何を残していけるのかという自分が大切にしたいことへの期待感につながっていきました。」

5.「成果」でなく「成長」に目を向ける

引退後もスポーツやラグビーの価値を広める活動はもちろん、俳優業やコメンテーターなど新しいことにもどんどんチャレンジし続ける廣瀬さん。新しい世界に飛び込んでいくことはワクワクもありますが、勇気も必要ですし怖さを感じることもあります。そんな時にどんな心持ちでいるのでしょうか?
「新たなチャレンジするときに『何か成果を出さないと』と考えると怖さを感じてしまいます。そうではなく、今までできなかったことが少しずつできるようになるとか、小さな学びがあったなとか「成果」でなく「成長」に目をむけることが大切だと思います」

6.大義や目的が輝く自分を創る

ここから参加者とのダイアログセッションに入っていきます。ここまでの話を聞いて廣瀬さんと神田さんに聞いてみたいこと、ご自身が抱えている課題がどんどんとチャットに投稿されていきます。ここでは代表的な質疑応答を2つピックアップしてお伝えいたします。
参加者:ミドルシニア社員の中には様々な問題を抱えながら、なかなかやりがいを見いだせない状況にある方も多いと思います。廣瀬さんのように、転機の際に次の目標を見い出すためには何が重要だと思われるでしょうか?
廣瀬さん:今までいた世界に閉じこもらず、これまでと違うコミュニティや場に出て行く(越境する)ことで、やりたいことが少しずつ見えてきます。座って何かを学ぶこともとても大事ですが1つ行動を起こしてみることが何より重要だと思います。その中でどう生きていきたいのかをしっかりと考え、どんな仕事をしていくのか、何を会社に残していくのかという観点を持つと考えも変わっていくと思います。
また、モチベーションを下げているミドルシニアの方に「自分も役に立ってるんだ」と活躍できる居場所を制度として提供することも大切です。個人と制度の両方に複合的にアプローチし向き合っていくことがよいと思います。
参加者:キャプテンを外されたという廣瀬さんのお話は、会社で起こるケースとしても、とても近いものを感じました。レジリエンスの視点でビジネスパーソンにどんなアドバイスがあるでしょうか?
廣瀬さん:頑張ってきたことは認めつつ足りなかったこともあるよねと。その経験からの学びがあるはずだから、その学びをどう人生に活かしていこうかと声をかけると思います。弱音やしんどい気持ちを吐き出す誰かの存在も必要だと思います。
神田さん:寄り添って気持ちを受け止めてくれ、しんどい気持ちの裏側にあるWILL(こうありたいという思い)にも気づかせてくれる存在が必要だということですね。
最後に廣瀬さんから「大義や目的が見つかると頑張る気持ちが湧いてくるし楽しめる。今日お話を聞いてくださった皆さんと課題解決に向けた新しいヒントを一緒に作っていければ嬉しいです」と熱いメッセージが贈られ第一部が終了しました。
■トップアスリート研修詳細資料   ↓の画像をクリック
■第1部の様子をまとめたグラフィックレコーディング ↓の画像をクリック

7.「私ならではの仕事力」を見つける

続いて第2部としてミドルシニア向けキャリア研修『Shift The Value』体験セッションに移ります。ここは日本マンパワーマネジメントコンサルタントの秋本暢哉が講師を担当しました。
『Shift The Value研修』は、これまでの仕事経験から「私ならではの仕事力」=『Value』を捉え、このValueが活きる役割や職務を明確にすることで今後のキャリアを考えていただくものです。
図1の「ミドルシニア社員がイキイキと働き続けるための姿」で言うと、「自分らしいキャリアを描く」「実現に向けて行動する」をサポートするものです。
秋本は研修のねらいとして以下の3点を強調します。
①自分自身の将来に対する主体性の醸成
②Valueの把握と将来の就業可能性の拡大
③Valueを磨き続けるための行動促進
人生100年時代、70歳代まで働く時代がもうそこまで迫ってきています。そこで頼られる社員になるために、50代60代以降も戦力としてエンプロイアビリティ(生涯雇用能力)を高め、「仕事のプロ」で居続けることが大切だと言います。
いくつかあるワークから「自分らしさシート」に参加者が取り組みます。充実した仕事経験から、その仕事への取り組み姿勢、大切にしてきたこと、発揮したスキルなどをまとめ、自分らしさを活かした職務や役割を考えていきます。
その後はブレイクアウトルームに分かれてグループダイアログ。時間はたっぷり30分。自分が主役となって語り、他メンバーからフィードバックを受け、どのグループも笑顔が多く画面越しにも温かい空気が醸し出されていました。
受講者からの感想としては、以下のようなコメントがありました。
●「適応力があるね」など自分では全く気付いていなかった点をフィードバックいただけてうれしかった
●気持ちよく話ができた。他の皆さんの山の乗り越え方を聞けてこれからの力になった。
最後に秋本から「40代以降のキャリア形成には、例えばCAN重視かWILL重視か、個人重視か組織重視かなど軸を持って考えていくことも大切」と具体的な考え方が示され第2部が終了しました。
■『Shift The Value研修』研修 詳細資料  こちら
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いかがだったでしょうか?
ミドルシニア社員一人ひとりがマインドセットしていくことはもちろんですが、キャリア自律意識を持ってもらうための環境整備や場づくりをいかにアップデートしていくのか。企業にとってこの視点がますます重要になることを実感いたしました。
本イベントが何か1つでも皆様方のヒントになっていれば幸いです。
超年齢プロジェクトは今後もこうした発信を続けてまいります。どうぞご期待ください!