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三井金属鉱業様のお取組みに学ぶ 実力重視の制度改革とキャリア開発支援(前編)

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2023.2.24


※当記事は2022年9月7日に開催したイベントの内容をダイジェストでご紹介するものです
今回、2024年に創業150周年を迎え、「探索精神と多様な技術の融合で地球を笑顔にする」をパーパスに掲げる三井金属鉱業株式会社様の人事制度・キャリア開発支援のお取組みについて紹介します。
三井金属鉱業様は、2022年4月に新人事制度を導入、年次年功的な運用を脱却し、職務役割基準の人事制度のもと、実力重視の適材適所とキャリア開発支援による新しい人材マネジメントに取り組まれています。
戦後、ながらく続いてきたメンバーシップ型雇用(※)の特徴の1つ、年功序列。
※新卒採用、人事異動、年功序列、長期雇用等を特徴とする雇用システム
バブル崩壊後、多くの企業で成果主義が導入されたものの、水面下で、年功序列的な運用が残っていた企業様も少なくないと思います。
環境変化の激しい現在、どういった人事制度や人材マネジメントに取り組んでいけばいいのか、三井金属鉱業様のお取組事例が1つのヒントになるかもしれません。
ぜひご一読ください!
■イベント登壇者
三井金属鉱業株式会社人事部 中竹淳(なかたけあつし)様
株式会社日本マンパワー フェロー 水野みち

1.三井金属鉱業株式会社 事業とパーパス

●本社  東京都品川区大崎1-11-1
●事業内容  機能材料の製造・販売、非鉄金属製錬、資源開発、貴金属リサイクル、
自動車用部品の製造・販売 等
●従業員  11,826名
中竹様(以下敬称略):当社は、非鉄金属を扱う会社です。非鉄金属とは、鉄以外の金属のこと。ベースメタル、貴金属、レアメタル、レアアースなど、扱う素材は多岐にわたります。当社は鉱物の資源開発から、金属に付加価値をつけ様々な素材を生みだすところまで幅広く手掛けています。
*非鉄金属は、図の緑色で着色した元素(26の鉄以外)
非鉄金属と言ってもイメージが浮かばないという方もいるかもしれませんが、実は、身近な生活の中にも非鉄金属を使っている製品は沢山あります。例えば自動車のボディは鉄ですが、その防錆・防食のために亜鉛が使われています。また、皆さんがお持ちのスマートフォンの中の電気を通すための回路は、主に銅でできています。ご自宅の液晶テレビにも様々な金属が使用されていますが、当社の扱っているもので言えば、インジウムというレアメタルが素材に使われていたりもします。
当社で扱っている素材は幅広く、金属リサイクルや車の排ガス触媒、電気自動車向けの電池材料など持続可能な社会に貢献する事業領域・研究開発には近年特に注力しています。
また、2022年には新たな中期経営計画のスタートに合わせて、自分たちの存在意義をあらためて明確にし、三井金属グループで働く社員全員が共有できる軸(パーパス)を策定しました。
■三井金属グループ パーパス
「探索精神と多様な技術の融合で地球を笑顔にする」

https://www.mitsui-kinzoku.com/purpose/
三井金属グループの歴史や強みを整理し、①地球環境への負荷を減らす「環境への貢献」と、②社会実装して人類の役に立つ「人類への貢献」を両立する事業を、私たちが取り組むべき「地球を笑顔にする」事業として定義しています。
創業から約150年。これまで培ってきたマテリアルの知恵を活かし、持続可能な未来への挑戦を続けていきます。

2.三井金属鉱業株式会社 新人事制度導入の背景

中竹:歴史の長い当社において、従来の人事制度は「ヒト基準」で作られていました。成果主義も導入されていたのですが、非明示的なところで、何年ごとに昇格するとか、同期社員で昇格のタイミングが遅れるのは避けようといった年次年功管理の考え方が受け継がれていたのです。
その結果、次のような課題が温存されてしまっていたのではないかと考えています。
○事業戦略を推進するための最適な組織体制と人員配置が、実現しづらい
○事業環境などの変化への対応力、組織活力が十分に高まらない 等
また、近年、当社を取り巻く環境(変化の激しいVUCA時代の到来、グローバル化、若手世代の職業観変化等)も、年次年功での運用の限界を感じさせ、人事制度を変えるきっかけとなりました。

3. 三井金属鉱業株式会社 新人事制度の内容

中竹:先に述べたような背景があり、2022年4月、当社は従来の「ヒト基準」から「職務・役割基準」の人事制度に変更しました。新しい人事制度では、①実力重視の人材配置、②成果・能力主義の徹底、③公正・適正な処遇を基本方針としています。
そしてこの方針のもと、下記の各制度・施策の運用を開始したところです。
職務・役割基準の人事制度は、先ほどご紹介した当社のパーパスや全社ビジョンから導かれる事業戦略と組織設計・人材配置を整合させる上でも有用な仕組みであると考えています。

4.会社が部下のキャリアを考え決める形で上手くいくだろうか?~キャリア開発支援施策の導入に至るまで~

中竹:従来の「ヒト基準」の人事制度は、課題もある一方、誰の目にもわかりやすい客観的な物差しで運用されていました。このような物差しのもとでは、社員の社内におけるキャリア形成、平たく言うと昇進・昇格・配置・育成に、個人の事情や意思が入り込む余地は多くありませんでした。
一方、新人事制度では上司が実力を基準に、部下の配置・育成を考え運用していく形が想定されていましたが、「一人ひとり成長スピードも能力も適性も志向も異なる部下のキャリアを、会社が全て考えきれるのか?」という声があがりました。
むしろ、社員一人ひとりが自らのキャリアを考え、それを会社・上司からの期待とうまく融合させていくような形でなければうまく機能しないのではないかと議論が進み、「キャリア」が非常に大切なテーマとして位置づけられるようになりました。
特に、今まで社員に対し、キャリアを考える機会や教育を十分に提供できていなかったという反省もあり、会社・上司と社員がともに一人ひとりのキャリアを考えていく、「キャリア開発支援」施策を新たに導入しました。

5.キャリア開発支援 基本的な考え方と具体的な取組み

中竹:キャリア開発支援施策の導入に際し、「年次年功をベースに配置・育成は会社が一方的に考える」というこれまでの考え方から、実力重視をベースに「上司・部下がすり合わせを行い、共有されたキャリア目標達成に向けて一緒に取り組む」という双方向のコミュニケーションを踏まえた配置・育成を行う考え方に転換しました。
具体的なステップは、以下の通りです。
● ステップ1 :共有
上司からは「会社としては、あなたにこういう人材になってほしい。そのためにこういう経験を積んでいこう」といった期待を示し、共有する。そして部下は、「私はこう考えていて、こういう仕事をやりたい」と上司に対し対等に意思表示を行う。
● ステップ2 :すり合わせ
「部下が意思表示したことをすべて実現させるわけではない」が、上司はきちんと部下の意見を聞き、双方向コミュニケーションを取り、希望と期待のすり合わせを行う。
● ステップ3 :調整・合意
すり合わせを経て、上司部下間で合意可能なキャリア目標を作り上げ、共有し、その目標に向けて一緒に取り組んでいく。
こうしたステップに基づいたキャリア開発支援を、これからの会社・上司と社員間の関係性を支える基本的取り組みとして定義づけました。

6.キャリア開発支援のための教育とインフラ整備

中竹:社員が自身のキャリアについて考えられるようにするためには、必要な情報提供や教育を行わなければなりませんし、上司に対し意思表示をしたりすり合わせをするためには、その機会が必要です。そのために以下のような施策を実行・検討中です。
① 社員に「キャリアを考え、意思を示す」ことを促すための施策:
⇒キャリア教育、キャリアパスの明示
② 会社と社員間の双方向のすり合わせのための施策:
⇒自己申告制度、キャリア面談
③ 個を尊重した配置育成を進めていくための施策:
⇒公募・FA制度、個人別配置育成計画、研修体系の見直し
④上司部下間の面談のためのコミュニケーション基盤:
⇒1 on 1 ミーティング

7.上司・部下間コミュニケーションの質を高める「面談力向上ガイドブック」 ~日本マンパワー キャリア開発支援事例のご紹介~

水野:中竹さんはじめ、三井金属鉱業様が描かれたビジョン実現のため、様々なツール開発や従業員向けセミナーの実施をお手伝いさせていただきました。
特に注力したのが、上司向け「面談力向上ガイドブック」です。
管理職の方は多忙なので、資料を分散させるのではなく、この1冊を読めば、キャリア面談、目標管理面談、1 on 1 ミーティングという3 種類の面談の実施ポイントがしっかり把握できるよう意識して作成しました。
また、どの面談でも「部下とのコミュニケーションをしっかり取る」という基本スタンスを一貫させた上で、それぞれ、実際にあがってきそうな相談事例も多数盛り込みました。
(補足:相談事例作成にあたり、実際に管理職にインタビュー調査も実施)
また、ガイドブックを配布するだけではなく、 1 on 1 ミーティング推進セミナーを実施、上司の方が、面談に意欲的に取り組めるような動機づけ、実施内容の理解促進を図りました。
さらに上司だけが面談での関わり方を把握するのではなく、部下側も上司との面談前に一定の準備ができるよう、部下用の面談前の準備向けガイドブックも作成しました。
続くイベントレポート後編では、参加者から寄せられた質問等をご紹介します!
◆記事後編は、こちら
◆日本マンパワー「全社員のキャリア自律支援」資料ダウンロード