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人と企業は「社会」と生きる~サントリーグループの取り組み事例から学ぶ~(前編)

インタビュー

連載記事

2024.1.30


SDGsに代表されるように、企業が社会課題と主体的に向き合いながら事業を成長させる必要性が増し、それと共にステークホルダーとしての地方自治体と連携する重要性も高まっています。今回ご紹介するサントリーグループは「ペットボトルの100%サステナブル化」を掲げて果敢に環境問題の解決に取り組むと共に、多くの企業が抱える経営課題であるシニア社員活躍にもつなげています。この取り組みに携わっていらっしゃるサントリー食品インターナショナル 藤巻恒さんにお話をお聞きすると共に、取り組みを通じて生まれた社員のキャリアや生き方に対する想いについても語って頂きました。

1.藤巻様のキャリアと現在のお仕事について
Q1: まず藤巻さんのキャリアと現在のお仕事についてお話し頂けますか?
藤巻様(以下敬称略):
私は新卒で銀行に勤めていましたが、20年前、30歳のときにサントリーに転職をしました。当時の会社がサントリーと接点があり、何となく面白そうな会社だと思いまして。
サントリーに入社後は、グループ会社の経営管理、経営企画や事業企画的な仕事をずっとやってきてM&Aに絡んでグループ会社に出向などもしてきたのですが、昨年、人事部門に異動になりました。弊社も国内の食品事業が成長軌道から成熟企業に入りつつある中で大きな経営課題となっている「先輩方が生き生きと働くことができる場をつくっていく」というシニア活躍を実現する施策や、ダイバーシティとりわけ女性活躍といったテーマに対応することがミッションとなっています。
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2.「ボトルtoボトル」水平リサイクルの背景
Q2:まず、「ボトルtoボトル」水平リサイクルを推進している背景についてお話頂けますか。
藤巻:
サントリーグループは、3R(Reduce・Reuse・Recycle)の考えのもと、かなり前から環境に配慮した容器包装を開発しており、お客様の飲用時からリサイクル処理を行うまでのユーザビリティに配慮しながら、軽量化をはじめ、より環境負荷の少ない素材の採用、リサイクル処理しやすい設計に取り組んでいます。2019年には、循環型かつ脱炭素社会への変革を強力に先導すべく、「プラスチック基本方針」を策定しました。その「プラスチック基本方針」に基づき、2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルをリサイクル素材あるいは植物由来素材等に100%切り替え、化石由来原料の新規使用をゼロにすることで100%サステナブル化を実現すべく、活動を強化しています。
Q3:サントリーさんは環境と直結した「水と生きる」を企業理念とされているので、取り組む上でも企業の在り方との親和性がありますね。
藤巻:
その通りですね。元々培って来た会社としての土台があるからこそ、環境課題にサントリーとしてどう応えることができるのか、という「大義」があると思います。

3.「ボトルtoボトル」水平リサイクルの具体的内容
Q4:では、「ボトルtoボトル」水平リサイクルについて、もう少し詳しくお教え頂けますか。
藤巻:
「ボトルtoボトル」水平リサイクルとは、使用済みペットボトルを原料として新たなペットボトルに生まれ変わらせるリサイクルです。現在の技術では、一度ペットボトル以外の用途にリサイクルされると、そこからもう一度ペットボトルに戻ることはできないため、ペットボトルを「資源」として何度も「ペットボトル」に循環させていくことが重要と考えています。また、新たな化石由来原料を使ってペットボトルを製造する場合と比べて、CO2排出量を約60%削減できるため、限りある化石由来資源の有効活用とCO2排出量削減の打ち手として、取り組む意義は非常に大きいと考えています。
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近頃では、我々の取り組みに共感いただいた自治体さまから、「水平リサイクルのことを教えて欲しい」や「我々も一緒に取り組みたい」というお声掛けをいただくことが多く、現在では100を超える自治体さまと一緒にお取組みを進めています。
同じものから同じものへリサイクルすること(水平リサイクル)が環境負荷低減につながるということの認知が上がっていること、自治体の皆さまの取り組み意識の高さを感じています。
Q5: 環境負荷の低いペットボトルのリサイクル技術など、他社よりも開発に力をいれているように思います。
藤巻:
そうですね。独自の設備を持っていらっしゃる協栄産業さんと協働し、「ボトルtoボトル」水平リサイクルのシステムを2011年に開発し、またさらに環境負荷の低い、フレークから直接プリフォームを生成する「FtoPダイレクトリサイクル」システムを2018年に世界で初めて導入するなど、10年以上前から技術を磨き上げてきました。やはり「今日明日やろうといってできるものではない」と改めて思いますね。

4.水平リサイクルという取り組みの展開と課題
Q6:いま、外でのペットボトルの分別促進に関する広告活動もされていますが、その意図はどのようなものですか?
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藤巻:
商品ではない広告を通じて、取り組みに対する弊社の強い意志を感じていただければと思っています。具体的に今回のCMは、水平リサイクル推進のための「外でも分別」の必要性や気づきをお伝えしていきたいと思い、制作しています。
Q7:各自治体に商品を導入していくといったマーケティング的な成果もありますか?
藤巻:
直接的な経済効果を考えてコミュニケーションを展開している訳ではないですね。弊社には鳥井信治郎という創業者が提唱した「利益三分主義」という考え方があります。「事業活動で得たものは、自社への再投資にとどまらず、お客様へのサービス、社会に還元すること」という考え方を形にしたものと思っています。
Q8:自治体とのノウハウの交流なども生まれていますか?
藤巻:
この取り組みを通じて、サントリーの人材に興味を持ってくださる自治体さんの多くが、内閣府の地方創生人材の仕組みを通じて我々の人材を欲しいと言って頂いています。それによって、それぞれの地域に応じた深いノウハウの交流が生まれていると言えるかもしれませんね。
Q9:逆に課題と感じられていることはありますか?
藤巻:
ペットボトルを水平リサイクルする上で重要なのは、「使用済みペットボトルの品質向上」です。自動販売機の横に設置されているリサイクルボックスなどに、ペットボトル・空き缶・空き瓶以外のゴミなどが廃棄されてしまったり、飲み残しや異物が入ったものを廃棄されてしまうと、水平リサイクルに回すことができなくなることが多く、ペットボトルの100%サステナブル化の大きな妨げになってしまいます。そのため、当社では、生活者のみなさまに、ペットボトルはゴミではなく資源として有効に活用できることを知ってもらい、水平リサイクルのための分別行動にご協力いただけるよう、啓発活動に注力しています。

5.「ボトルtoボトル」水平リサイクルがもたらすもの
Q10:あのCMを見て、私もしっかり取り組まなければと感じています。こういった取り組みを社内の皆様はどうとらえていらっしゃいますか?
藤巻:
環境課題・社会課題に対して、自分たちの活動を通じて解決することに意義を感じて、一生懸命やっている社員が多いと思います。啓発活動という点では、サントリーでは、子どもたちに「水」の大切さを伝える独自の次世代環境教育プログラム、サントリー「水育(みずいく)」を2004年から展開し、これまでに20万人の方々に参加いただいています。また、ペットボトルのリサイクルついて考える出張授業やイベント出展も展開しています。
Q11:このお取り組みの今後の展望については、いかがでしょうか?
藤巻:
改めてとなりますが、サントリーは循環型かつ脱炭素社会に向け、2030年までにすべてのペットボトルをリサイクル素材、あるいは植物由来素材等に100%切り替え、新たな化石由来原料の使用をゼロにするペットボトルの100%サステナブル化の実現を目指しています。今後も、「ボトルtoボトル」水平リサイクルの推進をメインとしつつ、「サントリー天然水」で植物由来素材30%ペットボトルを使用するなど、植物由来素材等の活用も積極的に行っています。さらに、使用済み食用油などのバイオマス資源を活用したペットボトルの実現を目指し、ENEOS様との協業も始めています。
前編で藤巻様には「ボトルtoボトル」水平リサイクルについて詳しくお話をいただきました。後編では、地方創生人財へのお取り組みについてお伺いしています。後編はこちらからご覧ください!