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豊通ヒューマンリソースの取り組みに学ぶ  経営や人事施策に活かすセルフ・キャリアドックの仕組みづくり

イベント

特集記事

2024.2.15


近年、人的資本価値を最大限に引き出す方法の一つとして、社員のキャリア自律支援施策の充実セルフ・キャリアドックの導入ニーズが高まっています。実際、キャリアコンサルティングを行う仕組みがある事業所は、国内企業の45.2%に達しています。ただ一方で、「効果が見えにくい」、「思うように推進できていない」という声も聞かれます。
そこで、2023年11月28日(火)、セルフ・キャリアドックの仕組み作りに先進的に取り組み、現在はグループ関連会社までキャリアコンサルティングを提供している豊通ヒューマンリソース様の事例をご紹介するイベントを開催しました。
ご関心のある方はぜひご覧ください!
〇登壇者
豊通ヒューマンリソース株式会社
組織・人財開発部 組織・人財開発2グループ グループマネジャー
土井 英也 様
〇ファシリテーター
日本マンパワー フェロー
キャリアのこれから研究所 所長
水野 みち
5章以降は、PDFデータでご覧いただけます!
5.育児両立者支援
6.キャリア形成施策実施前の準備

(1) 実施にあたっての検討事項 ~方針/目的、体制、周知/告知、実施、効果検証~
(2) 軌道に乗せることができた要因
7.質疑応答
Q1.組織内キャリアコンサルタントへの期待役割と、マネジメントの役割の切り分け
Q2. キャリア面談 アナウンスに関して工夫していることは?
Q3.人事部から独立したキャリア相談室は、相談者の志向にどう寄り添う?
8.おわりに

1.会社紹介
豊通ヒューマンリソース株式会社は、トヨタグループの総合商社である豊田通商株式会社の人事機能を集約した関連子会社です。総合人事サービス会社として、人事、労務、教育研修などの人事機能をサポートしています。従業員数は、豊田通商からの出向者なども含めて105人(2023年4月現在)です。
私は、組織・人財開発部でキャリア開発に携わり、現在は研修登壇、組織開発ファシリテーター、キャリアコンサルティングなどを行っています。

2.キャリア支援施策実施の背景
(1) キャリア支援の必要性を提言
私は以前からキャリア支援に興味があり、2007年からキャリアカウンセリングの勉強を続けてきました。そして、仕事でもキャリア支援に携わる仕事がしたいと考え、2018年に人材開発部署に異動したのをきっかけに、「キャリア支援をやらせてほしい」と会社の経営陣に話しました。
経営陣に提言したのは、新しいキャリア支援施策の必要性です。おおよそ次のような内容です。
今は社会的に、人的資本経営やキャリアの必要性が注目されている。少子高齢化、グローバル競争の激化、技術革新、個人の価値観の多様化など、企業を取り巻く環境が変化し、予測が立たない世界になってきている。こうした時代においては一人ひとりがパフォーマンスを高めながら生産性を上げていくことが必要で、それが会社を強くする。
私たちも総合人事サービス会社として、従来のような成功体験に沿った一律的な人材育成ではなく、キャリアコンサルティングを通じて、従業員一人ひとりの働きがいやパフォーマンスを高めていくことのできる効率性・付加価値の高いキャリア支援サービスを提供していく必要があるのではないか。
こうした予測が立たない世界を生き抜くためには、従業員一人ひとりが環境変化に柔軟に対応しながら、主体的に自分のキャリアを考えることが必要。同時に、当社としては、顧客の持続的な発展に貢献するために一人ひとりのプロ度向上が非常に重要。それが会社を強くする。そのためには社内のキャリア支援が必要である。

※イベント時土井様投影資料より転載
このような趣旨を丁寧にお話ししたところ、経営陣の同意が得られ、弊社や関連会社において、キャリア形成支援施策が、加速度的に進んでいきました。
(2) バーチャル組織の発足
キャリア支援施策開始の準備にあたっては、まずチームを発足させることから始めました。その際に議論になったのは、人事機能を持っている部署が担当するのかということです。人事部署でキャリア支援を扱うと、たとえばキャリアコンサルティングで話した内容が漏れるのではないかなどと懸念される可能性があるからです。
そこで、どの部署にも属さない独立したバーチャル組織として、各部署の社員が兼務で活動することにしました。組織は「CALICOチーム」(Career Life Consulting)と名づけ、仕事に関わることだけでなく、一人ひとりの「人生(生き方)」も含め、トータルでキャリアをサポートしていくチームとして機能することを目標としました。スタート時のメンバーは、私を含めて3~4人です。「何する?」「どうする?」とチーム内で話し合い、試行錯誤しながら活動を進めていきました。
社員に対しては、CALICOチームが人事部署から独立した組織であることを伝えるとともに、「自分自身のキャリアも、周りの人たちのキャリアも尊重し、お互いにサポートし合い、異なるものが混在することによって生み出されるフュージョンを実感していただけるよう、側面支援に務めてまいります」という、私たちの想いを説明しました。

3.キャリア形成支援施策の概要
(1) 施策概要
キャリア形成支援施策の基本コンセプトは、「社員一人ひとりが、それぞれの分野を軸に、キャリアを主体的に、かつ、柔軟に切り拓くことの支援」です。当初は、一定以上の等級社員に対する「キャリアデザイン研修」と「フォローセッション」から始めました。2017年度から開始し、今年で5年目になります。
キャリアデザイン研修は基礎的な内容で、階層別に行っています。環境を理解し、ご自身のWill-Can-Mustを整理して、「将来のために何をやっていけばいいのか」を考えてキャリアプランを作成しています。
フォローセッションとは、セルフ・キャリアドックのキャリアコンサルティングのことです。研修後の振り返りとして「年に1回はキャリアの棚卸しをしましょう」と、年に1回、1人につき50~60分程度、キャリアコンサルタント(以下「CC」という)と面談をしてもらっています。
面談を担当しているのはCALICOチームのメンバーが中心ですが、「どうしても社外CCがいい」という社員には社外CCが対応しています。
こうした形でキャリア支援を開始しましたが、キャリアコンサルティングがどのようなものか、ピンとこない社員も多くいました。そこで、告知のためのウェブサイトを2020年度に開設しました。また、当初は正社員のみを対象としていましたが、出向社員、契約社員、派遣社員などを含め、現在では全従業員を対象としています。
●ウェブサイト「CALICOの部屋」
「CALICOの部屋」には、キャリア相談窓口の予約ページがあるほか、「CALICOとは何か」「キャリアとは何か」などのメッセージページ、メンバー紹介ページ、キャリアコンサルティングの有用性を解説するページなどを設けています。また、「業務中に行うのか?」「上司に知られないか?」「どのように会社に報告するのか?」などのFAQも掲載し、しっかりと説明しています。
(2) 三位一体のキャリア支援体制
キャリア支援の目的の一つは、会社全体での持続的な生産性向上を目指すことです。そのためには、キャリア研修などの自律的なキャリア形成支援だけでなく、OJTを含む上司のキャリア開発支援や、人事制度など全社的な制度・仕組みの整備も重要です。キャリア支援を単独の施策にするのではなく、個人・上司・会社が三位一体で機能するような体制を構築することが大切だと思います。

※イベント時土井様投影資料より転載
始めた当初は、「キャリアコンサルティングをきっかけに会社を辞めるのではないか」と危惧する上司もいました。それに対しては、「キャリアコンサルティングは、本人のためだけでなく、上司のマネジメントの支援にもなるし、会社が今後どのような制度をつくればいいのかという情報を私たちから提供することもできる」と伝えてきました。
一方の社員に対しては、「あなたのキャリアを考えながら、それを上司もフォローするし、会社としても仕組みを整備する」と伝え続けています。

4.施策の振り返りと今後に向けて
(1) フォローセッション
年1回のフォローセッションについては、「有益」と肯定的に感じている人が8割以上です。今後も、原則必須で継続していく予定です。

※イベント時土井様投影資料より転載
(2) キャリアデザイン研修
研修には、おおむね好評を得ている印象です。弊社の社員は全員が転職入社ですから、「その時にキャリアのことを考えた」と言う人が多かったのですが、実際に研修を受講すると「違った観点で改めて考えることができた」という感想が多く、前向きに捉えている人が多いようです。
(3) キャリア相談窓口
2020年度から開始した全従業員向け「キャリア相談窓口」の実績を見ると、1年に数名の利用にとどまっています。「いつでもどうぞ」と窓口を開いていても、業務多忙な中で時間を割いて相談するにはハードルがあります。とはいえ、声をかけるタイミングと従業員がモヤモヤしているタイミングが合えば相談に来ると思いますので、その接点を増やすための情報発信強化をする予定です。
また、相談窓口はあっても、「社内の人には話したくない」と考える人もいるでしょうから、安心・安全な場であることをさらにアピールしていく必要性を感じています。
(4)今後力を入れていきたい領域
従業員個人への関わりだけでなく、上長(マネージャー)をサポートすることでの人材育成や、組織の問題解決、新施策の提案などに、より注力していければと思っています。
イベントレポート第5章以降は、PDFデータでご覧いただけます!
ぜひダウンロードください!