MENU

キャリこれ

リモート地域副業で、地域・人材の見えない価値を発見し合う(前編)

連載記事

2024.7.3


人は慣れる生き物。同じ地域でずっと過ごしていると、その地域の素晴らしい所がいつしか当たり前になり、特別さを感じにくくなることがあります。自分自身のキャリアに対しても、同じことが言えるかもしれません。自分にとっては見慣れた「たいしたことのない」スキルや経験が、他人から見たら、のどから手が出るほど欲しいものかもしれません。
 「『地域』というメガネで見通すキャリアのこれから」の連載第2回。今回は、異なるバックグラウンドの人たちが交じり合い、地域・人材の見えない価値を発見し合う地域貢献副業プロジェクト「Skill Shift」について紹介します。
ゲスト:株式会社みらいワークス Skill Shift事業責任者 岩本大輔様
記事執筆:日本マンパワー マーケティング部 緒方雪絵

1.地域貢献副業プロジェクト Skill Shift(スキルシフト)とは?

(1)Skill Shift 事業概要と時代背景
「Skill Shift(スキルシフト)」は、株式会社みらいワークスが手掛けるサービスです。同社は、都市部のプロフェッショナル人材と、人材が不足しがちな地域の中小企業を結びつけるプラットフォームを運営しています。特徴は、リモートワークを中心とした「副業」という形を提案していること。
現在、マーケティングや販売促進、商品企画など、事業拡大を図るためのスキルを保有する人材は、本社のある大都市圏に集中しがちです。
一方、地域の中小企業は待遇面や知名度において経験豊富な人材の採用が難しく、さらに、求職者の移住を伴う場合、採用のハードルはさらにあがります。そんな中、「リモート副業」という新しい関わり方ができるSkill Shiftの利用者は、企業・登録人材双方、年々増加しています。地域企業は、業務改善やイノベーションを目的に。人材側は、本業に支障のない範囲で、地域貢献や自分のスキルの力試し等の目的で、このプラットフォームを利用しています。

※みらいワークス様ご提供資料
株式会社みらいワークス 概要
株式会社みらいワークスは、『日本のみらいの為に挑戦する人を増やす』をミッションに『プロフェッショナル人材が挑戦するエコシステムを創造する』をビジョンに掲げ、プロフェッショナルに特化した人材サービスとソリューションサービスを展開しています。
人生100年時代、プロフェッショナル人材が「フリーランス・副業・正社員」といった働き方や、「都市・地方」といった働く場所を自由に選択して、ライフステージに応じた多様な挑戦をしていけるよう、個人の挑戦と活躍の機会の提供を行っています。
現在、登録プロフェッショナルは77,000名超、クライアントは6,100社超となりました。(2024年3月31日時点)。
◆みらいワークスのサービス一覧◆https://mirai-works.co.jp/service/

(2)Skill Shift 副業成立までの流れ
Skill Shiftの仕組みはシンプル。副業人材を求める企業は、掲載料を払って、プラットフォームに案件を掲載。Skill Shiftに登録した人材側が、興味のある案件を探して応募するという仕組みです。人材側の登録は無料です。応募してきた人材の採用活動は、企業が中心に行います。
※Skill Shihtのサイトから転載。実際のサイトには企業名も掲載されています
https://www.skill-shift.com/
地元に密着した企業ならではの求人案件が多く、地元特産品の販路拡大や新商品の開発、地元観光施設のPR、地元スポーツチームの広報など、魅力的な案件がたくさんあります。近年、案件数は急増。現在の案件数は2000件以上で、コロナ前と比べると8倍以上になったそうです(2024年5月末時点)。

2.コロナ禍を経ての変化
~ここからは、Skill Shift事業責任者の岩本様にお話を聞いていきます~
緒方:コロナ禍を経て、Skill Shiftの登録者や企業にどんな変化がありましたか?
岩本:登録者数はぐっと増え、コロナ前と比べると2倍以上になりました(2024年6月登録者数 約15000名)。リモートワークが拡がったことで通勤が無くなり、増えた可処分時間で何か生産性ある活動をしたいと思った人たちの登録が増えたようです。
一方、登録者の年代・属性は、コロナ前から変化はありません。東京を中心とした都心部の企業に属する20~40代が中心で、男性8割女性2割です。登録者のスキルとしては、マーケティング、新商品開発、販路拡大など、売上をあげるスキルをお持ちの人が多いです。最近、人事関連のスキルを持っている人も増えています。
ここで企業側のニーズについてお話しますと、コロナ前後とも変わらず、「売上をあげたい」という企業様が多いです。
緒方:先ほど、人事関連のスキルを持っている人の登録が増えているという話がありました。人事施策のニーズもあるのでしょうか?
岩本:はい。実は最近、採用や定着率をあげる施策を一緒に考える人材がほしいという企業が増えてきています。労働人口が減少する中、今までと同じやり方では人が採用できない。また、せっかく入社してくれた人材には長く活躍してほしい。地方の方が人材不足は深刻ですから、より切実な課題のため、ニーズも多くあります。

3.Skill Shift事業責任者岩本さんに聞く「副業人材が入ることでの化学変化」
~もともとIT分野で長く仕事をしていた岩本さん。「サービスデザインを通じて、いつか社会課題の解決にチャレンジしたい」と思っていたそうです。60歳・65歳を超えてもイキイキ働き続けるための1つのステップとして「副業」に可能性を感じ、ご縁もあってみらいワークスに入社。その後、地域副業プラットフォームSkill Shiftの事業責任者になりました。
 最初は、人材側の視点に立って考えていたそうですが、事業に携わるうちに、地域側の課題との結びつけて両軸で解決していく重要性に気づいたといいます。
岩本さんが関わった副業案件の中で、特に印象に残っている事例を1つ教えてもらいました。~
岩本:「月光グラス」を作っている片岡ケース製作所様の事例を紹介します。副業人材が入ることで、企業側の化学変化を強く実感した事例です。
※暗闇で光る月光グラス
この「月光グラス」は、光のエネルギーを蓄える「蓄光ガラス」という素材を使っていて、暗闇で幻想的に光るグラスです。開発したのは、岐阜県多治見市にある企業様。月光グラスは地元の「ふるさと納税返礼品」にも採用されています。ただ、少数精鋭の会社様なので、販路拡大・認知度向上に手が回らないことが課題でした。
そこで、Skill Shiftを使って、副業人材を募集したところ、異業種出身、キャンプが趣味の人が入ってきたんです。
その人は「キャンプファイアしながら、月光グラスでお酒を飲んだら素敵では」と、新しい利用シーンを提案しました。それを聞いた製作所の人はびっくり。キャンプ先にガラスを持っていくなんて想像もしていなかったそうです。それまでは、記念品・贈答品としての利用が多かった月光グラスですが、その人の活躍で販路を広げていく活路が見いだせたそうです。
正社員を採用する時は、「うちの業界を知っていないとついていけないから」と、どうしても同じ業界から人材をとりがちですよね。そうすると、なかなか新しい風が吹きません。イノベーションも起きにくい。
副業という形で、異業種人材が組み合わさることで、その会社が違うステージに進んでいく。その組み合わせを作っていける可能性があるのが、この事業に携わっていて本当に面白いところです。

4.地域の課題
緒方:片岡ケース製作所様の事例、大変興味深かったです!異業種の人が入ることで視野がぐんと広がるんですね。
ほかにも、地域企業や地域自治体の方と接する中で、何か共通の課題として感じたことはありますか。
岩本:皆さん、共通して「うち、何もないんだよね」と言うんですよね。でも、そんなことは全然なくて…。他の地域から来た人が「ここってものすごい魅力的じゃないですか」と、その地域の魅力を再発見したりするんです。ずっと住んでいると、地域の良さが当たり前になってしまって発見しづらいという課題はあるかもしれません。

5.登録者側の課題
岩本:実は、登録者と話していても、地域の課題と似たものを感じることがあります。というのも、登録者と話していると、「自分はたいしたことができない」と話す人が非常に多いんです。でも、自分の当たり前が、社外に出てみると当たり前じゃないこともたくさんあります。
マーケティングや販売促進に関する新しい知見は都市部に集まりやすいので、登録者がいつもやっている当たり前のことを発揮するだけで、すごい価値になることがあります。実際、そういった場面を多く目にしてきました。
課題と言うと言いすぎかもしれませんが、登録者側は自分の持っているスキルに意外に気付いていないことがあります。だから、副業先で自分の価値を再発見してもらえると嬉しいです。
★後編はこちら

HRフェス 人的資本経営時代 いま、必要なキャリア開発支援とは
IHIの取組事例から学ぶミドルシニア社員のキャリア自律支援のポイントとは
キャリアコンサルタント養成講座(総合)