山口しごとセンター センター長
栁谷 和暉(やなぎたに かずあき)さん
キャリアのこれから研究所 プロデューサー
酒井 章
Q:
まず、栁谷さんのこれまでのキャリアと現在のお仕事についてお話しいただけますか?
栁谷:
出身は高知県ですが、現在は山口で仕事をしており、妻と子供2人という家庭環境です。
Q:
栁谷:
将来は子供からお年寄りまでが、縁側のような雰囲気で一緒に楽しく話したり活動できたりするような場を作りたいという夢ができたんです。そして最初に就職したのが医療事務のパイオニア企業でした。入社2年目に県と市の統合病院建設プロジェクトメンバーに抜擢され、新卒採用や人材教育などにも関らせていただきました。そこで、カタチのないところからモノを作り上げる大変さ、ジョイントベンチャー(共同企業体)先企業の多様な人たちと考え等をすり合わせる調整業務の経験は、今でも活かされています。
Q:
栁谷:
はい、そうです。改めて「人とキャリアに関わっていくような仕事がしたい」と思い、大学のキャリアセンターでの仕事を経て、山口しごとセンター(旧山口県若者就職支援センター)でキャリアカウンセラーとして働き始めました。当初は契約社員でしたが正社員に登用いただき、イベント企画運営部署と副センター長を経て、今はセンター長という役割でお仕事をさせていただいています。
Q:
栁谷:
2004年に経済産業省のジョブカフェ事業の一環として山口県若者就職支援センターという名称で設置されました。その後、日本マンパワーが2010年に指定管理者として施設の管理運営全てを任せていただくようになりました。2018年に年齢制限等を一部緩和し、シニアや子育て女性などの幅広い方の支援をする「山口しごとセンター」に名称変更になり、2021年に新山口駅に併設した市の産業交流拠点施設・KDDI維新ホールの3階に施設を移転しました。
Q:
栁谷:
基本的には個別相談です。センター内では個室の安心できる環境で最大70分時間をとってキャリアコンサルタントが相談業務に応じています。対面だけではなくてオンライン相談や電話相談もやっています。また、山口県は広いので遠方にある大学等には、キャリアコンサルタントが定期的に出向いて、相談業務やセミナーなどを開催して、早い段階から地元企業やキャリアについて考えるきっかけを増やすような取り組みを行っています。
Q:
栁谷:
学生さんの場合、自分の興味のある情報だけを収集できる時代になっているだけに、限られた視野の中で考えてしまうケースが多いと思います。なので「それって都会に行かないとできないことかな」とか「山口にもこんなグローバルに活躍している企業がある」といった問いかけや情報提供をするなど、『もしかしたら身近な企業にもあなたが輝ける場所がありますよ』というように視野を広げるための伴走役としての役割を担っていると思います。
Q:
栁谷:
一番の課題は、高校を卒業して大学に進学をする学生さんの約7割が広島、福岡、関西圏、関東圏などの県外に出てしまい。なかなか戻ってこないということです。山口も人口減少、地方中小企業の人手不足がより一層顕著になっているのが現状です。
Q:
栁谷:
コロナ禍以降、より移住への注目が高まっていますが、山口では、UJIターン就職希望者は少し減ってきている印象を受けています。
Q:
栁谷:
山口では2拠点生活をしている方はまだまだ少ないです。関東圏であれば、山梨、静岡、長野など東京と行き来ができる選択肢が幅広いと思いますが...一方で、県内各市町でコワーキングスペースなども整備されているので、首都圏とは異なる働き方や地域の魅力を発信していく必要性を感じています。
Q:
栁谷:
私個人の考えとしては「年齢によって、そのときにしか経験できないことが地域にはある」と思っています。小さいときの経験が記憶に残って郷土愛に繋がるのではないかと。今しかできないことを子供に体験させてあげる機会や家族と一緒に触れ合える機会が増えれば、地域の魅力は広がっていくのではないでしょうか。山口市もニューヨーク・タイムズ(2024年1月9日)に「訪れるべき世界の都市」の3番目に選んでいただいたのですが、その理由もさまざまあると思います。
Q:
栁谷:
就職や移住といった部分では繋がっています。移住の担当部局と連携しながら情報収集をしていますが、組織の枠を越えて「横串」をさす必要性を強く感じています。
Q:
栁谷:
デジタル化やDX化が進む一方、今後、より人と人の繋がりや対面で人の顔が見える感覚がすごく求められる時代になっていくと思っています。そこには、ネット社会にはない承認欲求や自分の存在価値への欲求がきっとあるんでしょうね。そういう中で、民間企業や行政機関等が、もっと地域との繋がりを強化することで、地域課題解決など、より地域とのネットワークや信頼関係も強化されますし、自分が知らない地域の魅力を発見することにも繋がってくるのかもしれません。今住んでおられる地域の魅力を若い人や子供にも感じてもらいたいですね。
Q:
栁谷:
そうですね。私も前職の医療業界での経験を経て、いろんな転機が、大なり小なり日々起こっていますが、起こった出来事に対してポジティブな意味づけができるかどうかで前に進む力や自分を認めることにも繋がってくると思うようになりました。
Q:
栁谷:
山口県内への就職・転職・UJIターン支援を行う求職者支援、採用や定着など人材確保を行う企業支援、求職者等と企業の出会いの場を提供するイベント運営等を行っており、山口県の各部局と厚生労働省山口労働局から事業の委託を受けて運営しています。
Q:
栁谷:
おっしゃる通りだと思います。「自分の考えが伝えやすい」「成長実感を得やすい」といった若者の価値観に合致する部分では地方にすごくチャンスがあると感じます。
栁谷和暉さん プロフィール
高知県出身。大学在学時に専攻外でホームヘルパー資格を取得し、卒業後、医療事務のパイオニア企業に入社。日本初の公的医療機関PFI事業メンバーとして、救命救急部門を担当。2006年株式会社日本マンパワーに入社。CDA取得後、山口しごとセンターに所属し、大学等にてキャリアカウンセリングやセミナー業務等に従事。現在は、施設長として、メンバーとともに就職支援・人材確保支援サービスをワンストップで提供中。
キャリアのこれから研究所プロデューサー。美大の大学院に飛び込んで
自ら創造性の再開発を実験中
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