新人・若手社員のオンボーディング「寄ってたかって育成する」新卒就職人気ランキング上位企業・両備システムズの事例
企業事例新入社員
2024.9.24
新入社員から若手社員の育成は、いつの時代も企業にとって非常に重要なミッションであり、課題であるといえます。
とりわけここ数年はコロナ禍の影響や若手社員の価値観の変化もあり、せっかく良い人材を採用しても早期に離職してしまう、モチベーションを下げてしまう、という声が年々増えており、 若手の育成・定着についてお悩みのない企業は、もはやないのではないかと感じさせられます。
若手社員の多様化、そして社会環境の急激な変化の中、自社の将来を担う人材をどのように育成し、社内でいかに活躍してもらうのか。この非常に重要なポイントに焦点を当てたイベントを実施いたしました。ご登壇いただいたのは、新卒の就職人気企業ランキングでは中国エリア内で毎年上位にランキングされている株式会社両備システムズ経営推進本部総務・人財統括部人財戦略部でリーダーを務める三上紀子様です。きめ細やか、そして多様な施策はきっと皆さまの参考になると思います。ぜひご一読ください。
〇登壇者
株式会社両備システムズ
経営推進本部 総務・人財統括部 人財戦略部
リーダー
三上 紀子 様
(国家資格キャリアコンサルタント)
〇ファシリテーター
株式会社日本マンパワー
秋本 暢哉
目次 ※クリックすると各章にジャンプします
【前編】
「4」~「8」の内容は、ダウンロードフォームにご入力いただきますと、PDFデータでご覧いただけます!
4.トレーニー育成プログラムの詳細
(1) 育成チームのミッション
(2) メンバーの選出条件
5.新入社員研修期間中の施策
(1) 新入社員の目の色が変わる「2年目成果発表会」
(2) 配属後に生かす振り返りと心身コンディション
6.プログラム運用の2つのポイント
(1) メンバーに特に携わってほしい点
(2) 望ましい人財育成方法を導くフレームワーク
7.成果と今後の課題
8.クロストーク Q&A
1.両備システムズの概要
株式会社両備システムズは、創業115周年を迎える両備グループの1社です。両備グループの事業は、トランスポーテーション&トラベル部門、くらしづくり部門、まちづくり部門、社会貢献部門、ICT部門に大別できます。弊社はICT部門に属し、「ITの新たな技術で、ビジネスの未来を創造する」をミッションにしています。
弊社の設立は1969年で、2020年に両備システムズグループ6社が合併しました。所在地は岡山県岡山市です。公共、医療・健康、教育分野および民間企業向けのソリューションやクラウドサービス、データセンター事業などを展開しています。
社員数は約1,600名(2024年4月現在)で、ここ数年は毎年70~80名の新入社員を採用しています。新卒の就職人気企業ランキングはエリア内で毎年上位にランキングされています。
私が所属する人財戦略部の部門ミッションは、「個人・組織の能力を最大化することで、経営目標に寄与する」ことです。いわば、「人をいかにして活用していくか」に焦点を当てています。
2.新人・若手社員育成施策の実施に至る背景
本日は、新人・若手社員育成施策である「トレーニー育成プログラム」についてご紹介します。これは、新人・若手社員をチームで支援し、早期戦力化を図るための施策です。育てる社員の特性に応じて柔軟に対応できる、両備ICT部門のオリジナルプログラムです。
プログラムのご紹介にあたって、その実施に至る背景からお話しします。
株式会社両備システムズ 三上 紀子 様
(1) 人財開発のありたい姿
弊社が考える「人財開発のありたい姿」を図式化すると、次のようになります。
個のパフォーマンスを向上させるためには、「人財開発」が求められます。ただ、それをさらに組織で有効に活用するためには、「組織開発」も必要です。組織開発とは、弊社では「人の関わりにより、組織を活性化し組織全体のパフォーマンスを向上する」と定義づけています。この人財開発と組織開発のそれぞれが機能して初めて、人財開発の制度・施策(キャリアパス制度、業績目標管理、人財ロードマップ、トレーニー育成プログラム、教育体系など)が有効に働くと考えています。
ちなみに、キャリアパス制度は2012年に一新されました。それまではいわゆる年功序列でしたが、成果を重視するとともに、個々が主体的にキャリア形成をする制度に変わりました。そこで日本マンパワー様にご協力いただき、2013年に初めてキャリアセミナーを導入しました。日本マンパワー様とはそれ以来の長いお付き合いになります。
(2) 育てたい人財と育成のポイント
「VUCAの時代」と言われますが、ビジネス環境の変化は私自身もひしひしと感じています。特にIT業界は前例踏襲では対応できません。毎日のように新しい技術が生まれ、プロジェクトもそのメンバーもどんどん変化しています。また、新入社員の価値観も多様化しています。
こうした状況下において、弊社が育てたいと考えている人財は、「時代の変化に適応し、価値創出できる人財」です。そのためには、「経験する」→「経験を振り返る」→「マイセオリーを得る」→「新しい状況に適用する」というサイクルを回し、不安・葛藤を乗り越えチャレンジする力と、経験から学び次につなげる力を育てる必要があります。
育成のポイントとしては、「チャレンジしてみたい、してみよう」と思うように動機づける安全・安心(信頼)の基盤づくりと、経験を振り返る内省の促進、そして、組織ぐるみ(チーム)で育てる仕組みづくりです。それらをテーマに、トレーニー育成プログラムを考えました。
(3) ベースは「7:2:1の法則」と「経験学習」
トレーニー育成プログラムのベースとした理論は2つあります。
1つは「7:2:1の法則」です。人が成長するために何から学びを得るかの割合を示した法則で、7割が業務経験、2割が他者からのフィードバック、1割がさまざまなトレーニングです。そのため、普段の業務でいかに学びや気づきを得て、次の仕事に生かしていくかがポイントだと考えています。
もう1つは「経験学習」です。経験学習サイクルを身につけて自分でできるようになるようにプログラムを設計しました。
3.トレーニー育成プログラムの概要
(1) 目的は、組織、先輩社員、新人・若手社員ごとに
トレーニー育成プログラムとは、新人・若手社員をチーム中心に支援して早期戦力化を図る新人・若手社員育成施策のことを指し、弊社ではこの名称で呼んでいます。「制度」と呼ばず「プログラム」と呼んでいる理由は、現場の実態に即して各現場で柔軟にブラッシュアップすることを推奨しているからです。活動期間は、配属後の6月から最初の昇格までの1年6ヵ月間です。2024年度は6サイクル目に突入しています。
実は、日本マンパワー様の「キャリアのこれから研究所」サイトで、2021年12月に本プログラムに関するインタビュー記事が公開されています。ただ、その後もブラッシュアップしていますので、改めて最新の情報を共有させていただきます。
トレーニー育成プログラムの目的は、組織、先輩社員、新人・若手社員の三者ごとに設定しています。
【組織】
・「両備ICT部門の未来を創る人」をチームで育成する風土醸成
【先輩社員】
・育成行動を通じて、相手(部下/後輩)も自らも成長する
【新人・若手社員】
・仕事の意義を見出し、周囲と協働して成果を出せる。
・そのための土台として心身の健康も保っている。
・キャリアビジョン達成のために、自ら成長し続けている。
(2) チームを中心に「みんなで寄ってたかって」育成
育成に携わるチームは1チーム4名で構成し、「トレーニー育成チーム」と称しています。チームメンバーは、新入社員1名、育成責任者1名、トレーナー1名、メンター1名です。ここにさらに「+α」として、業務プロジェクトのメンバーや新入社員同士のつながりも加わり、みんなで寄ってたかって育成している状態をめざしています。
各メンバーのミッションや選出方法、支援内容などの詳細につきましては、後ほどご説明します。
(3) KPI(重要業績評価指標)の2軸
本プログラムのKPI(重要業績評価指標)として、2軸を置いています。
1つは「成長実感レベル」です。レベル1からレベル4までを次のように設定しています。
【レベル1】PDCAを回せている
【レベル2】効果的な育成ができている
【レベル3】自律的成長につなげている
【レベル4】育成風土が醸成されている
レベル4はまさに、みんなが寄ってたかって新人・若手社員を育成する風土が醸成されている状態です。それをめざして、定期的に定量評価を実施し、成長具合の実態を把握しています。
もう1つの軸は「入社後3年以内離職率」の低減です。ここ最近は一般的に30%を超えるとも言われていますが、弊社ではもっと低い数値をKPIとして設定しています。ちなみに、直近の調査では約7%となっています。
「トレーニー育成プログラム」の詳細については後編でご紹介しています。
イベントレポート「4」~「8」の内容は、PDFデータでご覧いただけます!
ぜひダウンロードください!
編集プロダクション (有)エディット 代表取締役
キャリアコンサルタント、JCDA認定CDA
キャリアに関する記事を数多く執筆・編集