視覚をOFFにして、共感をONにする:日本ブラインドサッカー協会・岡村康平氏が語るOFF T!ME Biz研修の本質
インタビュー
2025.1.17
インタビュアー:日本マンパワーマーケティング部 中村裕
岡村康平(おかむら こうへい)氏 プロフィール
1987年4月20日、神奈川県出身。学生時代はサッカーに夢中になる。
大学卒業後はプロフットサル選手のキャリアを選択。2014にFリーグ(日本フットサルリーグ)デビューを果たし、2016年にフットサル日本代表候補に選出される。2023年3月に行われた第28回全日本フットサル選手権大会で優勝。引退後は日本ブラインドサッカー協会(株式会社Criacaoにも所属)に所属し、研修講師として活動をスタートする。現在では研修講師だけでなく、日本ブラインドサッカー協会での既存営業も担当。
まず、日本ブラインドサッカー協会(以下、JBFA)が大切にしている理念や活動内容についてお聞かせください。
JBFAは、視覚障がい者と健常者が「当たり前に混ざり合う社会」を実現することをビジョンに掲げています。ブラインドサッカーという競技を通じて、障がいの有無を超えた共生社会を目指しています。
JBFAが行っている具体的な取り組みについて教えてください。
協会の活動は主に以下のような取り組みで構成されています:
ブラインドサッカーの大会を開催し、競技者の技術向上と競技の認知度拡大に努めています。
社会人を対象にコミュニケーションやダイバーシティをテーマとした研修「OFF T!ME Biz研修」や、個人参加型の「OFF T!ME体験会」を提供しています。また、学生向けには全国に「スポ育」を展開しています。
視覚障がい児を対象としたキャンプやイベントを通じて視覚障がい児がスポーツに触れる機会を提供しています。また、キャンプでは着替えや食事といったスポーツ以外のことを学びながら、家族間や他の参加者との交流を深めています。
地域社会でのイベントを通じて、ブラインドサッカーの認知度向上と共生社会の重要性を啓発しています。障がい者と健常者が相互理解を深める機会を作っています。
岡村さんご自身の役割やミッション・ビジョン、この活動に携わるきっかけについて教えてください。
私は主に以下の三つの分野を担当しています:
企業向けにOFF T!ME Biz研修の講師・ファシリテーターを担当しています。体験を通じてコミュニケーションや多様性の重要性を学んでもらっています。
個人参加型OFF T!ME 体験会を通じてブラインドサッカーの普及・啓蒙や視覚障がい者への理解促進をテーマにしたセッションを担当しています。
企業や団体との連携を進める営業活動を行い、パートナーシップを拡大しています。
これまでのご経験やご縁、そして指導者としてのやり方やあり方を見てくれている方がいて、今の仕事につながっているのですね。
さて、OFF T!ME Biz研修は様々な企業様に導入いただいています。岡村さんの考えるOFF T!ME Biz研修の価値について教えてください。
OFF T!ME Biz研修の最大の価値は、参加者が「相手の立場になって考える」きっかけを得られることです。自分の当たり前が相手の当たり前じゃない、ということに気付くことができます。情報の8割を得ていると言われる視覚を「OFF」にする環境下でセッションをすることで、普段は当たり前と考えていることが、他者にとっては異なる可能性があることを体感します。例えば、視覚障がいのある方に物事を伝える際に、自分の言葉がどのように相手に伝わるかを深く考えなければなりません。これにより、日常的なコミュニケーションスキルの向上や他者への共感力が養われます。
確かに私たちに入ってくる情報の多くは目から入ってきますよね。目で得た情報を解釈して言語化したり、ジェスチャーを使って自分の伝えたいことを伝えたり、相手のことを受け取ったりしようとしますが、それがない状態なので言葉がより重要になってくるということでしょうか?
そうですね、あとは「触覚」も大事です。触れることによって温かさを感じたり、不安を軽減したり、心の距離を縮めることができます。
物理的、心理的に人と触れることが少なくなっている中で、現代において「触れる」ことの意味が大きくなっているのかもしれませんね。
その通りだと思います。まとめると私たちはOFF T!ME Biz研修を通じて以下のような価値を提供しています。
視覚情報に頼らない状況下で、チームメンバーが協力して目標を達成する体験を通じて、信頼関係を築きやすくなります。研修後には「一体感が生まれた」「他部署との関係性が改善した」といった感想が多く寄せられています。
研修中、リーダーシップを発揮する場面が多々あり、これまで気づかなかった社員の能力が見える化されることもあります。「普段は控えめな社員がリーダーシップを発揮した」といった意外な発見があり、組織内の人材育成に貢献しています。
障がい者雇用の推進や多様性の理解が課題となっている企業に対しても、本研修は効果を発揮します。障がい者の視点を理解する機会を提供することで、現場の受け入れ態勢の改善や、障がい者と健常者の相互理解を促進しています。
OFF T!ME Biz研修はどのような対象やテーマが多いのでしょうか?
先ほど述べたこととも重なりますが、チームビルディングやコミュニケーションをテーマにしたものが多く、次にダイバーシティや障がい者雇用理解のテーマでも実施します。対象は、新入社員や内定者向けが一番多いですが、次世代リーダーや管理職向けなど幅広い層に対応しています。部署横断的に全社的なエンゲージメント向上に活用いただくケースもあります。
岡村さんがご担当された中で印象に残っている研修はありますか?
同じ時期に商社の営業パーソン向けとインフラ企業の技術職向けにOFF T!ME Biz研修を実施したことがあります。対象はどちらも新入社員です。同じ新入社員でも発信の仕方やワークの成果が全く異なります。前者では、外向けの発信が多く全体的に活気があったのですが、みんながみんな発信ばかりだとコミュニケーションとしてはうまくいかなくなることがあります。その中でも研修を進めていくと、バランスを見てフォロワーに徹する方や全体をコントロールする方も出てきました。一方、後者は「うちの社員は黙々と仕事をこなすタイプが多いんです」と企業担当者の方がおっしゃっていたのですが、自らリーダーシップをとる方も少なくありませんでした。企業担当者の方も意外な一面が見られたと喜んでおられました。会社や業種・職種によってカラーはあれど、社員一人ひとりは個性的なものです。そういった方々が研修を通じて段々と混ざり合っていく面白さがあります。どちらも受講者満足度は高かったです。
自分や相手のコミュニケーションのタイプを知り、それを場面場面でどう出していけばよいか考えていくことが大切なのですね。コミュニケーションやチームビルディングの本質は、どんな対象、どんな業種・職種でもきっと同じなんでしょうね。
企業担当者の方がなぜこの研修を導入しようと思ったのか、企業担当者の声など聞かれていますか?
研修を導入した企業担当者からは、「現場での雰囲気が明るくなった」「社員間のコミュニケーションが活性化した」などのポジティブな意見が多く寄せられています。受講者の皆さんが混ざり合いながらハイタッチしていたり、楽しそうに笑顔でいたりするところを見て企業担当者の方から感謝されることが多いですね。他の対象者にも実施したいと言われることも多く可能性の広がりを感じていただいています。
受講者自身にはどんな変化が見られますか?
研修が進むにつれ、みなさんの高揚感が伝わってきます。声を出す、笑顔になる、人に触れることで楽しかったという反応がダイレクトに伝わってきます。おとなしめに思える方がリーダーシップを発揮する場面も何度も見てきました。また、「最初は不安だったが、終わる頃には笑顔になった」といった声をいただくなど、研修中の変化が顕著に現れています。研修は単なる座学ではなく、身体を動かす体験型プログラムなので、参加者同士のチームワークや一体感を生み出します。新入社員研修だけでなく管理職向けのセッションなどでも利用され、組織内のコミュニケーション向上に大きく寄与しています。
最後に、この研修を検討している人事担当者にメッセージをお願いいたします。
OFF T!ME Biz研修は、視覚的な制約を取り入れることでコミュニケーションやチームビルディング、ダイバーシティの本質に気付く体験型のプログラムです。参加者にとって新しい気づきや学びを提供します。研修内容は安全性を重視しており、幅広い年齢層の方にご参加いただけます。
マーケティング、事業開発、イベント企画などを担当。サッカーとすき焼きと広島お好み焼きをこよなく愛する。
特技:片方の眉毛を高速で動かせる。弱点:メガネが似合わない。
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