~新シリーズ「初めてのキャリア」。キャリアについて、よくある疑問やお悩みを、ストーリー形式で紹介していきます。~
皆さんは、「キャリア」ってどんな意味で使っていますか?
「Aさんは、この業界で何年もキャリアがある」とか、「Bさんは、キャリア採用だから」とか、職業上の経歴という意味で使っている人が多いかもしれません。
でも、実は「キャリア」には「経歴」以外の意味もあるんです。ぜひ、これからご紹介する記事を読んでみてください!
(連載第2回目は、4月下旬に掲載予定です)
1【登場人物紹介】大手食品メーカー Y支店営業部のメンバー

武田課長
40代後半の男性。求人が厳しい就職氷河期に入社したため、愛社精神はあるほう。若手社員とは働き方にジェネレーションギャップを感じている

波田野さん
30代前半の女性。入社 10 年目で、社内に同期も多く情報通。仕事は好きだが、急に残業が発生することも多く、家庭との両立でひそかに苦労している。

竹中さん
20代前半の男性。入社 3 年目。地元の大学を卒業して、現地採用で入社。 最近、同期の転職が相次ぎ、自分はこのままでいいのかと少し悩んでいる。

里見さん
50 代の女性。別の支店から異動してきた総務担当者。キャリアコンサルタントの資格を持っている。
2朝の仕事のスタート ~今度、キャリア面談が始まるらしい~
ここは、ある大手食品メーカーの地方支店の営業部。営業職や事務職の20人ほどが一つのフロアで机を並べている。今日は月曜日で、全体ミーティングが終わったところだ。

みんな、ちょっといいかな。通達を見たと思うけど、今度、1on1ミーティングをすることになりました。日時はチャットで連絡するので、予定しておいてもらえませんか?

心の声
(えっ、1on1ミーティング? いったい何を話したらいいんだろう? 業務の相談なら毎週のようにやっているし・・・・・・)

その1on1では、いったい何を話したらいいんですか?

『業務ミーティングではなく、“キャリア面談”として行ってください』と言われてるんだ。だから、みんな自分のキャリアについて考えておいてくれないかな。まずは話を聞かせてもらうから。

心の声
(「自分自身のキャリア」か・・・・・・。いまの営業の仕事を続けるか悩んでいるんだけれど、相談しづらいな・・・・・・)

そういえば、今日からうちの支店に異動してくる総務担当の里見さんは、キャリアコンサルタントっていう資格を持ってるらしいですよ。聞いたら何か教えてくれるかも。

そうだった! 里見さんの歓迎会ランチ、ちゃんと予約できていたかな?もう一度確認しておこう。
そう言ってスマホで電話しながら別室に向かう武田課長。
その様子に顔を見合わせて笑う波田野さんと竹中さん。仕事は忙しいが、武田課長がちょっとおっちょこちょいなところがあるぶん、課内はどこかやわらかな雰囲気が保たれていた。

おはようございます。 里見と言います。今日からよろしくお願いします!

あっ、おはようございます! どうぞこちらへ。
3歓迎会のランチ会で
(1) キャリアってどんなイメージ?
武田課長が、歓迎会のために予約していたのは、会社の近くの洋食店。歓迎会がランチ形式で始まったのはコロナ禍から。飲み会より気軽でいいという声が多く、現在もこの形が続いている。全員の自己紹介が済んだところで、波田野さんが切り出した。

今度、うちの支社でも 1on1のキャリア面談が始まるんです。 里見さんはキャリアコンサルタントの資格をお持ちなんですよね。キャリア面談って何をするんですか?

なんだか、心配している様子ですね。波多野さんは、キャリアっていうとどんなイメージをお持ちですか?

そうですねー。キャリア官僚とか、キャリアアップとか。バリバリ働くようなイメージがありますね。

そうですよね。私も以前は、同じようなイメージを持っていました。でも実は、そうでもないんですよ。キャリアの語源を辿ると、道に刻まれた『わだち』という意味なんです。馬車などが通った車輪の跡ということですね。
そこから発展して、人が通った足跡だとか、人生を通じて歩んでいく経歴を表すようになったんです。ですから、もとは人生全体というニュアンスがあるんです。

へぇ~っ。

そうなんですよー。キャリアには、仕事だけでなく、家庭での役割とか、趣味とかボランティアとか、学生時代や子どもの頃の体験など、人生のあらゆる経験が含まれると専門家の間では考えられているんですよ。

へぇー、そうなんですね!『キャリア』というのは、履歴書に書くような、人に向けてはっきり説明できる『肩書き』や『実績』のことだと思っていました。
でも、それだけではないんですね。
(2) キャリアの意味づけは、一人ひとり違う

キャリアって、一人ひとりが意味づけてつくっているものなんです。
たとえば、みなさんはどうしてこの会社で働こうと思ったんですか?

えっ、入社の動機ですか? 私が子供の頃、母がよくうちの会社のカレールーを使ってカレーを作ってくれたんです。それが私は大好きで、いまの子どもたちにも美味しい食事と幸せな思い出を届けたい、と思ったんです。

僕の場合、地元で働ける、ということが大きかったですね。
家族や友達もだいたい近くにいますから、働くなら地元だと思ってました。大学に来ていた求人の中にウチの会社の地元採用の募集があったので、応募したら、運よく採用された、という感じです。

私が就職活動をしていたのはいわゆる『就職氷河期』で、求人そのものが少なくて苦労しました。
希望した会社になかなか決まらなくて落ち込んでいたところ、『一緒に働こう』って言ってくれたのがウチの会社だったんです。そのことは今でも感謝していますね。

ありがとうございます。いまみなさんが話してくださった『入社の動機』はそれぞれの意味付けがありますよね。同じ会社の同じ部署で働いているみなさんでも、仕事の経験年数や役職だけでなく、会社との関係のつくり方や、働く意味の捉え方が、人によって異なっています。

また、会社を離れれば、みなさんそれぞれに家庭での生活と役割があって、誰一人として同じではないと思います。こうした一人ひとりで異なる経験や役割が、それぞれの関係性や価値観につながって、それぞれに異なるキャリアを形作っているんです。
「職務」や「経歴」を意味する方を「狭義のキャリア」だとすると、こうした人の生涯全般を捉える考え方を「広義のキャリア」といってもいいかもしれませんね。

なるほど・・・キャリアは決して仕事に関係することだけではないんですね。そう言えば、マネージャー研修で配られた資料に、キャリアに関する項目もあったなぁ。面談の前に読み直すようにします。
いや~、今日の話がなかったら、うっかり、いつもの業務ミーティングの延長線で面談を進めてしまっていたかもしれません。キャリア面談の前に里見さんの話が聞けて良かったです!

心の声
(キャリア面談って、業務以外のことも色々話していいんだ。ちょっと安心したかも…。里見さん、ありがとう~)
4今日のまとめ
○キャリアの考え方には「狭義のキャリア」と「広義のキャリア」がある
・狭義のキャリア:職業、職務、経歴など
・広義のキャリア:人が生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分との関係を見いだしていく連なりや積み重ね(文部科学省による定義)
○生涯のさまざまな経験への意味付けが、個人のキャリアをつくる
多様な働き方や生き方が広がっている現代、自分のキャリアを会社任せにせず、自分で考える「キャリア自律」の重要性が増しています。この「キャリア自律」を考えるとき、一人ひとり、働くことへの意味付けをしていくことが重要です。
働く個人のキャリア自律は、企業側にとってもメリットがあります。企業経営者・人事の方からよくあがるのが、従業員のキャリア自律が進むと、会社を辞めてしまうのではないかという心配の声です。
しかし実は、働く個々人のキャリア自律が進むことで、仕事のやりがいや充実感が高まり、ひいては、所属する組織に進んで貢献しようとする「組織コミットメント」も高まるという研究結果が出ています。
「キャリア自律が組織コミットメントに与える影響」 堀内泰利 岡田昌毅
(産業・組織心理学研究 2009年 23巻)
キャリア自律は、働く個人・企業双方にとってメリットがあることなのです。

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