MENU

キャリこれ

「関西ここからキャリア」レポート4~キャリア開発と組織開発の関係と課題解決のポイント~

連載記事

2025.11.25


日本マンパワー関西支社では、企業人事担当者の方を対象に、キャリア開発支援の参考情報をご提供し、参加者同士で情報交換をしていただくセミナーを開催しています。

4回目セミナーでは、組織開発をテーマに開催。対象範囲が広く、ピンとこないといわれることもある「組織開発」に、キャリア開発の視点からアプローチしました。本記事ではその内容を再構成の上ご紹介します。

 

●第4回目セミナー 2025916日実施
登壇者 黒田留以(株式会社日本マンパワー コンサルティング部部長)
*大学で臨床心理学を専攻。人材開発・組織開発・キャリア開発に約20年従事し、さまざまな企業でキャリア支援施策の立案・運用を担う。現在、立教大学大学院経営学研究科リーダーシップ開発コース2年次在学中。

 

●執筆:石澤寧(エン・モア合同会社)緒方雪絵(株式会社日本マンパワー)

 

1「組織開発」とは何か?

―範囲が広いがゆえに、内容がピンとこないと言われることも多い『組織開発』。
今回のセミナーは、登壇者黒田の「組織開発ってどんなイメージですか?」という参加者への投げかけから始まりました。
参加者から、「適材配置」「環境改善」「エンゲージメント調査」など、回答が続々とかえってきます。

 

そういった回答にたいし、黒田が「適材配置は、組織開発ではなく組織デザインの方ですね」などと返し、まず、組織開発と類似キーワードを整理していきました。

組織開発 及び 似ている用語

 

組織開発=Organization Development。組織をより良くするための開発行為全般を指す。個人から組織全体まで、あらゆるレベルの関係性の改善や効果の向上を目指す。

 

組織デザイン=organization design。企業が目標達成のために、社員が最大限の能力を発揮できるよう組織の構造や仕組み、運営方法を計画・設計すること

 

キャリア開発=企業が従業員のキャリア形成を支援する取り組み

 

人材開発=企業が従業員一人ひとりのスキルや能力を向上させ、会社全体のパフォーマンスを高める取り組み

黒田
組織開発の対象には、1対1の関係性、チーム内の関係性、部署間の関係性、組織全体、さらには組織の外部との関係性まで、すべてが含まれます。
組織開発の有識者は、「組織開発は、何でもかんでも包んでしまう風呂敷のようなもの」と表現しているほどです。

※参考書籍 中原淳・中村和彦共著 『組織開発の探求―理論に学び、実践に活かすー』 ダイヤモンド社 2018年 (日本の人事部「HRアワード2019」書籍部門・最優秀賞受賞)

 

今日のセミナーは、人事担当者や社内キャリア支援関係者の方が多いので、組織開発について「キャリア開発」との関係性から考えていきたいと思います。

 

2キャリア開発と組織開発

(1) 従業員のキャリア開発を支援することが、組織の成長につながる

黒田

日本マンパワーでは、キャリア開発について、「個人の成長を支援することが、組織の成長も促す」ことを、自社の研究事例等をもとにお伝えしています。

*参考文献 日本マンパワー編 『企業内キャリアカウンセリング白書2012』

 

個人が、内省と行動変容を通じて成長することで、その影響が組織内に波及し、最終的には組織全体の成長につながるという相互作用が生まれるのです。

(2) 個人だけでなく、組織全体に及ぶキャリアコンサルティングの効果

黒田
以前、2012年に当社が企業数十社に対して行った調査では、キャリアコンサルティングの効果として、個人レベルの効果(自己創造)だけでなく、チームレベル(集団創造)や組織レベル(組織創造)の効果も確認されています。

集団創造 所属組織の中でのポジティブな場作り、多様な他者への理解、自発的提案等
組織創造 他部署の理解、他部署との交流、職場を超えたノウハウの共有化

 

具体的には、キャリアコンサルティングを受けた人は、「自分は、会社でこういうことに取り組んでいきたい」と、まず自分のアイデンティティが定まっていきます。

それだけでなく、所属チームの中で発言・提案する機会が増えたり、ひいては他部署との交流も増えたりと、会社での当事者意識が高まり、組織開発的な効果が生まれていることが確認できています。

 

(3) キャリア開発の場は、組織開発の場としても活用できる

黒田

「キャリア開発の場には、①自己対話、②同世代同士の対話、③管理職と一般社員の対話、④専門家との対話といった4つの場があります。

 

この4つの場の中に、参加者の皆さまが関わっている業務もあるかもしれません。それぞれの場を作ることは、キャリア開発だけでなく組織開発にもつながっていきます。
例えば、研修の題材で組織課題をとりあげ、話し合った結果を組織改善に活かすことができるでしょう。
それぞれの対話の場で、社員が自分のキャリアだけでなく、他者にも目を向け他者理解が進むことで、キャリアコンサルティングと同じように、多様な他者理解や組織創造につながっていきます。

 

組織開発において、組織変容は計画して起こすもので、「個人の成長を支援していたら、たまたま組織が良くなった」というのは、厳密には組織開発ではありません。しかし、日々のキャリア開発の業務に、組織開発も意識しながら関わることで、より組織貢献の度合を高めていくことはできると思います。

3社内キャリア支援関係者の方へ:個人に加え、システムを見る重要性

―続いて、社内でキャリア支援に関わっている方向けに、個人だけでなく、システムを総合的に捉える視点について紹介しました。

 

(1)システムを見る

黒田

「キャリアコンサルティングの理論に、システムズアプローチという考え方があります。個人は、好むと好まざるにかかわらず、常に組織や社会とつながっています。個人の課題に関わっていくと、必然的に、その周囲のシステムにも関わっていくことになります。

だから、企業内でキャリア支援に携わる方には、「システムを見る」という意識を持っていただくと良いと思います。

 

具体的には、目の前の相談者(クライエント)を見るだけでなく、その相談者が上司や同僚、他部署とどういう関係性なのか、視野を拡げていきます。

相談者が抱えている課題が、個人だけの問題ではなく、実は組織やチーム全体の問題と関係している可能性もあるからです。

(2)介入する

 

黒田
キャリアコンサルタントは、必要に応じて、クライエントの上司と面談を行なったり、関連する部門のメンバーに話を聞く、といった働きかけを行なう場合があります。この「介入(インターベンション)」は、まさに組織開発的な活動です。

 

実際、ある大手企業でミドル世代の面談を担当していたキャリアコンサルタントの方が、その面談を通じて感じ取った組織的な課題を経営陣に報告、提言することで組織の変革につながったという好事例があります。

このように、クライエントに接しつつ、組織をより広い視点から見て、課題の解決に向けて効果的な働きかけを考えることが、キャリアコンサルタントが組織開発に貢献できる重要なポイントです。

4管理職の方へ:部下のキャリア支援に取り組むメリット

黒田

今、「全社員の成長を実現したい」「自律型人材を育成したい」というニーズのもと、管理職に部下のキャリア支援を求める企業が増えています

しかし、管理職の中には、「業務が新しく追加されたけれど、そもそも業務が多いから、そこまで手がまわらないよ」とか、「忙しいから、面倒くさいな」という感情をお持ちの方も、少なくないと思います。

 

ただ、部下のキャリア支援は、管理職側にもたくさんのメリットがあります。また、目標管理の手法も応用できるので、ぜひ少し意識を向けてみていただきたいです。

 

(1)部下のキャリア支援に、目標管理の手法を応用する

黒田

業務の目標管理では、期間は半期か1年。キャリア支援の場合は、もう少し長く、3年から5年という中長期で成長目標を設定します。

しかし、現在地と目標の到達地点を確認し、その二つの間のギャップを課題として捉える、という基本構造は同じです。

また、部下の志向性がわかっていれば、成長目標と業務目標を重ね合わせることもできます。

(2)部下のキャリア支援がもたらす効果

黒田

上司が部下のキャリア支援を行うことで、以下のような効果が期待できます。

 

◎部下の成長がチームの成果につながる:部下が成長すれば、チームとしての成果も上がる。反対に、部下の成長がなければ、上司が肩代わりするか、労働時間を長くするか…というような選択肢になってしまう

 

◎部下の納得度の高いアサインメントができる:部下の興味や価値観、将来のキャリアについて話しておくことで、本人納得度の高い業務アサインができ、チームの成果もあがる。

 

◎人事評価やフィードバックを効果的に行える:本人が望む成長の方向性が理解できているので、それを使って本人の成長に向けた人事評価やフィードバックの場面で対話ができる

 

部下のキャリア支援を通じて、チームの業績をあげ、組織マネジメントの向上や組織開発につなげていくことができるのです。

5サーベイフィードバック ~サーベイの結果は「対話のタネ」~

―最後は、組織開発の代表的なアプローチの1つ、「サーベイフィードバック」をとりあげます。

(1) サーベイの結果は、「話のタネ」にしてみる

黒田

「今、従業員満足度やエンゲージメントなどを調べるため、従業員を対象に、サーベイを実施する企業が増えています。サーベイの結果を、管理職に伝えるところまでは実施している企業も多いでしょう。

ただ、結果を組織の各メンバーに共有し、結果に基づいて対話を行う「サーベイフィードバック」まで実施している企業は少ないのが現状です。

 

しかし、サーベイフィードバックこそ実行する価値がある、と声を大にしてお伝えしたいです。

コンサルの業務をしていると、「今年は、従業員満足度が0.3ポイント下がったんです」と、1%以下の差でも、落ち込む管理職の方によく出会います。

しかし、1%くらいは誤差の範囲内かもしれません。気を落とす必要は全くなく、「話のタネ」くらいに考えていただいてもいいかもしれません。

 

ぜひ、組織メンバー全員でサーベイ結果を見ながら、「今、自分たちのチームはどういう状態にあるのか」「将来どうなりたいのか」「そのために、どうアクションするか」をチーム全体で話し合っていただきたいのです。その全員で話し合うプロセスこそ、組織の変化、組織開発につながっていく有益なものだからです。

 

今お話ししているようなお話は、立教大学 中原淳教授の「サーベイ・フィードバック入門」でも取り上げられていますので、ご関心あればぜひご覧ください。

 

※参考書籍

中原淳 「サーベイ・フィードバック入門――『データと対話』で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」  2020年 PHP研究所

日本の人事部「HRアワード」2020 書籍部門優秀賞 受賞)

(2) 参加者質問「サーベイフィードバックで客観性を保つポイントは?」

参加者Aさん

管理職から組織メンバーにフィードバックする時、力関係が働いて正確性を欠くのではないかと気になりました。サーベイフィードバックで客観性を保つポイントはありますか?

黒田

サーベイ結果を見て対話する際、管理職の方に、オブザーバー・ファシリテーターとして関わっていただくのがポイントです。

上司が、「今回、ここの結果が悪かったのですが、どうしたらいいと思いますか?」と部下に一方的に質問したら、どうなるでしょうか?

きっと、部下の方は圧を感じて、上司に忖度した発言をしがちになるでしょう。

 だから、「メンバーみんなで、結果を見ませんか?この結果、私はこう思ったんだけど、みんなはどう思いましたか?みんなの考えを聞かせてください。」と、結果についてどう評価するのかというところも、可能な限り参加するメンバーの判断にゆだねてお話ししていくのがいいと思います。

黒田

サーベイの結果について、管理職の方も、ほかの組織のメンバーと同様に、あくまでも組織の一員として、一緒に眺めていくというのが重要でしょう。何か風景を見るかのように、ほかのメンバーと一緒に眺めている感覚が持てるかどうかが大切です。

―セミナーレポートに最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。

今回の内容、いかがでしたでしょうか?

「組織開発が、少し身近なものに思えてきた」という方がいらっしゃったら嬉しいです!

 

また、日本マンパワーでは、組織開発の知見を深めたいという方を対象に、「組織開発ファシリテーター養成講座」を開催しております。

ご興味のある方は、講座のページもぜひご覧ください!

講座詳細はこちら

この記事はいかがでしたか?
ボタンをクリックして、ぜひご感想をお聞かせください!

シェアはこちら
日本マンパワーHRフェス
キャリアコンサルタント養成講座
新入社員意識調査2024-新入社員のキャリアのこれから-
新人・若手社員のオンボーディング「寄ってたかって育成する」新卒就職人気ランキング上位企業・両備システムズの事例

RECOMMENDED