女性活躍の「なぜ進まない?」をひも解く~元女性執行役員のリアルな声と「8つの切り口」から考える~(後編)
イベント
2026.5.18
男女雇用機会均等法の施行から約40年、女性活躍推進法の施行から約10年が経過しました。女性管理職の数は確実に増えていますが、それでもなお「目に見えない壁」や「不自由さ」を感じている方は少なくありません。
そこで日本マンパワーでは、女性が仕事でもっと自由に力を発揮するための手がかりを探るべく、今回のセミナーを企画しました。
セミナー前半は、山野楽器で女性初の執行役員を務められた須永由美子さんをお迎えし、ご自身の実体験をもとに、女性活躍の現状と課題についてお話しいただきました。
セミナー後半は、日本マンパワーが整理した8つの切り口(女性活躍を進めるうえでのポイント)や、参加者との質疑応答の様子をご紹介します。
前編は下記からご覧いただけます。※別ページに遷移します。
登壇者プロフィール
1女性活躍の「なぜ進まない?」をひも解く~これまでのキャリアを振り返って~ 登壇:須永由美子さん
(1)「順風満帆」に見えるキャリアの実際
(2)均等法施行前夜の就職活動と、その後
(3)山野楽器で突き当たった壁と再挑戦
(4)逆境を力に変えた、5つのポイント
(5)望ましい4つのサポート
①公正な登用と評価の運用―「女性だけに踏み絵をさせない」仕組み
②キャリア機会の越境設計・ジョブローテーション― 専門家にとどまらせないキャリア設計
③ 心理的安全性と孤立防止― 「一人ぼっち」にしない仕組み
④逆境時のフォローアップ― 昇格よりも、むしろ「降格」のときこそ
(6)企業文化の「しなやかさ」とRAFGAモデル
(7)女性リーダーとしての変革の進め方
2日本マンパワーが提唱する「8つの切り口」
日本マンパワー臼井:須永さん、ありがとうございました。
執行役員として歩まれてきた実体験をもとに、逆境の乗り越え方から、組織に求めたいサポートまで、幅広い示唆をいただきました。
ここで、私ども日本マンパワーが整理した「女性活躍推進の8つの切り口」をご紹介します。
こちらは、コッターの組織変革モデルを参考に、女性活躍を進めるうえでのポイントや、つまずきやすい要因を整理したものです。

本日はその中でも、特に参加者の皆さまのご関心が高かった切り口1 と 切り口3 について、触れていきたいと思います。
(1) 【切り口1】健全な危機意識があるか(組織の持続可能性の視点)
日本マンパワー臼井:女性活躍推進が、経営の重要課題として位置づけられているかどうかによって、取り組みの推進力やスピード感は大きく変わります。
2つ目の切り口にも関わりますが、女性活躍推進は「女性のためだけ」の施策ではありません。
多様な声を拾い、それを事業や組織づくりに結びつけていくことは、企業の持続的な成長にも直結します。
一方で、経営層・管理職層にその必要性を理解してもらうことが難しい、というお声を、女性活躍推進のご担当者さまからよくうかがいます。
その際には、「女性活躍推進」が ダイバーシティ経営やサステナブル経営の入口となる重要なテーマである という点を、あらためて伝えていくことが有効ではないでしょうか。
(2) 【切り口3】新たなリーダー像が提示されているか
①いま求められる「アップデートされた管理職像」
日本マンパワー臼井:日本企業では、管理職を目指す女性の割合が決して高くありません。その背景の一つに、管理職に求められる長時間労働があります。
人口減少・労働力不足が進む現在、現場の様々なしわ寄せが管理職に集中し、管理職が長時間労働することでカバーしているケースも多々あるでしょう。しかし、それでは早晩、管理職も疲弊してしまいます。
個人のライフスタイルが多様化し、DXが進む現在において、この管理職のあり方は、果たして今の時代に合っているのでしょうか。
組織の未来を見据え、管理職像を時代に合わせてアップデートしていくことも、女性活躍推進において重要な施策の一つです。
たとえば、柔軟な働き方を実践しているリーダーや、自身の個性を活かしながら、多様なリーダーシップスタイルを発揮しているリーダーの存在は、大きなメッセージになります。
②新しいリーダー像を“実装”する:制度・意識・文化づくり
日本マンパワー臼井:組織の現状によっては、管理職自身の意識改革が求められる場面もあるかもしれません。
また、5つ目の切り口で触れているように、新しいリーダー像を実践できるよう、多様な働き方を支える制度や施策の整備も欠かせません。
さらに、女性活躍推進を進める際には、その成果を社内外に発信していくことも重要です。
成果が可視化されることで経営層の理解を得やすくなり、企業ブランディングや採用面での好影響にもつながります。
女性活躍推進は、一朝一夕で実現できるものではありません。
しかし、こうした取り組みを積み重ねていくことで、女性に限らず、多様なメンバーが個性を活かして活躍できる、新たな組織文化が少しずつ定着していくのではないでしょうか。
3参加者との質疑応答
セミナー中に参加者から須永氏に寄せられた質疑応答の一部を掲載します。
私も「女性だから」という視点で評価されることに違和感があります。
「女性だからではなく、能力で見る」という意識を、どうやったら広めていけるでしょうか。
一つは、数の問題だと思っています。
女性が一人だけだと「特殊な存在」として扱われ、「女性だから」という見方になりやすい。二人、三人と増えてくると、それぞれの能力も資質も違うことが見えてきて、個人として向き合ってもらえるようになります。
女性の管理職はまだ半分に達していませんから、現在は女性管理職を増やすために、企業がドライブをかけていく必要がある時期だと思っています。
もう一つは、組織のアンコンシャスバイアスをどれだけ取り除いていけるかということだと思います。
たとえば、避難所の運営など女性視点が欠かせないといった性差が必要な場面はもちろんあります。ただ、通常のビジネスの場面で女性管理職個人に「女性の代表」として意見を求めるのは正直に言うと間違った声掛けだということを理解してもらうように働きかけていかないといけないですね。その方は、女性の代表だから選ばれたのではなく、ビジネス上の能力や経験でその職位に選ばれているはず。
女性向けマーケティングが必要なら、個人に聞くのではなくプロジェクトとして女性顧客のニーズを測ればいい。理解が足りていない周りの方に、ことあるごとに性差ではなく個人の能力として見るという意識づけを広めていくことが大切ではないでしょうか。
今日のお話は、女性だけでなく、男性も含めた全員に関わる問題だと受け取っています。そのうえで、自分らしいキャリアを描くことはとても重要だと思う一方、それがなかなかできない人も多い。
「あんな先輩になりたい」というロールモデルの存在が重要だと思いますが、特に女性の場合、自分のキャリアの参考になる人が身近にいないというケースもあると思います。そうした時はどうすればよいでしょうか。
会社としては、まず一人目を作る努力をしてほしいと思います。
女性の管理職としてのあり方は一律ではないはず。もしかしたら会社が考える理想系のお一人目ではないかもしれませんが、まずは一人目が現れると、二人、三人といろいろなロールモデルになる方々が続いていくものです。
大谷翔平のような存在への憧れでなくていいんです。「あんな人でも管理職になれるんだ」という、親しみを感じられるモデルでも十分です。
「こういう生き方もあるんだな」と思えるさまざまな女性管理職の生き方パターンが増えていくことが、多くの女性が安心して上を目指せる一番の原動力になるのではないでしょうか。
個人としては、身近にいなければ社外に目を向けてもいいのではと思います。
社外の研修、業界の勉強会、大学院や地域のコミュニティなど、幅広く目を向けると、さまざまなところにロールモデルになる人はいます。幅広い中から、ご自分の生き方のヒントを見つけられるようになれればよいですね。
4終わりに
日本マンパワー臼井:須永さんの実体験を通じたお話、そして皆さんとの対話から、「管理職になりたがらない女性を問題視するのではなく、なりたいと思えない障壁を一つひとつ取り除いていく」こと、「個人のやりたいことが実現できる環境を整えていく」ことが、女性活躍推進の本質にあるのではないかと改めて感じました。
本日ご参加いただいた皆さまの会社の女性活躍推進の何かヒントになりましたら幸いです。ありがとうございました。
女性活躍の「なぜ進まない?」をひも解く~元女性執行役員のリアルな声と「8つの切り口」から考える~(前編)
こちらエン・モア合同会社代表。編集者/ライター。ビジネス誌のインタビューを中心に幅広いテーマの記事を執筆。
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