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現業系社員を含む全社員の「持続可能なキャリア」のための処方箋【関西ここからキャリア2026  vol.1】

現業系社員を含む全社員の「持続可能なキャリア」のための処方箋【関西ここからキャリア2026 vol.1】

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2026.9.25

今、キャリア支援を、現業系社員を含む「全社員」へ広げようとする企業が増えています。一方で、制度や研修を用意しても現場に届かない、管理職が十分に動けない、相談窓口が活用されないといった課題に直面するケースも少なくありません。
では、全社員へのキャリア支援を本当に機能させるには、何から見直し、どのように設計・運用していけばよいのでしょうか。

 

日本マンパワー関西支社では、関西エリアの企業の人事担当者を対象に、参加型セミナー「関西ここからキャリア2026」を開催しました。

 

2026年5月26日に行われた第1回では、「現業系社員を含む全社員のキャリア支援の設計と運用」をテーマに、情報提供と参加者同士の対話が行われました。本記事では、セミナーで共有された論点と、全社員へのキャリア支援を進めるためのヒントを再構成して紹介します。

 

●登壇者 株式会社日本マンパワー 秋本暢哉

*マネジメントコンサルタント。延べ1000社以上のキャリア開発支援に従事

●執筆:石澤寧(エン・モア合同会社) 編集:緒方雪絵(株式会社日本マンパワー)

1キャリア支援を「全社員」へ広げるとき、何が起きるか

(1) なぜ今、全社員へのキャリア支援が拡大しているのか

秋本:AIに代替されにくい職種として、現在注目が高まりつつあるブルーワーカー。
日本語では「現業職」とも呼ばれます。製造業、流通業、運輸業、インフラ系企業、サービス業など、生産作業や販売、サービス、工事等に従事する職種の総称です。

現在、転職市場が活発化し、よりよい待遇を求めて転職する人も増えてきました。

 

私が施策のサポートをさせていただいている企業様の中には、離職率上昇への対策として、現業職を含めた全社員へのキャリア支援に踏み切った運輸系の企業様があります。また、ジョブ型雇用により総合職と現業系の垣根がなくなった企業様で、元現業系社員のキャリア支援を強化されているメーカー様などもあります。

 

このように、現業を含む全社員へのキャリア支援は拡大傾向にありますが、周囲から「自分のキャリアを自分で考えていこう(キャリア自律)」と言われて、「どうすればいいか分からない」と戸惑う社員も少なくありません。
特に、単線型のキャリアを歩んできた現業系社員において戸惑いが大きい、といった声も聞かれます。

(2) 全社員に広げようとしたとき、立ちはだかる「3つの壁」

秋本:全社員にキャリア支援を広げようとするとき、多くの企業がぶつかる「3つの壁」があります。

 

壁① 施策の空転――「やっている」のに、社員に届いていない
キャリア研修や面談を用意しても、社員には「また同じ研修か」「自分には関係ない」と受け止められることがあります。原因としては、施策がホワイトカラー・総合職を前提に設計され、一般職・現業系に届きにくい内容になっていることが多いからです。
また、意欲ある社員(全体の1割~2割程度)に向けた施策が用意されておらず、せっかくの前向きな層のモチベーションが低下してしまうケースも見られます。

 

壁② 管理職の機能不全――最重要キーパーソンが動いていない
キャリア支援の成否は、職場の上司が部下のキャリアをどう扱うかに大きく左右されます。しかし管理職の中には、「何を話せばよいかわからない」「時間がない」という人も少なくありません。

 

特に現業系の管理職は、「そもそも部下とキャリアについて話す習慣がない」「部下の数が多く、面談時間の確保が容易ではない」といったケースが散見されます。
さらに「転職したいと言われたら困る」「寝た子を起こしたくない」と考え、人事施策に消極的になるケースもあります。

 

壁③ 仕組みの形骸化――制度はある。でも「来ない・変わらない・続かない」
相談窓口や研修を用意しても利用されず、職場に変化が生まれないケースがあります。多くの場合、施策が「会社がやりたいこと」から始まり、社員の困りごとや問いに寄り添えていないことが原因です。

社員にとって「自分の困りごとを解決してくれる場」と感じられなければ、施策は義務的にこなすものになってしまいます。

 

全社員のキャリア支援に立ちはだかる3つの壁

(3) 現業系社員を加えると、壁はさらに高くなる

3つの壁は、ホワイトカラー・総合職の支援でも当てはまりますが、現業系社員を対象に加えると、壁はさらに高くなります。

物理的な面では、シフト勤務や夜勤で時間的に相談が難しかったり、その社員が勤務する職場に窓口が置かれていなかったりする場合もあります。また心理的な面でも、キャリア研修に馴染みがないことから「弱みを見せたくない」「情報が周囲に漏れるのではないか」と警戒・懸念されるケースも少なくありません。

 

こうした現業系社員の方の環境や事情をよく理解した上で、それに合わせたより丁寧な設計と実施が求められます。

2自社の現在地を知る――タイプ診断

――セミナーでは、先ほど挙がった3つの壁に関連し、参加者が自社の現状を把握するための「全社員のキャリア支援 自社現在地タイプ診断」を実施しました。

 

質問に回答すると、「社員のキャリア自律度」と「企業のキャリア支援の本気度」が数値化され、自社の現在地がプロットされるものです。プロットされた位置により、キャリア支援の状況が、以下の5つのタイプのどれに当てはまるかが診断できます。

 

● タイプA 自律共創型:会社も社員も本気で、好循環が生まれている
● タイプB 施策先行型:会社は動いているが、社員にまだ届いていない
● タイプC 自律社員未対応型:意欲ある社員はいるのに、会社の対応が追いついていない
● タイプD 試行錯誤型:動いているのに、なぜか変わらない
● タイプE これから着手型:まだほとんど手がついていない

 

全社員のキャリア支援3つの壁と自社タイプ診断

 

秋本:今回、参加者の皆様の中で最も多かったのは、タイプDの試行錯誤型でした。

このタイプDは、3つの壁のどれかまたは複数にぶつかっている可能性が高いです。

解決策としては、まずはどの壁にぶつかっているのかを把握すること、続いて、どの壁を乗り越えるか絞り込み、キャリア支援施策をリデザインしていくことが重要になります。

 

――「全社員のキャリア支援 自社現在地タイプ診断」にご興味のある方は、下記よりお問い合わせください

https://hr.nipponmanpower.co.jp/inquiry/contact_cpform

33つの壁を超えるコンセプト「サスティナブル・キャリア」

――続いて、キャリア支援の「3つの壁」を乗り越えるための考え方として紹介されたのが、「サスティナブル・キャリア(持続可能なキャリア)」です。

 

長期化する職業人生の中で、サスティナブル・キャリアの考え方が、今、最新キャリア理論として注目されていること、また、サスティナブル・キャリアの指標の1つである「健康」が、現業系社員の興味を喚起しやすいテーマであることなどが、秋本から語られました。

(1) キャリア理論は「第4世代」へ

秋本:キャリア理論のこれまでを振り返ると、第1世代(個人の特性と職業のマッチング重視)、第2世代(キャリアは段階的に発達するという発達論)、第3世代(プロティアンキャリア・バウンダリーレスキャリアなど、自分でキャリアを構成・成長させる考え方)と変遷を経てきました。

サスティナブル・キャリアはこの次の第4世代のキャリア理論に位置づけられます。

 

第1〜3世代に共通するのは「個人の上昇・成長」を前提としていることです。しかし人生100年時代、長期化する職業人生においてずっと上昇・成長し続けることは現実的ではありません。そこで生まれたのがヨーロッパ発の考え方で、第4世代の理論である「サスティナブル・キャリア」です。

(2) 3つの指標――幸福・健康・組織貢献

秋本:サスティナブル・キャリアは、「幸福・健康・組織貢献」の3指標がバランスよく実現されているかどうかで、社員のキャリアの持続可能性を捉えます。

 

指標 内容・定義
幸福(Well-being) 仕事を通じてやりがい・意味・良好な人間関係を感じ続けられること
健康(Health) 心身ともに無理なく長く働き続けられること
組織貢献(Productivity) 自分の仕事が組織に役立っているという実感を持てること

 

サスティナブル・キャリアの3指標幸福・健康・組織貢献

 

 

私がさまざまな企業で現業系社員向けのキャリア研修を担当して感じるのは、「健康」というキーワードが、現業系の方にとって非常にリアルに響く、ということです。現業に携わる方は、「体を壊したらこの仕事が続けられない」と、健康に対する意識が非常に高いからです。

また「組織貢献」の指標については、エンドユーザーと接する機会の少ない現場では、自分の仕事が誰かの役に立っているという実感が得にくいため、それを「見える化」するための仕掛けが必要だと感じています。

(3) なぜ会社と社員の「Win-Win」になるのか

秋本:サスティナブル・キャリアの優れた点は、社員個人の幸福・健康だけでなく、「組織貢献」という軸を含めることで、会社と社員が同時にハッピーになれる構造を持っている点です。

 

【会社にとって】
● 幸福の充実:エンゲージメント向上・職場の雰囲気改善
● 健康の維持:離職防止・休職・労働災害の予防
● 組織貢献の実感:生産性維持・業績への貢献

 

【社員にとって】
● 幸福:意味・やりがいを感じながら働き続けられる
● 健康:無理なく、体を壊さずに長く働ける
● 組織貢献:「自分は役に立っている」という手応えを持てる

 

なお、従来のキャリア支援では「5年後・10年後にどうなりたいか」という未来起点(バックキャスト)の問いが中心でした。

 

しかし現業系社員を含む層には、「心身が良い状態で今の仕事を続けるために何が必要で、どう行動するのか?」という現在起点(フォアキャスト)の問いの方がはるかに響きます。

「日々の仕事の中で、どのような役に立っている実感があるか」

「チームの状態を良くするために、どんな工夫をしているか」

――こうした日常の業務に根ざした問いこそが、キャリア支援を「自分ごと」にするカギとなります。

4施策推進のポイント

――セミナー終盤では、全社員へのキャリア支援を推進するにあたってのポイントが秋本から語られました。ポイント3点をダイジェストで紹介します。

 

ポイント① 経営層への説明・合意形成

 

●サスティナブル・キャリアの3指標は、人事施策のKPIと連動させて説明すると、経営層からの納得感を得やすくなる
従業員の「幸福」 ➡ エンゲージメント向上
従業員の「健康」 ➡ 離職・休職率の低下
従業員の「組織貢献」 ➡ 生産性・業績への貢献

 

● 「キャリア支援」ではなく「離職を防いで生産性・業績アップのための投資」と位置づけると、経営層から理解が得られやすい

 

ポイント② どの層から始めて、どう広げるか

 

経営層との合意後は、「今、最も急ぎの課題はどこか」を基準に着手層を決める。
総合職・管理職で成功事例をつくってから一般職・現業系へ広げる方法と、離職やエンゲージメントが急務の現業系から試験的に始める方法がある。

 

ポイント③ 「やった」ではなく「変わった」で評価する

施策の実施回数や参加人数だけでなく、「何が変わったか」を見る「アウトカム評価」への転換も重要。
指標の例:エンゲージメントスコア、面談満足度、相談窓口の来談率、離職率・定着率の変化など

5参加者の声

(1) グループ内の対話から出た声・悩み

参加者からは、現業系社員へのキャリア支援を進めるうえで、次のような課題や悩みが多く寄せられました。

 

● 現業系社員へのキャリア支援に予算・コストを投じるにあたり、どのように経営層の理解を得るか
● 若手社員の主体的なキャリア意識に対し、管理職側がキャリア対話の仕方を十分に理解できていない
● 本社と工場・現場系との間にある意識ギャップが大きい

(2) セミナー後の反響と最初の一歩

セミナー後には、「自社のキャリア支援が行き詰まっている要因に気づき、優先事項を整理できた」という声も寄せられました。一方で、「まだ着手できていない。最初の一歩として何から始めればよいか」という問いもありました。

 

これに対し秋本から、まず、管理職から部下へ「日常的な声掛け」を始めることを提案しました。大きな制度づくりから入るのではなく、コストをあまりかけずにできる施策から始め、小さな成功体験を積み上げていくことも、全社員へのキャリア支援を前に進める重要な第一歩になるとアドバイスしました。

6日本マンパワー関西支社 峰元より

第1回「関西ここからキャリア2026」では、「現業系社員を含む全社員のキャリア支援の設計と運用」をテーマに参加された皆様と議論を深めることができました。ご参加いただいた皆様には改めて感謝申し上げます。

 

私自身、参加された皆様のご様子を見ていて印象的だったのは、「現業系社員へのキャリア支援の必要性は感じているものの、どのように着手すべきか悩んでいる」「経営層や管理職の理解をどう広げるべきか」といった率直な悩みが数多くあったことです。各社で置かれている状況は異なるものの、同じような課題に悩まれていることを改めて感じました。

 

今回ご紹介した「サスティナブル・キャリア」の考え方は、これからのキャリア支援を考える上で大きなヒントになると感じています。
少しでも今回のセミナーが参加された皆様に対して、今後の参考になっていれば大変嬉しく思います。

本セミナーで気になる点がございましたら、弊社営業担当もしくはHPよりお問い合わせください。

 

https://hr.nipponmanpower.co.jp/inquiry/contact_cpform

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