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キャリこれ

(前編)「時間と場所から解き放たれた働き方」が、地域に密着した共創を生み出す

連載記事

2024.9.2


いよいよ「正解のない時代」に突入したいま。企業も自治体も大学も、セクターを超えて共創する意味がますます高まっています。また、コロナ禍によってリモートワーク化が急速に進み、都市で働く意味やオフィスを構える意味が減少、多くの人が地方・地域に移り住んだり、2拠点生活にシフトしたりしました。今だからこそ「地域」というメガネを通じて、これからの働き方やキャリアを多角的な視点で考え、未来をつくるヒントを得られるのではないか。このような趣旨でスタートした連載「地域とキャリア」。
第4回は、「時間と場所にとらわれない働き方」を推進しているNTT東日本の事例をご紹介します。インタビューをさせていただいたのは総務人事部の加藤卓さんと横川和弘さん、そして制度導入と共に北海道に拠点を移し働いている伊藤誠悟さん。制度を設計し運用する側、制度を活用する側、それぞれの立場からお話しくださいました。
■インタビュアー・執筆 酒井章(キャリアのこれから研究所プロデューサー)

1.ゲストのプロフィール
Q1: まず、皆さんのキャリアや現在のお仕事についてお話しいただけますか?
加藤様(以下敬称略):私は、最初の配属先は秋田支店のビジネスイノベーション部という法人営業の部隊でしたが、その後、本社の総務人事部に異動し、同ラインの育成や業務効率化などの仕事に従事しました。
そして、2023年夏に発足したEXデザインPT(※)という部署で全社のエンゲージメント向上や新しい働き方を企画するチームに所属しています。
※Employee Experience Design Project Team
横川様(以下敬称略):私も、初期配属はビジネスイノベーション部で、農業系のお客様向けの法人営業を担当した後、東京オリンピック・パラリンピック推進室でさまざまなリソースを大会に向けて管理する部署にいました。
その後、総務人事部のサステナビリティ推進室で働き方改革担当としてリモートワークの推進、時間外の抑制削減やエンゲージメント向上に携わり、2023年からEXデザインPTに異動になりました。
現在は、引き続き働き方改革を通じたエンゲージメント向上に従事しています。
伊藤様(以下敬称略):私はこれまで、中小企業のお客様を中心に営業や営業企画といった業務を中心に担当してきました。
先月まで、NTT東日本のサービスを販売していただくパートナー様の支援や販売施策を一緒に検討する仕事をしていましたが、2024年7月から北海道の自治体様を中心に地域活性化やまちづくりに携わる部署に異動しました。

2.目指すは、地域の未来を支える「SOCIAL INNOVATIONパートナー」
Q2: 御社はパーパスとして「地域循環型社会の共創」を掲げていますが、こちらの策定に至った背景や経緯はどのようなものでしたか?
加藤:わが社はこれまで、地域に密着した地域通信事業会社だったのですが、これからの在り方として通信事業を超えた「循環型の地域社会を共創する会社」として定義すると共に、事業の転換を踏まえて地域の未来を支える「SOCIAL INNOVATIONパートナー」というビジョンを掲げました。
この「SOCIAL INNOVATIONパートナー」とは、これまでの通信を基軸とした事業領域から、農業、漁業、文化や芸術、スマートインフラやまちづくりといった様々な持ち芸を増やしながら領域を広げていくことへのチャレンジを意味しています。
この方向性のもと、共感型のDXコンサルティング力やフィールド実践型のエンジニアリング力といった当社の強みを活用して、さまざまなインパクトを与えることができる成果を生んでいきたいと考えています。
Q3: 御社に求められる役割はどのようなものでしょうか?
加藤:これまで光回線や電話サービス等の事業、地域の課題解決に向けた農業、芸術、eスポーツ等の新会社を立ち上げるなど、通信の強みを活用したソリューションの提供に力を入れてきました。今後は、課題解決にとどまらず、地域の価値創造、持続可能な仕組みを作るソーシャルイノベーション型の取り組みが求められており、ここにNTT東日本の役割があると考えております。
Q4: パーパスで「共創」を謳われていますが、今までとは違うようなパートナーやプレーヤーとの共創が増えたり拡大されたりしているということですか?
加藤:おっしゃる通り、人材不足、事業承継、BCP対策等の課題を乗り越えるために、様々なパートナーやプレーヤーが持つ強みとNTT東日本の強みを組み合わせることで地域の新たな価値創造ができると考えております。
Q5:御社のソリューションを体感できる施設「NTT e-City Labo」も設立されましたね?
加藤:はい。NTT東日本グループが地域課題の解決に向けて取り組むソリューションを一堂に集め、地域創成の主体となる自治体や様々な分野の事業者の皆様にご体感いただける施設として、調布市のNTT中央研修センタ内に2022年5月に開設しました。全国から多くのお客様に日々ご来場いただいており、ありがたいことに、これまでに1,500団体・15,000名を超えるお客様がお越しになりました。
地域社会を支える自治体や事業者の皆様を本施設へお迎えすることで、皆様との関係性強化を通じた共創機会の創出、ソリューションの社会実装に繋げ、「地域循環型社会の実現」へ貢献していきたいと考えております。
Q6:伊藤さんは、会社が新たに掲げたパーパスやビジョンに対して、現場としてどのように感じましたか?
伊藤:新しい分野への挑戦をどんどんしていかなければいけないんだな、ということを感じました。私もお客様と接する中で「NTTと言えば電話やインターネット」だとご理解いただいている一方、他のサービスについてはあまり知られてない場合が多いです。そのような中で、よりしっかりと「地域のために働く」という軸を立ててお客様にサービスを提供するという考えは非常にわかりやすいと感じました。
Q7:地域活性化やまちづくりに取り組まれていると伺いましたが、現場の仕事の実感として自治体との関係作りも変わってきていますか?
伊藤:そうですね。それぞれの地域や自治体様の課題に合わせた提案コンサルティングへと広げたり深めたりすることで、NTT、自治体様そして住民の皆さんの「三方よし」で日本全体を盛り上げていくような会社になっていくのではないかと思っています。

3.社員の多様性尊重が、会社の価値向上にもつながっていく
Q8: この方針に基づいて掲げられた「多様性を尊重する社会の実現」については、どのような取り組みをされていますか?
加藤:2008年にダイバーシティ推進室を発足させ、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んできました。年齢や性別、人種、国籍、宗教、障がいの有無、性的指向や性自認にかかわらず、社員一人ひとりがチームに対して自らの貢献度を高め、それが全体の成果、品質、新たな価値創造につながっていくとの共通の想いで、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
Q9: 人的資本経営も謳っていらっしゃいますね
加藤:人的資本の取り組みについては、NTT東日本グループは、多様性に富んだ社員一人ひとりが、主体的に自身のキャリアを考え専門性を高め、挑戦し続けることによって働きがいを実感しながら「個」を成長させることや社員自身がワクワク感をもって働くことが、お客様への新たな価値提供、ひいては企業価値の向上や会社の持続的な成長・発展につながると考えており、人事給与制度の見直しや専門性・スキルを磨く機会の提供等の環境整備を進めています。具体的には以下の三つの取り組みを行っています。
1つ目は「人事制度の変革」です。管理職向けにジョブ型を導入すると共に、一般社員には専門性を軸とした人事給与制度に見直しました。
2つ目は「ワークインライフの実現」です。後ほどご説明する「時間と場所にとらわれない働き方」を推進しています。
3つ目が「自律的なキャリア形成、成長支援」です。社内ダブルワーク・社外チャレンジワーク(社外副業)の推進や次世代リーダー・デジタル人材育成等に取り組んでいます。
Q10:人的資本経営の考え方は社内で浸透してきていますか?
加藤:自律的キャリア形成や成長支援については、社内ダブルワーク・社外チャレンジワーク(社外副業)の活用に加えて、公募型研修や公募による人事異動等、幅広い取り組みを通じてキャリア形成を支援しており、実績も積み重ねながら浸透が進んでいることから、人的資本へのリソースを惜しまない会社だという認識は広がってきていると思います。

4.社員の自律的なキャリア形成・成長を支援する
Q11:「自律的なキャリア形成・成長支援」については、どのような取り組みをされていますか?
加藤:その一例が、社内ダブルワークの開始や社外チャレンジワーク(社外副業)の推進です。社内ダブルワークは2022年10月に開始し、所定労働時間の最大20%かつ原則6ヵ月間、グループ内の業務に研修として従事できるようにしました。
2023年には社外副業プラットフォームを開設し、自治体や地元企業と連携しながら、社員の成長や地域活性化に繋がる副業を推進しています。
このような取り組みを通じて様々な業務や分野に携わることで、新しい視点やスキルを身に付け、それを本業に還元することや、社員のキャリア実現につなげていくことを目指しています。

*写真はイメージです
Q12:ダブルワークや副業を導入されているのは素晴らしいですね。実際のところ浸透していますか?
加藤:社内ダブルワークは800名以上、社外チャレンジワークは300名以上の社員が実施しており、浸透が進んできています。今後も更なる浸透に向けて社員の志向に沿ったポストの拡充や実施者の声を展開する等に取り組んでいきます。
Q13:社外副業で面白い実例はありますか?
加藤:ある社員は、”サウナライター”として活動しており、サウナ施設の紹介記事や、イベントレポートを執筆しています。
ある本との出会いがきっかけでライターへの興味が湧き、当時から好きだったサウナ施設の取材をしたいと思ったそうです。サウナに関する書籍を出したり、ラジオ番組に出演したりと活動の幅を広げています。他にも、中小企業支援に取り組んでいる方がいるなど、様々な副業に取り組んでいる社員がいます。
Q14:社外副業に期待されていることは何ですか?
加藤:まずは、社員のスキル磨き上げや新たな視点の獲得、人脈形成など、個の成長に繋がることを期待しています。一方で、副業で得たスキルや人脈をこれまでの経験と組み合わせることで、新規事業や既存事業の活性化など、イノベーションの創出に繋がることも期待しています。
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