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【2026年最新】APCDAカンファレンスとは?マレーシア開催の背景とキャリア開発の潮流(2)

【2026年最新】APCDAカンファレンスとは?マレーシア開催の背景とキャリア開発の潮流(2)

連載記事

2026.7.22

アジア太平洋地域のキャリア開発をテーマとした国際会議、Asia Pacific Career Development Association(APCDA)主催の「APCDAカンファレンス2026」。

基調講演やパネルディスカッションの一部を、実際に参加した日本マンパワーの五十嵐からご紹介します。

 

■本記事でわかること
●APCDA2026で議論された「インクルージョン(包摂)」の最新論点
●キャリア支援者に求められる役割の変化(個人支援→仕組みづくり)
●日本の実践(JCDAツール等)が国際場面でどう受け止められたか 等

 

■前回の連載(1)は こちら

株式会社日本マンパワー 五十嵐 賢

株式会社日本マンパワー キャリアドック事業本部CS推進部部長
CDA、国家資格キャリアコンサルタント、認定心理士、GCS認定コーチ

1APCDA(Asia Pacific Career Development Association)について

 

まず、APCDAについてご紹介します。
Asia Pacific Career Development Association は、アジア太平洋地域におけるキャリア開発・キャリア支援の発展を目的とした国際組織です。2012年に設立され、キャリアコンサルタント、大学研究者、人事担当者、教育関係者、政策関係者など、多様な専門家が参加しています。

 

APCDAでは、主に以下のような活動を行っています。
国際カンファレンスの年次開催、キャリア開発に関する研究・情報共有、国際的なネットワーク形成、キャリア支援に関する研修・ウェビナー、キャリア政策や包摂的就労への提言などです。
特に、欧米ではなく、アジア太平洋地域特有の文化や社会背景を踏まえたキャリア支援の議論を重視している点が特徴です。

 

アジア太平洋地域を中心に活動しており、日本、マレーシア、中国、韓国、台湾、シンガポール、インド、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダなど、環太平洋の国々をはじめ、アジアから中東まで多数の国・地域の方が参画をしています。会員数は公開されていませんが、2026年大会は、36か国から、オンラインを含めて450名超の参加があったそうです。

 

今回、私が参加した理由は3つあります。

1つ目が、大会がクアラルンプールで行われ、ここ数年のインドや中国、カザフスタンなどと比べるとアクセスしやすかったこと。

2つ目が、以前アメリカで行われたNCDA大会に参加した折、欧米中心のキャリア支援と日本の状況にギャップを感じ、アジアでの状況を知りたかったこと。

3つ目が、大学時代の友人がクアラルンプールに在住していることでした。今回は、一個人として参加してきました。

2多様性を実現するためには―基調講演等のご紹介

今回の講演で共通していたのは、「キャリアは個人の努力だけで決まるものではなく、社会や制度、文化との関わりの中で形づくられるものだ」という考え方です。
前回の記事で、2026年大会のテーマ「Inclusive Career Development in Global Transition(グローバルな変革期における包括的なキャリア開発)」についてご紹介しました。

テーマの通り、「インクルージョン(包摂)」は、特定の人々に行う特別な配慮や追加的な対応ではなく、すべての人が安心して働き、学び、生きていくための土台であることが、それぞれの講演で繰り返し語られていました。

キャリア支援専門職だけでなく、教育機関、雇用主、政策に関わる人々が、それぞれの立場を越えて協力することの重要性も強調されていました。また、当事者の経験に学び、制度や慣習を見直しながら行動していく姿勢が、未来のキャリア社会をつくる鍵であるという点が、全体を通じた共通のメッセージだったように思います。

 

また、大会では、世界中にたくさんのキャリア支援者がいること、そして目の前のクライエントを通して世の中を良くしていこうとする強いエネルギーを感じました。参加したワークでは、つたない英語であっても「分かるよ」と肩をそっとたたいてくれるような参加者ばかりでした。
温かく包容力があり、参加者自身が「インクルージョン(包摂)」を体現しているように感じました。

講演の中から、代表的な基調講演、印象に残った講演をいくつかご紹介します。

(1) パネルディスカッション:International Collaboration Workgroup Panel

現地開催の前に、バーチャルカンファレンスでパネルディスカッションが行われました。こちらには、日本から、日本キャリア開発協会の佐々木好会長がパネリストとして登壇していました。

 

本パネルでは、国や地域によってインクルージョンの考え方や実践方法が異なることが紹介されました。北米では権利や公平性が重視され、アジアでは社会との調和や経済参加が重視されるなど、違いがある一方、目指す方向は共通していることが示されていました。

異なる視点を学び合う国際的な協働の大切さが確認できたように思います。

(2) Keynote:Shaping an Inclusive and Sustainable Career Ecosystem(持続可能で包摂的なキャリアエコシステムの構築)

初日の基調講演には、William E. Donald博士が登壇しました。

William E. Donald博士は、若年層のキャリア形成や大学から就業への移行を専門とする研究者で、AI時代のエンプロイアビリティやキャリア適応力をテーマに、国際的に研究・講演活動を行っています。

 

講演では、ご自身の自閉症やADHDなどの経験を踏まえて、社会全体として持続可能な「キャリアエコシステム」の視点を提示されました。これは、従来の「個人が頑張って適応する」ことを中心とした従来型のキャリア支援ではなく、組織や政府、制度や環境などを含めて包括的に支援していく考え方になります。

 

一方でキャリア支援者は相談に応じるだけでなく、より良い仕組みをつくる役割も担っていることが強調されました。講演の中では、天気を使ったメタファーのワークの事例や、Employability Capital Growth Model(雇用可能性資本成長モデル)での支援事例などが具体的に提示されました。

(3) Keynote:From Barriers to Breakthroughs(壁を越え、新たな可能性へ)

2日目の基調講演では、Ahmad Shamsuri Muhamad博士が登壇しました。

Ahmad Shamsuri Muhamad博士は、マレーシアのUniversiti Malayaに所属する研究者です。包摂的社会やウェルビーイング、多文化社会における人間発達を専門とし、社会参加と共生を重視した研究・教育活動を行っています。

視覚障害のある博士が、ITを駆使しながらおひとりで力強く講演される姿は、非常に印象的でした。

 

博士は、ご自身の経験から、最大の障壁は設備不足ではなく、人々の思い込みや期待の低さであると語られていました。現在、テクノロジーの進化によって健常者と障がいをもつ人の差は少なくなっています。困難を個人の問題として片づけるのではなく、組織や制度がしなやかに変わる必要があること、そして、障壁は健常者にとっても新しい工夫や改善につながる可能性に満ちたものであると語られていました。

 

(4) Keynote:Bridging the Diversity Disconnect in Career Development(キャリア開発における多様性のギャップをどう埋めるか)

最後に取り上げるのはRoberta Borgen博士の講演です。

Roberta Borgen博士は、キャリア開発・キャリアカウンセリング分野の研究者です。女性のキャリア形成や社会的公正、多様性と包摂性をテーマに、国際的な研究・教育活動を行っています。

 

博士の講演内容は衝撃的でした。クライエント支援に関する内容とともに、ヤングケアラーとして母親を介護されたこと、兄弟の自死という痛ましい経験などが語られました。

また、善意があっても生まれてしまう多様性の断絶についても触れられていました。表面的に平等に扱うのではなく、人それぞれが直面している現実に目を向けることの重要性、そして支援者として専門的な教育が必要であることを示されていました。

自分が知らないことを認め、知らないことを知り、学び続ける姿勢こそが真のインクルージョンにつながる―そう述べられた博士の言葉に、大きな感銘を受けました。

3日本のキャリアコンサルタント、CDAが登壇したセミナー

同じアジアということもあり、所属する組織の「キャリア支援室の取り組み」、AIを活用した事例など、日本からもたくさんの発表がありました。アメリカで開催されるNCDAより発表数は多かったように思います。

日本のキャリアコンサルタントやCDA(の方によるセミナーの一部を紹介します。

 

※Career Development Adviser(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)は、特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会(JCDA)が認定するキャリアカウンセラーの資格です。

 

(1) 英語版「人生すごろく金の糸」体験セミナー

■Golden Thread Sugoroku: A Japanese Narrative Career Game for Self-Reflection and Dialogue

 

本セミナーでは、日本のCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の方が、日本キャリア開発協会(JCDA)のツール「人生すごろく金の糸(英語版)」を紹介し、体験ワークも行いました。約30名の方が参加され、会場は賑やかでした。

 

私もセミナー進行を一部お手伝いしました。「金の糸」のワークは少人数のグループに分かれ、提示されたテーマ(例:「●歳の夏の思い出」)について語り合い、互いに問いかけ合います。

今回、英語を母語としない参加者も多かったのですが、終始、活発にやりとりが進み、対話が弾んでいました。
セミナーの最後には、ある参加者が立ち上がって「このようにすぐに話せるツールは素晴らしい」とコメント。会場全体に拍手が沸き起こる場面もありました。

 

私自身も深く心を動かされる時間となり、「ツールを介することで、国籍や言語の違いを超えて対話を生み出すことができるのだ」と、改めて実感しました。

(2) その他の発表

■Concept Overview and Practice-Based Case Example of “Experience Assimilation & Realization”

 

本セミナーでは、日本のCDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)有志により、「経験代謝」のメカニズムについて紹介が行われました。

※経験代謝(けいけんたいしゃ)とは、NPO法人日本キャリア開発協会(JCDA)が提唱するキャリアカウンセリングにおける中心的な概念です。単なる問題解決ではなく、過去の経験を深く振り返る(語り直す)ことで「ありたい自分」や「自分の価値観(自己概念)」に気づき、主体的な成長を促すプロセスを指します。

詳細はこちら https://www.j-cda.jp/your-own-career/learn-deeply.php

 

JCDAではまだ「経験代謝」の英訳版を出版していないため、当日の発表は、登壇者による私訳をもとに進められました。インドやシンガポールなど海外の参加者から質問が相次ぎ、書籍の英訳を望む声もあがるなど、「経験代謝」という概念への関心の高さがうかがわれました。

 

■Inclusive Career Development in Transition: Women’s Struggles and Empowerment in Japan

 

本セミナーでは、日本のキャリアコンサルタント2名が登壇し、男女共同参画センターにおける支援の事例を紹介していました。男性からのDV(ドメスティック・バイオレンス)や、仕事と生活の両立支援に悩むケースを題材に、参加者と活発な意見交換を行っていました。

4最後に

本大会は、キャリア開発を「仕事探しの支援」にとどめず、「誰もが尊厳をもって生きるための社会づくり」へと視野を広げて捉え直す機会となりました。インクルージョンは理念として掲げるだけではなく、日々の実践と行動によって育まれていくものです。そして、一人ひとりの小さな変化の積み重ねが、より公平で持続可能なキャリア社会へとつながっていくのだと改めて感じました。

 

キャリア支援者には、国や分野を越えた学びと協働を通じて、「誰一人取り残さない」キャリアの未来を支えていくことが期待されます。

 

最後に、クロージングムービーがとても印象的だったため、こちらで共有します。

 

 

なお、APCDA大会2027は、202746日~16日にシンガポールで開催予定とのことです。ご関心のある方は、ぜひ参加をご検討ください。

APCDAホームページ https://asiapacificcda.org/

 

【2026年最新】APCDAカンファレンスとは?(1)
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アメリカにおけるキャリア支援の最新情報(NCDA2025)前編
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