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これからのキャリア開発に大切な「ジョブクラフティング」 ~第1回:ジョブクラフティングが企業で求められる背景とは? ~

連載記事

2021.2.12


ジョブクラフティングとは

「ジョブクラフティング」という言葉をすでに耳にされたことがある方、もしくは初めて聞く方がいらっしゃると思います。「ジョブクラフティング」とは、2001年に米イェール大学経営大学院で組織行動論を研究するエイミー・レズネスキー准教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授により提唱された概念で、日本では2010年頃から書籍、ネットなどで目にするようになってきました。
ジョブクラフティングは、Job=仕事、Crafting=創るという言葉で構成されており、社員1人ひとりが、「担当する仕事への見方・考え方や取組み方を工夫し、自分にとって意味があるものに創り変えていく」方法です。この手法によって社員のモチベーションが高まり質の高い仕事ができるという効果を生むとされています。弊社では、2016年にジョブクラフティングの手法を学び、具体的に実践する研修を新たに開発し、数多くの企業に導入していただいています。
ではなぜ今、多くの企業でジョブクラフティングが注目されているのでしょうか? その背景を3つの観点から述べていきたいと思います。

ジョブクラフティングが求められる背景  Ⅰ:若手社員の早期離職の問題

大手新卒向け就職情報サイトの大学生就職意識調査の結果を見てみると、今年も「企業選択理由」の上位に「自分のやりたい仕事ができる会社」が入っています。この傾向は10年以上前から見られますが、実際に企業の人事担当者にヒアリングしてみると、この『「やりたい仕事」症候群』がさらに増大しているという声を数多く聞いています。
弊社が10年前から実施している新入社員意識調査の2020年版で、過去10年間で比較してみると、「自分のイメージ通りの仕事かどうか不安」について年々増加傾向にあります。つまり、多くの学生が「やりたい仕事ができる」と思って会社に入るものの、入社直後から「やりたい仕事ができるか不安」である状況が調査結果から見えてきます。
また、コロナ禍で少し変化はあるとは思いますが、ここ数年続いている学生有利の売り手市場を背景に入社直後に転職サイトに登録する新人も増えていると聞きます。ここから見えてくるのは、新入社員において定年まで一つの会社に勤め上げようという「就社意識」がますます低下していることだと思います。
こうした若手社員の現状から課題を整理してみると、会社選択時には「やりたい仕事ができる」で会社を選び、入社直後は「自分のイメージ通りの仕事に就けるかどうか不安」、そして職場に配属後は、入社前に抱いていた「仕事」のイメージと現実の「仕事」に ギャップを感じています。
「こんな仕事をするためにこの会社に就職したわけじゃない」
「好きな仕事ができると思っていたが、いつまでこういう仕事をしないといけないのか?」
「いまの仕事が自分の将来のキャリアにとってどういう意味があるかわからない」
などのリアリティショックを受け、仕事に対する期待感、成長実感が大きく低下する新入社員の姿が浮かび上がってきます。
こうした状態を放置すると、“仕事にやりがいを感じられない”、“モチベーションを維持できない”状態が続き、最悪の場合、職場に適応できずに早期離職といった問題が発生します。実際にここ数年各企業の人事担当者からはこのような状況を何とかしたいといったご相談が数多く寄せられています。

■ジョブクラフティングが求められる背景
Ⅱ:ビジネスモデルの転換による再配置の増加

銀行が融資など本業での収益減少により脱銀行化を図るケース(人材紹介や地域商社など)、製造業のソリューション化のケース(「モノを売るからコトを売るへ」)、コロナ禍などで店舗での販売不振により店舗を減らしネット販売中心とした経営戦略に転換する小売業のケースなど急激な環境変化によってビジネスモデルを大きく変化させる動きが様々な業界において顕在化してきています。
そうしたビジネスモデルの変更に際しては、社員の再配置が行われるケースが多く、再配置後に社員が上手く適応できれば問題はないですが、概ね再配置は社員にネガティブに捉えられ、モチベーションが低下するケースが多い。再配置を円滑に進めるためには、対象となる社員一人ひとりが再配置を前向きに捉え、新たに担当する業務において意欲的に組織貢献を図ってもらうための支援施策が重要となります。

■ジョブクラフティングが求められる背景
Ⅲ:バブル期入社世代ボリュームゾーン社員のポストオフ、定年後の課題

バブル期(1989年~92年)の大量採用世代がすでに50歳代中盤に突入し、そろそろ役職定年の年代に差し掛かっています。その世代の管理職に対して多くの企業が抱える課題としては、主に次の3つが挙げられます。
①役職定年後の給与ダウンによるモチベーション低下
②役職定年後の職務が不明確
③役職定年後の職務や出向先確保が困難
日本生産性本部の調査[「第15回日本的雇用・人事の変容に関する調査」(2016年)]結果でも「役職定年年齢の課題」の上位2つに「離脱後に担当する役割・職務が明確でない」「役職離脱後に本人のモチベーションが下がる」が挙がっています。そうした課題発生には、下記背景が影響していると考えられます。
①マネジメント時代が長くプレイヤーとしてのスキルが錆び付いている
②急激な環境変化や加齢による職務と能力のミスマッチが起きている
③自律的キャリア開発意識の欠如(出世型キャリアしか知らない、もしくは「キャリアは会社が作るもの」という意識)
2013年の改正高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用が義務化され、さらに2021年4月からは70歳までの就業機会の確保が努力義務化されることになり、50歳代のバブル期大量採用世代の雇用の長期化がますます進んでいきます。その流れの中でこうした課題がさらに顕在化・深刻化していくことは避けられない状況です。
こうした3つの課題を解決する方法として、多くの企業が「ジョブクラフティング」という手法に注目しているのです。
次回は、ジョブクラフティングの具体的な方法や、日本マンパワーのジョブクラフティング研修の概要について解説します。