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2020年グッドキャリア企業アワード大賞受賞 株式会社JTB様インタビュー(前編)~経営改革の柱としてのキャリア開発支援~

インタビュー

企業

2021.4.27


日本マンパワーがキャリア開発支援プロジェクトとして、上司部下のキャリア面談やキャリアポータルサイトなどのお手伝いをさせていただいた株式会社JTB様が、2020年グッドキャリア企業アワード大賞を受賞されました。
今回は、ご担当の高岡様にお越しいただき、お取り組みについてお話しをうかがいました。

□ゲスト:
株式会社JTB ブランド・コミュニケーションチーム
ブランド・コミュニケーション担当部長
JTBダイバーシティ推進事務局長 高岡 裕之 氏(写真中央)
□インタビュアー:
株式会社日本マンパワー フェロー 水野 みち(写真右)
株式会社日本マンパワー マーケティング部部長 金子 浩(写真左)
□編集:
株式会社日本マンパワー 人材開発営業本部第1営業部 綿島 京子

社員のキャリア開発支援に取り組むまで

水野)大賞受賞、おめでとうございます!色々お聞きしたいのですが、まずは高岡さんご自身のご経歴についてお聞かせください。
高岡氏)1997年、新卒としてJTBに入社しました。入社から12年程学校の旅行行事を担当する営業をしており、それから法人営業を手掛ける会社の本社部門に異動しました。そこでは主に団体旅行の企画や、プログラムの開発などを担当しました。
2018年4月からグループ本社の育成部門に異動となり、企画担当として、社員の学びの支援を通して人財開発に携わることとなりました。2020年3月からはダイバーシティ推進事務局長になりました。ダイバーシティ推進は、女性活躍推進や働き方改革など、かなりキャリア開発支援と重なってくるところがあります。そのため、ダイバーシティ推進とキャリア開発にセットで携わっているところです。
水野)JTBにご入社されたきっかけは何だったのですか?
高岡氏)もともと、自分で起案したものが形になって、社会に影響を与えるような仕事がしたいと考えていました。旅行が好きというのもありましたが、出来たものを売るのではなく、自分で起案して旅行を作って、お客様と一緒に旅行に行き、人の人生に影響を与えられるJTBの営業の仕事に興味を持ち、入社を希望しました。
水野)社会や人に影響を与えるものを作るというところが、今回の受賞にも繋がっていますね。さて、人財開発に携わられてから、高岡さんがキャリア開発への使命を持たれた瞬間はどんな時だったんでしょうか。
高岡氏)2018年に人財開発チームに着任した時は、JTBユニバーシティの企画担当として、社員の学びについていろいろと取り組みました。その中で、学ぶことが目的ではなく、本人のキャリアに繋げていくとか、キャリア開発の中での学びということがますます大切になると感じました。そして、その当時の上司のすすめでキャリアコンサルタントに出会い、自分も勉強してみて、ものすごく衝撃を受けました。
これまでの部下への関わり方や、キャリアの考え方とは全然違うんですよね。会社のマネジメント層が部下とこの考え方で関わると、間違いなく部下は成長するし学びにもつながると思い、この考え方やスキルを社内で進めたいと考えました。その時に「キャリア開発支援をしっかりやっていきたい」と思いましたね。

キャリア開発支援を、経営改革の柱の1つに位置づける

水野)目標が高岡さんの中でうまれて、実際の取り組みは何から始められたんですか?
高岡氏)キャリア開発支援という取り組みを体系化しようということになりました。
他社事例を聴く中で、個々の取り組みは「結構うちもやってるじゃん」というものが多かった。けれど、体系化されていなかったんです。
その頃、JTBは「第三の創業」というテーマを掲げて、経営改革を進めていました。経営改革の柱の一つに、「カルチャー改革」があり、我々は、社員と会社の関係性をカルチャーと見立てて、それを変えていくという方針を打ち出しました。経営改革の柱の一部にキャリア開発支援を入れることで、推進力を持たせたんです。
社の人事領域に関する会議の中でも繰り返し説明をし、経営層の理解を得ることから始めました。
水野)経営層にアプローチする上で、工夫されたことは何ですか?
高岡氏)まずはキャリア開発支援の必要性を文書で示すということですね。目的から具体的な取り組み事項までを示した資料を用意しました。会社にとって良い事をやっているので、全体的な考え方や方向性で「NO」とはなりにくいと思っていましたので、全体の方向性をしっかり文字にして合意を取りました。
水野)資料には、政府の動きなども盛り込まれていましたね。
高岡氏)そうですね、社会環境の変化や政策の動きと自社の課題を接続させて示しました。
経営層からは、「世の中に対して自社はどういう状況なのか」ということの確認が求められました。自社で起きている問題や現象を、社員意識調査や実際の離職状況などのファクトを示して
説明することが重要でした。
水野)事業構造の変化も示されていましたね。
高岡氏)当時、経営改革として、事業モデルの転換や構造改革が掲げられ、そのためには社内で人財の流動化を図らなければいけないという状況でした。ただ人を動かして、与えたことをやってもらうだけでは、社員に活躍してもらうのは難しいだろうと思いました。
社員が仕事に対して、会社にとっての意味や意義、そして本人にとっての意味や意義をしっかり考え、自分なりに意味づけて仕事に向き合って欲しい、そのための対話や情報提供の機会を創出することを第一に考えました。

キャリア開発支援の体系化・見える化 と JTB Career Days

水野)具体的に取り組まれる中で、一番難しいと思ったのはどんなところですか?
高岡氏)それぞれ大変でしたが、今、求められるキャリアの考え方や仕事への向き合い方を社員に理解してもらうことには尽力しました。例えば、キャリアの定義も社員にとって自分ごとにできるよう、「JTBではキャリアというものをこう考える」というものを決めました。それに基づいて、研修や啓発を展開していきましたね。
水野)まさにカルチャー改革ですね。当社もサイトや動画のお手伝いをさせて頂きました。
高岡氏)はい、キャリアの体系や定義を「見える化」するために、分かりやすい動画が必要だと思い、アニメーションを取り入れた物語風のものを作成しました。また、デザイン性のあるキャリアポータルサイトで、「自分自身の見える化」「仕事の見える化」「制度の見える化」ができるようにしました。
「自分自身の見える化」では、強み、弱み、価値観を自分で描けるように導く自己分析ツールが活かされています。「仕事の見える化」では、各グループ会社の仕事の特徴や、働いている人の思いを紹介するようなページを、楽しんで見てもらえるよう見せ方を工夫して作成しました。「制度の見える化」では、キャリア支援に関する制度の情報を一元的に集めてサイト内に掲示しました。
JTB Career Daysというイベントも、キャリア面談の前に自身の振り返りと、将来を描くための情報提供を目的に実施しています。上司向けキャリア面談のスキルアップセミナーや、活躍している社員・働き方の取り組みの紹介セッションを設けたり、経営層が今後の会社の方向性を話したり、人と仕事にまつわる様々な情報提供を行い、社員が自身の将来を考える機会を創出しています。

部下の職場での育成やキャリア開発支援は、上司がキーパーソン

水野)上司層にキャリア面談の考え方を浸透させていくのは大変だったと思います。効果は出ていますか?

高岡氏)そうですね。意識調査でキャリア形成に関する上司部下間のギャップが埋まってきたという結果が出てきています。ただ、劇的に変わったかというとまだ道半ばだと思っています。
仕事を通じた成長を第一に考えると、職場でのキャリア形成は非常に重要だと思っています。2018年から導入した人事評価の中で、目標達成の成果だけでなく、プロセスを評価するような仕組みはできていました。
この仕組みには、成果へのプロセスに自分らしさを発揮して欲しいというキャリア形成につながる思想が込められています。上司が思うやり方で成果を上げさせるのではなく、社員一人ひとりの個性を生かして、社員の将来につながるやり方でマネジメントして欲しい、という思いです。
それを機能させるために、上司のマインドチェンジをする必要がありました。部下の職場での育成やキャリア開発支援は、上司がキーパーソンです。
余談になりますが、研修と職場の接続に関する社内の笑い話があります。社の研修所の前に橋があるんですけど、その橋は「忘却の橋」って呼ばれているんです。橋を渡って職場に帰ると、研修で学んだことを全て忘れてしまうからと…(笑)。
今、JTBユニバーシティでは、部下は研修で学んだことを職場で発揮し、上司は部下が何を学んできたのかを承知して、ジョブアサインやフィードバックを行うという研修と職場に連続性を持たせる取り組みを進めています。
■インタビュー後編 こちら
■高岡様が登壇される「HRカンファレンス2021春」の詳細 こちら