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2020年グッドキャリア企業アワード大賞受賞 株式会社JTB様インタビュー(後編) ~この時代だからうまれたものと新経営ビジョン~

インタビュー

企業

2021.4.27


グッドキャリア企業アワード2020をご受賞されたJTB様のインタビュー後編です。
今回は、この時代だからこそ生まれたものと、未来に向けてのお話しをうかがいました。

□ゲスト:

株式会社JTB ブランド・コミュニケーションチーム
ブランド・コミュニケーション担当部長
JTBダイバーシティ推進事務局長 高岡 裕之 氏
□インタビュアー:
株式会社日本マンパワー フェロー 水野 みち
株式会社日本マンパワー マーケティング部部長 金子 浩
□編集:
株式会社日本マンパワー 人材開発営業本部第1営業部 綿島 京子

コロナ禍からうまれたもの

水野)コロナにより旅行業界は苦しい状況とお察しします。社員の皆さまから、キャリア相談のニーズも増加しているのでしょうか?
高岡氏)今は本当にキャリアが描けない状況です。まず、旅行ニーズがいつ頃回復するか、だれにも展望が描けない。そのため、会社や事業はどうなるんだろう、自分のキャリアはこれからどうなるんだろうという不安は、多かれ少なかれ社員全員が持っていると思います。
社員の不安を解消(打破)するために、会社でも、新たな時代を見据えた戦略や事業プランを立てて社員に伝えています。
新しい事業プランや会社の姿に期待をもってもらう、自身の将来と重ね合わせてもらう機会を提供することが、今ますます重要になっていると思います。
水野)コロナショックの前から、上司との面談機会を強化したり、キャリア開発支援制度の見える化(サイトでの一元的な提示)を進めていたりしたことは、今回の危機を乗り越えるのに役立っていますか。
高岡氏)そうですね。制度や枠組みをうまく使って、社員に対し、よりダイレクトに働きかけていきたいです。
また、コロナ以前から働き方やビジネスモデルを大きく変える過渡期に入っていたため、準備が出来ていた面もありました。
水野)変化には先に乗り出していたんですね。
高岡氏)そうですね、多様な働き方を推進する制度を充実させていました。リモートワークはもちろんですが、単身赴任せずに実家から働ける「ふるさとワーク」、勤務日数短縮制度の導入や副業ガイドラインの制定などもすすめています。多様な働き方を推進することで、社員の活力アップ、働きやすさ・働きがいにつなげることが狙いです。
水野)先ほど、ビジネスモデルを変える過渡期というお話がありました。そんな中で、社員からの新規ビジネスの提案機会もあるのでしょうか。
高岡氏)はい。JTBでは、新規事業公募を毎年実施しています。実は2020年度は例年より多く、700件近い新規事業応募があったんです。合わせて、社員意識調査でも「新たな取り組みを行った」や「挑戦する風土がある」などのスコアが伸びていました。
コロナにより、現場社員の気持ちが滅入っているのではと心配していましたが、「この状況を何とかしよう」という意識を持った社員が大勢いる。この結果はとても嬉しく、社員の思いにこたえたいという気持ちがあります。
水野)この逆境においても、新しい行動を自ら起こされた方が大勢いらっしゃるんですね。
高岡氏)その社員意識調査で、昨年度と比べ、肯定的な回答の割合が最も伸びた設問は、「私は、自社における『交流創造事業』を意識して取り組んでいる」というものでした。
この『交流創造事業』は、当社の事業ドメインとして掲げているものですが、創業以来のピンチに、自分たちの仕事にはどういう意味があるのか、自分たちに何ができるのかということを一人ひとりが立ち止まってよく考えたんだと思います。
水野)お話を伺って、コロナの影響でいったんは停滞しているように見えても、実はその期間に力を蓄え、飛躍する準備が着々とできていらっしゃるような印象を受けました。
高岡氏)ありがとうございます。

社内外の緩やかなネットワークにより、新経営ビジョン「新交流時代を切り拓く」を実現させる

金子)コロナ禍で、人が行き交うリアルの交流は難しくなりました。しかし、人と人との交流は、生きていく上で欠かせないものですよね。人との交流のニーズは、今とても高まっているように思います。
高岡氏)そうですね、JTBでも、新しい交流のかたちや、地域への関わりを担っていきたいと考えています。新しい経営ビジョンにも「新交流時代を切り拓く」を掲げました。
「交流」という事業は幅が広く、言ってしまえば何でもできます。社員には、決められたことだけでなく、新しいことをどんどん切り拓いていってほしいと思っています。
中には、地域とのかかわりや専門性をより追求した結果、社外に出ていく社員もいるかもしれません。でも、転職した後も、JTBファン、JTBのパートナーとして緩やかに連携していけたらいいですね。仕事は社内の人間だけで完結するものではないので、そういった形でも、JTBのネットワークが広がっていったらと思っています。
水野)決められたことだけでなく新しいことにチャレンジしたり、新しい環境に身を置いたりするのは、越境学習と通じるところがありますね。
社外に転身するだけでなく、外で得た知見から今の会社でイノベーションをうみだしたり、ご自身のキャリア開発にいかしたりする効果も期待されます。

今後に向けて

水野)今後に向けてはどのように考えていらっしゃいますか?
高岡氏)越境学習などをしていく上で、社員の帰属意識の源泉は必要という話が出ています。フィロソフィーというものになるのかもしれないですが。帰属意識の源泉があったうえでの社外を見据えた挑戦じゃないと、人財が離れていってしまうので。共通のつながり、社員の帰属意識の源となるものが必要だねという話になっています。
来年は創業110周年に合わせて「The JTB Way」の一部改定も行う予定です。
水野)高岡さんは、キャリア支援を「個人と組織の成長」、そして橋渡しする「上司の役割」、「日々の仕事の意味づけ」と、ダイナミックで有機的な捉え方をなさっていますよね。キャリア支援の企画も統合的にされていらっしゃるように思います。
高岡氏)社員目線で言うと、会社の仕事はキャリア形成の一つのパーツでしかないのかもしれませんが、会社の立場で言うと、やっぱり仕事で成果を上げ、まずは社内で活躍領域を見出していって欲しい、という思いがあります。
先ほど申し上げたように、JTBはフィールドの大きな会社です。今無いものは自分で創り出せる会社です。
そのフィールドを存分にいかしてほしいと思います。そんな仕事の捉え方を含めて、「仕事とどう向き合うか」が大切だと思いますので、会社の方向性も知らなきゃいけないし、その背景にある事業環境も知らなきゃいけない。ここのすり合わせこそがキャリア開発支援ですよね。
「社員の自主性に任せて福利厚生的になんでもお手伝いします」ということではなく、会社として現実を社員に把握してもらったうえで、「今後こういうことを会社としては伸ばしていく」「こういう仕事が求められる」「こういう能力が求められる」というものを社員に示し、社員の目指す方向性とすり合わせてもらうというのがキャリア開発支援の根底にあります。

読者の皆さまへ向けてのメッセージ

金子)最後に読んでいただいている方へのメッセージをお願いします。
高岡氏)社員と会社の関係性をどう描くかは、会社や事業によって全然違うと思います。
・自社が社員とどういう関係を作っていくのか考える
・自社にとって、「社員にとってのキャリア」とは何かを考える
・施策の中に、目に見える「小さな成果」を設定する
・他社事例を聞く

こういったことが大切かと思います。
他社事例を聞く、ということについては、私自身は「自社や自分の仕事に何か活かせるところはないか自問自答しながら聴く」ということに気をつけています。
どんなに関係ないことだと思っても、事例には自分に活かせる何かしらのヒントがあります。自身が経験できることは僅かですので、他社の事例から学ぶことは本当にとても貴重な機会です。「これって自社だとこういうことかな?」と常に考えて、思考をアクティブにしていること、言うなれば「一人アクティブラーニング」をおすすめしたいです。
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