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音楽座ミュージカル インタビュー記事(前編)~イレギュラーを瞬間瞬間で起こし状況を好転させていくDNAとシアターラーニング℗~

インタビュー

対談

2021.5.18


日本マンパワーでは、2015年から、音楽座ミュージカルと共同で「シアターラーニング℗」を企業研修として提供しています。今回は、シアターラーニングのメインファシリテーター藤田さんに、音楽座ミュージカルの哲学とあり方がつまったシアターラーニングのプログラムについてお話いただきました。
ゲスト:音楽座ミュージカル 藤田将範氏、シアターラーニングメインファシリテータ
インタビュアー:日本マンパワー マーケティング部上級部長 金子浩
編集:日本マンパワー 緒方 雪絵
音楽座ミュージカル 概要
音楽座ミュージカルは1987年に旗揚げし、「シャボン玉とんだ宇宙 (ソラ)までとんだ」を第1回作品として創作・上演。
作品は「リトルプリンス (星の王子さま)」「ホーム」「7dolls(七つの人形の恋物語)」「グッバイマイダーリン★」「SUNDAY(サンデイ)」など。
旗揚げから現在に至るまで、「ひとりの天才より十人の凡人で何ができるか」を合言葉に
独自のプロジェクトワークによって、オリジナル作品を創造。そうして生まれてきた作品達は、「生きる」ことの根源を問い続ける独自の精神性とオリジナリティを高く評価され、文化庁芸術祭賞、紀伊國屋演劇賞、読売演劇大賞など、日本の演劇賞を数多く受賞している。

1、音楽座ミュージカルのDNA ~イレギュラーを瞬間瞬間で起こし、状況を好転させていく~

金子:藤田さんとは、弊社が2015年に「シアターラーニング」の販売提携をはじめてから6年来のお付き合いになりますが、こういったインタビューは初めてですね。ちょっと緊張します(笑)。
藤田さんは、音楽座ミュージカルにもう10年以上いらっしゃるんですよね。今までで一番印象深かった経験などを聞かせてもらえますか。
■入団式が、ダメ出しで一時中断!?
藤田氏:一番衝撃だったのは、入団式ですね。式なんだから、厳かにつつがなく進行すると思うじゃないですか。ところが当日、司会が「始めたいと思います。今日はこういう日で・・・」とちょっと話したところで、石川さん(現:音楽座ミュージカルチーフプロデューサー)が、急にダメ出ししたんですよ。
「それ違うんじゃないの。そういう言い方したらさ、みんな誤解するかもしれないじゃない」って、そこで式がとまったんですよ。
金子:えっ、とまってしまったんですか(驚)
藤田氏:そうなんです。そこから色々やりとりが始まって。司会が「じゃあ、そういうことじゃないです」って言って、また式が進んでいきました。
「違うと思ったらすぐ変えていく」とか「想定通りのことじゃなく、今必要なものをこの瞬間やり切る」。「イレギュラーなことを、どんどん瞬間瞬間起こしていく」ということは、我々音楽座ミュージカルのDNAなんです。
だから、式がとまっちゃったのも、石川さんのように音楽座ミュージカルにずっと関わっていたメンバーにとっては日常だったと思います。でも、私は、音楽座ミュージカルに入って1日目にこの体験をしたので、本当にカルチャーショックでした(笑)。
今では私も、こういうことを当たり前にやるようになったんですが、こうした音楽座ミュージカルに脈々と受け継がれるDNAには、やっぱり得難い価値を感じています。
©️ヒューマンデザイン 撮影:二階堂健
■イレギュラー発生で、体験会直前に進行を修正
金子:今のお話を聞いて、2015年の「シアターラーニング」のお披露目セミナーを思い出しました。あの時もまさに、イレギュラーなことが起こりましたね。
あの日、私たちはセミナーを二本立てで開催、前半が講演、後半がシアターラーニングの体験でした。参加者は前半・後半と続けて参加するので、私たち企画側は、前半後半で論旨のくいちがいが起こらないよう注意する必要がありました。
ところが企画が甘く、シアターラーニングで伝えようとしていた内容の一部について、前半の講演で真反対の持論が展開されてしまった。
あの時、私は呆然と何もできずにいましたが、音楽座ミュージカルの皆さんは、セミナー会場の後ろで、円陣を組んで進行をどう修正するか話し合っていましたよね。あの時の皆さんの様子、忘れられません。
藤田氏:正直、前半の内容を聞いた時、「どうしよう」とは思ったんですよ。
ああいう土壇場を何とか乗り切るっていうことは、日々、ミュージカルでも経験はしていました。今なら、ああいう出来事が起こると場が深まるので、むしろラッキーって思えるんですが、さすがに、あの時は企業研修に乗り出したばかりで、そうは思えなくて。
でも、「イレギュラーなことを、どんどん瞬間瞬間起こしていく」のが音楽座ミュージカルですから。あの時も、グループの代表に相談したら「大丈夫、大丈夫(笑)」と。気を持ち直して、進行の修正に取り組めました。
金子:セミナーの企画を立てた一人として、本当にお詫びの言葉しかないのですが、「想定外のことが起きても、そこから瞬間瞬間をやりきって状況を好転させていく」という音楽座ミュージカルのDNAを体現された1日でしたね。

2、シアターラーニングが生まれるまで ~作品創作で味わった「自分の殻を破る」難しさ~

金子:続いて、私たちが提供している「シアターラーニング」を、読者の皆さまにご紹介したいと思います。まず、概要を下記にまとめました。
〇シアターラーニング
舞台演出メソッドを活用したオーダーメイド型の研修。
受講者が想定外の状況を連続で体験し、「ありたい姿」を本気で演じることで、自分のこころの殻を破り、状況を変える力を養う
〇特長
プロの現役俳優陣が担当
妥協のないフィードバック
オーダーメイドのニーズに対応
〇代表的なワーク
(1)コミュニケーションワーク:ペアやグループでコミュニケーションやチームビルディングの原理原則を体感する
(2)修羅場体験:プロの俳優との職場シミュレーション。困難な状況で相手と向き合う
(3)CMクリエーション:チームでミュージカル仕立てのCMをつくる。負荷のかかる状況で、チームで成果を出す
(4)ミュージカル創作:全員で一体となる感覚を味わう。チャレンジすることで、出来ないを出来るにかえる
金子:まず、シアターラーニングが生まれるまでを、藤田さんからご紹介いただけますか。
藤田氏:はい。今まで私たちは、ミュージカルの作品創りで、作品に出てくるテーマや登場人物の生き方について、「ああしたい、ああなれたらいい」と憧れや願いを込めながら、脚本・演出を考えたり、役を演じたりしてきました。
シアターラーニングも、そこは一緒です。研修のテーマ「自分の殻を破り、変化していく」は、私たち音楽座ミュージカルのメンバーの憧れ・ありたい姿なんです。
なぜ、自分の殻を破り、変化していくことが、私たちのありたい姿なのか。
それは、音楽座ミュージカルの独自の創作システム「ワームホールプロジェクト」と深い関係があります。
■ワームホールプロジェクト
http://www.ongakuza-musical.com/about
ワームホールプロジェクトの詳細は、ぜひ上記のページをご覧ください。
端的に言えば、作品創りのプロセスにおいて、(1)変化をおそれず積極的に挑戦していくこと、(2)専門分野だけでなく作品全体の成立に向けて行動していくこと、が全メンバーに求められるんです。
自分の思ったこと、こうしたいと思うことを積極的に発言し、みんなでそれを掛け合わせてコラボレーションしていくんですね。
でも、自分が思っていることを出すって、意外と難しいんですよ。
例えば、「まわりから馬鹿だと思われたくない」と物知り顔をしたい自分。「まわりとは一線ひくタイプだし」とコミュニケーションに消極的な自分。そんな、自分に貼りついている殻が邪魔してくるんです。
また、思っていることを言っても、それは完成品ではなく原石。メンバー全員が、その発言を素材にし、ぶっ叩きながら芯を作っていく。だから、出した発言が否定されたり、反対されたりすることも当然あって。否定や反対を恐れずに果敢に出していくことが大事なんですけど・・・理屈ではわかっても、ハードル高いですよね(苦笑)。
だから、自分の殻を破り変化していくことを、なんか感覚的に素直に受け入れられる場があったらいいなと思って、形にしていったのが「シアターラーニング」なんです。

3、シアターラーニングの代表的なワーク

金子:シアターラーニングは、体感型のプログラムのため、実際にご体験いただくのが一番だと思いますね。
藤田氏:そうですね。説明してもなかなか伝わりづらいのが難点ですが、代表的なワークをお話しします。
まず参加者の緊張をほどいて、その場を安心安全な場にするために、アイスブレイクやコミュニケーションワークから始まります。
金子:ペアになって、お互いに「いいね!」をオーバーリアクションしあうワークなど、本当に楽しいですよね。参加者にも好評です。その後、修羅場体験やCMクリエーションに入っていきますよね。
■修羅場体験
金子:修羅場体験は、企業様のオーダーメイドで、参加者に乗り越えてほしい場面を設定します。例えば「忙しくて、いつもイライラしていている上司」や「口数少なく頑固な職人さん」に、参加者が相談・交渉を持ちかけるような場面です。
即興で進行していくので、私はいつもドキドキしながら、参加者を見守っています。チャレンジした参加者が、「どうしたらいいか分からず、ちょっとパニックになりかけた」と、感想を話していたこともありましたね。
藤田氏仕事では、想定していたことが通用しない場面って沢山あると思うんですよ。
「どうしたらいいんだ」って思うけれど、正解は無く、覚悟をもって「ありたい姿」で臨んでいくしかない。
修羅場体験は、稽古場での私たちの姿に似ています。
私たちも、メンバーの前でさらされ、「ありがとうの演技が薄っぺらい」とか、メンバーから日々厳しいフィードバックを受けています。痛い思いもするけれど、その中で試行錯誤しながら、役を成長させていく。
修羅場体験にチャレンジされた方には、まずチャレンジした自分の勇気をほめてあげてほしいですね。あと、正解のない中で自分自身のあり方と向き合ってみての感想、まわりからもらったフィードバックを、成長の糧として大事にしていただきたいです。
金子:ある参加者が、「消極的な自分・怖じ気づく自分の殻を破れた。会社で実践していきたい」と笑顔で語っていましたね。なんだか本当に、一皮むけたような印象を受けました。
藤田氏:参加者の皆さんが自分の殻を破って変化されていく様子には、私自身も本当に救われています。他のメンバーも参加者の様子を見て「自分も成長したい、また頑張っていこう」って思っているんですよ。
■CMクリエーション
藤田氏: CMクリエーションは「ミュージカル仕立てのCMを、1時間で創って発表してください」というワークですが、そう言われても、普通は受け入れられないですよね。
「ミュージカルなんてやったことない」とか、「時間が短すぎる」「人前で表現するなんて恥ずかしい」と、最初はやりたくない気持ちの参加者がいっぱいいます。
参加者メンバーほぼ全員が、初体験で負荷のかかる状況を体験します。
でも、一人ひとりが主体的に動かないと前に進まないし、周りと協業しないとミュージカルは完成しない。クールな自分、失敗したくない自分、そんな自分の表面的な殻を気にする余裕がないんです。
とにかく、発言や行動をトライアンドエラーで繰り返していく。その過程で、新しい自分を発見したり、グループメンバーの中でフラットな関係が醸成され、相手を受容する場が生まれていったりするのがCMクリエーションの魅力ですね。
■音楽座ミュージカル様インタビュー後編はこちら↓
https://future-career-labo.com/2021/05/18/ogata07/

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