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キャリこれ

【これからのキャリアに必要な「創造性」とは?】 Vol.1 キャリアの“創造性”を阻む「とらわれ」を知ることがはじまり

連載記事

2021.6.11


―変動する。確実なことが分からない。複雑さが増す。曖昧な状況が続く。
2020年、誰もがまさにそんな状況に陥っていると感じたかもしれません。
VUCA※1の時代と呼ばれ始め、コロナウイルスの出現に限らず、経済・産業の構造変化、DXの到来、環境問題の深刻化など私たちのまわりが刻々と変化してきています。
[※1 Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉]
このように先を見通し分析することが難しくなってきた今、これまでとは違う思考のプロセスが注目され始め、デザイン思考、アート思考という言葉がビジネスの場で聞かれるようになってきています。
中でもアート思考は、これまでの常識や固定観念にとらわれず、個々人の経験、興味、課題感、価値観などが礎となり、自己を表現・具現化していくプロセスを通ります。
このプロセスでは、相手・他者など“誰か”を想定するのではなく、どこまでも自分事としての意識に焦点を当てます。正解がないため、“問い”を自ら生み出し本質を見極める力、そこに新たな視点・新たな解釈を見出し表現につなげていく発想力が引き出されます。
数値を積み上げるサイエンス中心のビジネスに、このようなアート思考のプロセスやそこから生まれるクリエイティビティ(創造力)が必要だと言われています。
これはキャリアにおいても同じなのではないかと、キャリアのこれから研究所では注目しています。
これからのキャリアにおいて、「創造性」は必要なのか?
創造性とは
-これまで当たり前にあったキャリアの築き方とは違うものを意味するのかもしれません。
-組織との関係性の新しいステージを指すのかもしれません。
-仕事の内容を未来に向けてアップデートすることを導くのかもしれません。
キャリアにおける「創造性」とは何か。
この連載を通して、キャリアの「創造性」について考え、それを育み、実践できる場づくりに繋げていけたらと考えています。

「創造性」とは?自分にとっての意味

キャリアのこれから研究所では、キャリアにおける“創造性”を考えるとき、「創造性」とは何かを対話することからはじめました。
「創造」の一般的な定義は「新たに造ること。新しいものを造り始めること。新しいものを生み出す能力。(広辞苑/岩波書店より引用)」とあります。
改めて、自分にとっての「創造性」とは何かを考えることで、「創造性」に向けられる個々人の印象や期待を浮き彫りにする狙いがありました。
さてここで、この記事を読んでくださっている皆さんにも同じ問いを投げかけたいと思います。
「あなたにとっての“創造性”とは?」
さまざまな言葉が頭に浮かぶもしれません。今、自分の中でしっくりとくる言葉を、ぜひ書き留めてください。
この問いかけに対してキャリこれメンバーから出てきた言葉は以下になります。
今までにない新しいものを創ること 内側の露出 形にする探究心
コミットメント 問題を発見・解決する力 イマジネーション
過去の蓄積の四則演算 内側と徹底的に向き合うこと
ここからは、「Reframing(リフレーミング 自分の枠組みを外す)」というアプローチを使って思考実験に入っていきます。
今当たり前に在るような枠組み(フレーミング)を意識してみること、枠組みから離れ、異なる枠組みを通して見方を、視点を、変えていくこと、それがReframing(リフレーミング)です。
例えば、皆さんの目の前に同じ「椅子」があったとして、これをリフレーミングしてみるとしましょう。
「椅子=人が座るもの」という全員の共通認識はあると思います。ある人は、物を積み重ねて置いて「椅子=家具、物を置く場所」と捉えなおすかもしれません。ある人は椅子を横に倒して連ねておくことで「椅子=柵、誰かを立ち止まらせるもの」とするかもしれません。椅子をひっくり返して4本脚が使えないか確認したり、この背もたれを通して何ができるだろうかと思案したり、椅子をさまざまな角度からみて、“人が座るもの“から枠組みを外して想像することができます。
創造性を生み出すアート思考のプロセスを経験してみてください。これまでの固定化した考えや枠組みから、視点をずらしたり、変えたり、違う状況下においたり、枠組みそのものから一度離れて捉えなおしてみると、何が見えてくるでしょうか。
この思考実験を体感するために、次のような事例を、キャリこれ研究所メンバー酒井章(さかい あきら)さんより紹介していただきました。

キャリアにおける「創造性」を考えていくうえで、今、自分自身はどんなフレーミング(枠組み)にとらわれているか?

なぜこの状態なのか?なぜ人はそう感じているのか?なぜ私自身はそう思うのか?
それを問い続けると、新たな意味を見出したり、気づきを感じたり、過去を遡ったり、自分の価値観を振り返ったり、課題が顕在化したり、さまざまな視点に分岐することがわかります。
―今、自分自身がとらわれている状況を知っていくことが「創造性」へつながる起点になる。
リフレーミングの輪郭が見えた今、皆さんにも新しい問いを投げかけたいと思います。
「働き方やキャリアについての『とらわれ』を考えてみてください」
自分自身がいまどんなとらわれに置かれているか。キャリアの創造性を考えるからこそ、とらわれている状態に目を向けていきます。
例えば、こんなとらわれを持っていませんか?
「〇〇歳になったのだからこうあるべき」
「組織の中では〇〇〇をせねばならない」
「どうせ〇〇〇だからやっても無駄」
さまざまなとらわれが、自分のキャリアや働き方の可能性を狭めている可能性があります。
このとらわれをリフレーミングしてみると、実は、とらわれる必要のないものも含まれているかもしれません。反対に、そのとらわれを活かしている自分も見えてくるかもしれません。

キャリこれメンバーそれぞれが考えていたとらわれ

ここに挙がっているものはキャリこれメンバーから出された働き方、キャリアに対してのとらわれの一部です。
「メールは24時間以内に返信しなければならない」などの仕事のやり方。「会社は評価をしなければならない」という組織との関係性に繋がるもの、「仕事に“やりがい”を探す」という働く価値観に関するものなど、いくつもの個々人の想いがにじむ“とらわれ”が出てきました。
その中で、キャリこれメンバー清水啓介(しみずけいすけ)さんから新たな疑問が発されました。
「自分がその場所にいて『とらわれている』状況であると、そもそも『とらわれている』ことに気がつかないのではないか?」
まさに、その通りです。自分にとって、あまりにも当たり前なために、気づいていない「とらわれ」も多々あることでしょう。
誰かに問われたり、自分とは違う考えを持つ人に出会ったりした時。いつもと異なる環境に身を置いてみた時。そんな時が、「とらわれ」に気づく絶好の機会かもしれません。
当たり前と思っていたことに違和感や疑問を感じた時、無視せずに立ち止まり、考えることができるか。そこで内省することで、自分の中の「とらわれ」が自覚でき、リフレーミングにつながっていきます。

自分の枠組み(フレーミング)に気づくことがキャリアの「創造性」につながる

対話の場で出てきた「とらわれ」をリフレーミングしていくため、それぞれの「とらわれ」を対極の場にある言葉に置きなおしてみました。※上の図の右側
このように言葉を並べたとき、キャリこれメンバーから感想と気づきがあがりました。
「なんだかワクワクする気持ちになる」
「たしかに、なぜこの対極側のようにならないのだろうか、その理由を考えたくなった」
「自分はこんなことを考えているんだ、と改めて言葉にして実感した」
今あるとらわれを考え、その対極にあるリフレーミングしたものを思い描いたとき、冒頭、メンバーそれぞれが語った「創造性」という言葉から想起した以下の言葉に繋がっている感覚が共有できました。
今までにない新しいものを創ること 内側の露出 形にする探究心
コミットメント 問題を発見・解決する力 イマジネーション
過去の蓄積の四則演算 内側と徹底的に向き合うこと
リフレーミングが創造性につながることが、実験で実証できた瞬間でした。

キャリアの“とらわれ”を知った先へ

リフレーミングの手法を改めて考えたとき、キャリア開発研修で取り入れられているジョブクラフティングを思い出された方もいるかもしれません。
ジョブクラフティングの詳細は、こちら
ジョブクラフティングは、社員1人ひとりが、「担当する仕事を今までと違う視点で見つめ直し、再定義し、自分にとって意味があるものに創り変えていく」手法です。
リフレーミングもジョブクラフティングも、既存のものを再定義する、意味を捉えなおすという共通項があります。
イレギュラーなことが起こり続けるVUCAの時代、自分が当たり前と思っていた枠組みやキャリアが揺らぐ機会が増え、こういった手法へのニーズが高まっています。
「自分がどうありたいか」を軸に、今在る枠組みをリフレーミングし、自分のキャリアを意味あるものにしていくことは、今後、働く個人にますます求められる力になっていくことでしょう。
連載「これからのキャリアに必要な『創造性』とは?」では、次回以降、様々な“とらわれ”をリフレーミングし、新しいキャリアを創造した方たちを探し、インタビューしていく予定です。
彼ら・彼女らが、どのようなキャリアを歩み、どのようなきっかけで新しいキャリアを創造するに至ったのか、じっくりお伺いしていきます。
皆さまが、今後のキャリアを考える際のヒントにしていただけるよう頑張りますので、引き続きのご愛読、よろしくお願いいたします!