デカルトの探索
「変化の激しい時代」と言われて久しくなりました。VUCA、Society5.0、人新世、Gゼロ、ニューノーマル。時代の変化を表現する言葉も、さまざまな分野で、さまざまに使われています。新型コロナウイルスの感染拡大は、変化を引き起こしたという側面があると同時に、従来から起こりつつあった変化を加速した側面とがあると言われています。
変化が激しいとき、人は支えや拠り所を求めるのではないでしょうか。佐伯啓思さんによると、ルネ・デカルトもその一人だったそうです。彼が生きた1600年代、ヨーロッパは三十年戦争などにより、混乱のさなかにありました。前の世紀に始まった宗教改革の影響も大きかったようです。気候変動による不作やペストの流行もあったとのことですから、今、私たちが置かれている状況と似ているところもあると言えるかもしれません。
そうした中で、確かなものを探求し続けた末にデカルトが辿り着いたのが「我思う、ゆえに我あり」だったのです。彼の思索が、考える主体としての「自我」を発見し、その哲学は合理主義や科学の基礎になって、近代を形作っていったことはよく知られているところです。
生き方と向かい合う時代
ところで昨年、日本キャリア開発協会(JCDA)が、所属するキャリアカウンセラー(CDA)にアンケート調査を行ったところによりますと、コロナ禍において、従来と比べて「働き方や生き方など、大きなテーマ」の相談が増えたとの回答が目を引きました。また、内閣府が昨年6月に実施した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」においても、「仕事の向き合い方などの意識に変化があった」「仕事と生活のどちらを重視したいかという意識に変化があった」という回答が共に5割を超えていました。
これらの結果からは、多くの人が自分自身の生き方と向き合っている様子がうかがい知れます。デカルトが確かさを求めて思索した400年後、私たちはあらためて、それぞれの自分らしい人生を模索しているのかもしれません。いまここに確かに存在する私が、どのように自分像を描こうとしているのか、言い換えると、「自我」はどのように「自己」を描いていくのか、が問われているのではないかと思うのです。
サビカス博士のメッセージから
「この厳しい時代を味方につけるために、一体どんな活動が役立つでしょうか?最も効果的なキャリア支援は『内省』の支援です。内省を行って、過去を振り返り、過去と未来を『つながり』で考えてみることです。」
21世紀を代表するキャリア理論家として知られるマーク・サビカス博士は、2021年8月のインタビューでこのように語っています。
■マーク・サビカス博士インタビューの内容 こちら
21世紀を代表するキャリア理論家として知られるマーク・サビカス博士は、2021年8月のインタビューでこのように語っています。
■マーク・サビカス博士インタビューの内容 こちら
また、2021年1月15日に行われた、キャリアのこれから研究所設立記念イベントにおいて、博士は、「人は自分の人生の作者であり、所有者である」ことを改めて強調し、そのうえで、次のように述べられています。
“Identity means creating your own story.”
(アイデンティティとは、独自のストーリーを創ることを意味しています。)
■キャリアのこれから研究所設立記念イベントの内容 こちら
“Identity means creating your own story.”
(アイデンティティとは、独自のストーリーを創ることを意味しています。)
■キャリアのこれから研究所設立記念イベントの内容 こちら
この不透明な世界を生きるうえで、自分の人生を自ら語り、描いていくことはたいへん意義のあることなのです。内省支援の専門性を有するキャリカウンセラーの伴走があれば、その語りを通して、自らの人生を貫くテーマを見出すことができるでしょう。これまでの人生の歩みを振り返り、それを一貫したテーマを持ったストーリーとして描けたとしたら、これから生きていくうえでの道標となるのではないでしょうか。
こうした一連の経験ができて、更にそれをカタチにも残せるようにできたら…。私はそう考えてみました。内省支援のキャリアカウンセリングと、それに基づいて書き下ろされた、世界でただ一冊のキャリアストーリーブックができあがる。そんな取り組みです。
Identity means creating your own story.
人生のテーマ、言い換えれば生きる意味というものは、100人いれば、きっと100通りあるはずです。
それは既成のパターンにあてはめて済むものではなく、その人固有の世界を一緒に見ていく専門性が必要とされます。問題解決ではない、固有の意味への気づきと成長を支援するアプローチは、日本マンパワーのプログラムで養成されたキャリアカウンセラー・キャリアコンサルタント(CDA)が得意とするところです。
それは既成のパターンにあてはめて済むものではなく、その人固有の世界を一緒に見ていく専門性が必要とされます。問題解決ではない、固有の意味への気づきと成長を支援するアプローチは、日本マンパワーのプログラムで養成されたキャリアカウンセラー・キャリアコンサルタント(CDA)が得意とするところです。
信頼できる専門家とゆっくりと人生を振り返る時間をつくる。語りを通して自らの「つながり」に気づく。見えてきた自分のテーマから自らビジョンを描く。そして語りに現れた人生のストーリーをプロに執筆してもらう。さらにそれが、世界でただ一つの本としてカタチになる――そこに現れるのは、単なる一冊の本ではなく、未来に向けてこれからを踏み出す「自己」なのだと言えるのではないでしょうか。そしてその「自己」は、新たな気づきを抱いて社会に再び参加し、これからを築いていく担い手になっていくのだと思います。
自らの人生を振り返ると、一見バラバラに感じる経験に、実は一貫した「自分」が存在する。「自分が大事にしてきたことはこれだったのか」「そうか、自分とは、そのような意味を人生に求めていたのか!」そうした気づきが、人生のインタビュアーであるキャリアカウンセラーの存在によって得られるはずです。
Create Your Own Story.
変化の中を生きる私たちには、それぞれに固有の「物語」がある。それを紡いでいく営みが、これからの社会を創っていくのではないかと思うのです。
▼新サービス『マイキャリアストーリー』のお問い合わせはこちら
日本マンパワー CDA事務局
03-5294-5030(10:30-16:30、月・木・祝日除く)
https://www.nipponmanpower.co.jp/ps/choose/school/inquiry/index.php
※「通学講座に関するお問い合わせ」内に問い合わせフォームを設置しています
【参考資料】
佐伯啓思『西欧近代を問い直す』PHP文庫 2014年
内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」2020年6月
日本キャリア開発協会「新型コロナウイルス感染拡大下の活動状況・意識調査」2020年10月
佐伯啓思『西欧近代を問い直す』PHP文庫 2014年
内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」2020年6月
日本キャリア開発協会「新型コロナウイルス感染拡大下の活動状況・意識調査」2020年10月
長らくキャリアカウンセリング・CDAの広報として活動、現在は新規事業開発に挑戦中。集いと人文社会学と仏像巡りを好む。
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