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キャリこれ

1on1の場で活きるMMOTメソッドvol.2 ~仕事のふりかえりの技術 ピクチャリング~

インタビュー

個人

2022.10.14


前回のVol 1では、MMOTというメソッドと4つのステップをお伝えしました。
■vol1はこちら
今回は、ふりかえりの技術、「ピクチャリング」についてご紹介します。
【ゲスト】田村洋一氏・森山 千賀子氏 ※プロフィールは詳細はこちら
【インタビュアー】
キャリアのこれから研究所所長・日本マンパワーフェロー 水野みち
【執筆】日本マンパワー ソリューション企画部 臼井文佳

ピクチャリング:映像を見るように振り返る

田村氏:ステップ2の振り返りで有効なのが「ピクチャリング」という技術です。これは、相手の話を、再現VTRを作るような気持ちで聞いていくことです。相手の話にそって事実を丁寧に聞き、頭の中に映像として映し出して会話を進めていきます。
言葉じりやうわべで理解するのではなく、言葉を映像として聞いていくという、ロバート・フリッツの生み出した技術です。具体的に映像でたどっていくという方法によって、同じ現実を上司と部下、あるいはそこにいる人たち全員が一緒に見ていくことができます。
同じ映画や小説の場面を一緒に見ていくかのように、同じ現実の場面を一緒に見ていく。それによって今まで見過ごしていたことや気がつかなかったことに次々と気づき始めるのです。現実に目覚めるプロセスと言ってもいいと思います。
水野:確かにアスリートが自分の競技中の映像を見返している場面というのはよく見かけますね。
田村氏:まさにその通りです。ビジネスの場面では、映像を撮っておくことはできませんが、上司と部下とで、ピクチャリングを意識して対話を行うことは可能です。

MMOTの効果や魅力について ~森山氏より~

水野:森山さんも、多くの場面でMMOTを実践されていると思いますが、MMOTの効果や魅力はどのようなところにあるとお考えですか?
森山氏:私がMMOTを最初に教わって思ったことは、自分が過去にやっていた1on1はすごく間違ったことをしていたとわかったことなんです。
まず私は、その時に起きたミスではなく、過去に起こったこととかその人がどういう人かということを話し始めてしまう傾向がありました。今起きたミスとそれ以外のことを混ぜて話すことがどれほど良くないことかを実感しました。
水野:確かに、やってしまいそうですね。その人の行動特性やパーソナリティ、それが生まれた背景とか、そんな話にいってしまう・・・例えば同じミスを繰り返す部下の場合、過去にも同じミスをしていたり、普段から少し注意不足の傾向が見られたりすると、そこと因果関係を結んで話してしまいたくなることもありそうです。
森山氏:そうなんです。ところが、MMOTの話の聴き方は、今起こっている現実について映像で話を辿っていきます。これが先程のピクチャリングの特徴です。こちらが勝手に過去のことと結び付けたり、相手が今ここで話していること以外のことを先読みして推測したり、次に何を言ってこの人を動機付けようかといったことを考えたりもしないんですね。
水野:純粋に、今目の前で起こった現実にフォーカスをするんですね。
森山氏:それでも上司の側も自分の思考の癖はありますよね。ついつい連想して考えてこういう言い方してしまうとか、この人とは仲良くなってからこの話をしようとか、いろんな習慣があると思うんです。だから話の聴き方一つとっても、練習したり訓練したりしないとできないことだなと思いますが、MMOTは私たちの思考の癖を矯正していくパワーを持っているんです。
水野:上司が見えている映像と部下が見えている映像を確かめ合う事で、上司が無意識に付け足してしまっている情報に気付けるんですね。
森山氏:それを一つ一つやっていくことによって、部下が本当に育っていくんです。部下の人格をどうにかしようとか、どうやってやる気を出させようかと思案するのではなく、今目の前のこのパフォーマンスについて部下が向き合って、成果が出せるようになるということを積み重ねていくだけで良いんです。私はこれまで本当に余計なことしていたなと思います。
水野:お2人がフォーカスされているのは、真実に焦点を当てる率直な関係性なんですね。上司と部下の関係性の中で、お互いに真実を言いにくくさせる要因は色々あると思います。ただ面談の場は、成果を上げるために率直に伝え合うと決めて安心安全の場を作る、無駄な遠回りをしない、そこがすごくポイントなのかなと思いました。今回のインタビューを通して、私たちは先入観やお互いへの遠慮等によって、いかにマネジメントを「難しいもの」にしていたかがよくわかりました。
まずは、現実と期待(目標)をお互い握り合うこと。ここを丁寧にすることでずいぶん後工程が変わりそうです。そして、ずれが生まれたら、そのこととすぐに、しっかり向き合うこと。そして、丁寧にピクチャリングでふりかえり、計画を立てる。これらを全部ごちゃまぜにして行ったり来たりすることのないように、ステップがある。まさにシンプルですが有効なメソッドだと改めて思いました。
このメソッドであれば、フェアな態度で部下と接することができ、心理的安全性も高まりそうです。また、キャリア支援や1on1の展開とも矛盾なく、マネジメントできそうです。
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■ゲスト
田村洋一(Yoichi Tamura)
組織開発コンサルタント
企業人教育、エグゼクティブコーチング、企業等組織へのコンサルティングにおける豊富な実践経験があり、多くの優れたパイオニアから学んだ経験を持つ。 特に構造力学と創造プロセスをロバート・フリッツから直接学び、他では得られない画期的なアプローチで社会人教育に取り組んでいる。ジェミニ・コンサルティング、野村総合研究所、シティバンクなどに勤務し、情報システム設計・構築、戦略コンサルティング、事業開発に従事、日本、欧州、アジア、アメリカ、アフリカで大小さまざまなプロジェクトのマネジメントや国際的ビジネスに参画している。2018年からはロバート・フリッツを日本に招聘し、日本における構造思考・創造プロセスの普及・発展に貢献している。2021年春からは小中高生向けのディベート道場も開催している。2002年からメタノイア・リミテッド代表。
上智大学外国語学部卒業、バージニア大学経営大学院修了(MBA)。クリエイティブな意思決定を体系化した著書Creative Decision Making をはじめ、専門分野を活かした著作・翻訳書多数。
森山 千賀子(Chikako Moriyama)
構造コンサルタント
2003年からロバート・フリッツの構造力学を学び、2021年から組織および個人に向けたコンサルテーションを提供している。日米欧の企業に勤務し、豊富なマネジメント経験を持つ。ビジネス会議運営、ビジネス交渉、チームマネジメントに長けている。ファシリテーションにおける観察力・分析力、コミュニケーションスキルに定評がある。現在はメタノイア・リミテッドにて社会人教育の企画・運営を行う。既存の知識や経験に縛られない発想や行動が特徴的。人や組織が生産的な仕事をするための仕組みを作って動かすことに喜びを覚える。現実にインパクトを与えるリアルなビジネスに関心が高い。

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