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リコー様の事例から学ぶ社員のキャリア自律支援 【前編】

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イベント

2023.1.13


2022年11月25日、イベント『リコー様の事例から学ぶ 社員のキャリア自律支援~体系づくりとキャリア相談室のポイント~』を開催しました。
ゲストは、リコーグループ全体のキャリア自律支援を担当されている上條様。リコーグループは、キャリアサポート室が2011年に発足する等、社員のキャリア自律支援に長年の実績があります。経験知が集約されたキャリアデザイン研修やキャリアサポート室の運用方法など、キャリア支援に関心のある方にとって有益なお話を多々ご紹介いただきました。
近年、人的資本経営の重要性が注目される中、社員のキャリア支援にご関心のある方も増えていることと思います。ぜひご一読ください!

〇イベントゲスト:
リコークリエイティブサービス株式会社
教育支援事業部 教育推進部 リコーキャリアサポート室 室長
上條昌彦(かみじょう まさひこ)様
〇イベントファシリテーター:(株)日本マンパワーフェロー 水野 みち
〇レポート執筆:(株)日本マンパワー マーケティング部 中村 裕

1、『自律型人材として活躍しよう』というトップからのメッセージ

リコーグループでは、事業環境の変化に対応し、ニューノーマル時代にふさわしい会社になるため、OAメーカーからの脱皮と、デジタルサービス会社への事業転換を進められています。この転換に伴い、人材戦略の大きな見直しや自律的キャリア開発の必要性が高まっていく中、2022年4月から「リコー式ジョブ型制度」が導入されました。

「リコー式ジョブ型制度」には3つの特徴があります。加えて、人事異動の柔軟性を持たせたり、中長期での人材育成も可能にしたりしている点が、一般的なジョブ型と異なるそうです。

<リコー式ジョブ型制度の3つの特徴>
①実力や意欲に基づく機動的な適所適材による登用
②ジョブに応じた柔軟な報酬制度
③職種を問わず専門性を追求するキャリアの実現
また、ジョブ型の導入に先駆け、2019年12月には、グループのトップから社員へ『自律型人材として活躍しよう』というメッセージが発信されました。この時のことを、上條さんは次のように話していました。
上條様 ※以下敬称略:自律型人材を一言で言うと、「自分で考え自分で動く」ということです。
自律型人材には、2つの側面があります。
1つ目は、自分の裁量で業務を組み立て、効率的なアウトプットを出す「仕事自律」。2つ目は、will-can-mustを考えて自分のキャリアを能動的に作っていく「キャリア自律」です。
仕事自律の先にキャリア自律がありますが、「キャリアの棚卸を行って、やりたいことを見つけよう」とトップが発信したのは、長いリコーの歴史の中でも初めてだったのではないかと思います。

2、リコーグループ キャリア形成支援の考え方

<リコーグループのキャリア形成支援の考え方>
・社員本人が自らのキャリアオーナー
・上司は社員のキャリア構築の支援
・キャリアサポート室は利害関係のない第三者として支援
続いて、上條さんから、リコーグループ キャリア形成支援の考え方をお話しいただきました。
上條:基本的には、社員自らがキャリアのオーナーという考え方です。社員本人が、自律的にキャリアを考える、それが第一にあります。
ただそうは言っても、キャリアを自分一人で考えることはなかなか困難でもあります。そのため、第二に、上司が関わることで社員のキャリア構築の支援をしていきましょうという考えがあります。
そして第三に、利害関係のない第三者として、また業務多忙な管理職を支えるために、キャリアサポート室が存在しています。

3、キャリアサポート室 ミッションと多様なメンバー

ここから、キャリアサポート室の取組みを紹介していきます。
2011年、様々なキャリア支援施策を統合する目的で、キャリアサポート室が発足しました。
●キャリアサポート室のミッション
社員の自律的なキャリア開発を支援し社員と組織の成長に繋げる
●キャリアサポート室の役割
キャリア開発の戦略や方針の立案
キャリア意識を向上させるための情報発信
キャリア開発に関する研修の企画や運営
節目や転機を意識した個別相談対応
当初はバーチャル組織からスタートしたそうですが、キャリアに関係する課題が増えてきたこともあり、2019年に正式な組織に。また、多様なメンバーから構成されていることが大きな特徴だそうです。
上條:キャリアサポート室では、キャリア相談を含むキャリア支援関連の業務を担っていますが、多様な経歴を持つメンバーで構成されていることが特徴です。本務のメンバーは3人。あと、社内副業(※)の制度を活用したメンバーが9名います。所属も設計開発や新規事業、営業、事業戦略、人事と多岐にわたり、マネージャー経験者も7名います。
多様な職種や経歴を持つメンバーがいることによって様々な相談に対応できます。また、マネージャー経験者はマネジメントスキル以外にも労務管理やメンタルなどの知識も持ち合わせ柔軟な対応も可能にしています。
※社内副業制度:社員本人と直属の上司、受け入れ先責任者の3者が合意すれば、就業時間の最大20%まで他部署での業務が認められる制度。社内のやってみたい仕事、テーマ、活動などへ本業と並行してチャレンジできる仕組み。2019年4月、リコー株式会社内でスタート。

4、キャリア開発支援 各施策と提供価値

リコーグループのキャリア開発支援では、社員の「①気付き」「②学習」「③行動変容」という3つの行動を基盤に、各施策が展開されています。
また、各施策を連携させて提供する、社員の成長・発達課題に合わせて提供することで、施策の効果を高め、個の自律にとどまらず組織の成長につなげていくことを目指されています。
①気付き:情報発信等でキャリア意識の醸成を図る
〈具体的な施策〉 キャリア関連情報を発信する「キャリアサポートポータル」、気軽に自分を見つめ直す「キャリCafe」等
②学習:キャリアプランの作成を支援する
〈具体的な施策〉キャリアデザイン研修・セミナー、E-learning<はじめてのキャリアデザイン>等
③行動変容: キャリアプランのブラッシュアップを手伝うなど、行動変容の実行を支援する
〈具体的な施策〉任意の「キャリア相談」、節目の研修後に実施する「イベント型面談」、キャリアデザイン研修後に必須で受ける「パーソナルサポート」等

5、キャリアデザイン研修 ~自分のキャリア課題に合わせ、手挙げ制で受講~

4で取りあげた「キャリアデザイン研修」は2020年に内容を変更、年代別から目的別へ、必須から手挙げ式にされたそうです。変更の意図について、上條さんは次のようにお話しされていました。
上條:2020年、従来のキャリアデザイン研修を一新しました。年代別だったものを目的別に変更したのです。
「転機の乗り越え方」や「活躍場所の見つけ方」など、自らのキャリア課題に合わせて、手挙げ制で受講できるように
しました。
また、キャリアプランを考える入口として、いつでも受けられるeラーニング「初めてのキャリアデザイン」を用意しています。
実は、2019年度までは、研修を必須型で実施してきました。ただ、課題もありました。例えば、受講生の期待と研修内容が合っていない、キャリア転機に対する悩みに対処できない、学生時代にキャリア教育を受けてきた学生が増えている、といったことです。
こうしたことを加味して内容を刷新しました。
また、キャリア相談へのハードルを下げることにも注力しています。今年2022年度は、比較的参加しやすいキャリアセミナーの実施に本格的に取り組みました。現在、セミナー1回あたり250~400名と参加者数も増え、手ごたえを感じています。

6、キャリア相談 ~人事部と組織課題を共有~

イベントでは、キャリア相談の運用等についても、沢山のお話がありました。一部をご紹介します。
上條:相談業務では、キャリアコンサルタント資格を持つリコー社員が1回60分担当します。仕事のみではなくライフキャリア全般、社内だけでなく社外での活躍を含めて、相談者の意向に寄り添います。アドバイス一辺倒にならず、気づきを促すような相談をしていこうというのが方針です。
相談件数は、2019年から徐々に上がっていて、今年度は600名程度の利用が見込まれています。相談の内容は、個人を特定できないようにした上で、組織の課題、年代別のキャリア課題としてまとめ、定期的に人事部と共有しています。

7、キャリア面談の効率化 ~予約システムの導入~

6でキャリア面談の利用者が増えているというお話がありました。そのため、現在は「予約システム」を導入され、業務効率化を図っているそうです。現在までに950名弱の社員がこのシステムを使って面談を実施されたとのことでした。
上條:キャリア面談では予約システムを使っています。キャリア相談を受ける社員側、受け手である人事側の両方にメリットがあり導入しました。
このシステムを使う前は、メール等で予約を受け付け、そこからキャリアコンサルタントをアサインし個別に日程調整、アフターアンケートも事務局から送り回収する、というようにすべて手作業でやっていました。
こうしたプロセスはたくさんの問題がありました。例えば、相談者自身がどんなキャリアアドバイザーが対応するのか分からず不安を感じる…、日程調整の手間がかかる…、メール対応したかどうか一つ一つ確認作業が生じるなど…
業務管理システムを入れることで業務の一元管理、相談枠の事前設定、キャリアアドバイザーのプロフィール公開、相談者が自分の好きな枠で自分に合いそうなアドバイザーを選択できる、日程調整の手間がかからない、アンケート依頼のリマインドメール自動配信機能など、かなり業務効率が上がりました。

8、キャリア相談室設置のポイント

最後に上條さんから、キャリア相談室設置のポイントを3つお話しいただきました。
上條1つ目は「提供価値」を考えることだと思います。キャリアサポート室として、どんな人にどんなものを提供したいのか、そのことによって企業組織にとってどんな価値が生まれるのということをまず明確にするのが大事だと考えています。
2つ目に「キャリア相談のハードル」をいかに低くするかということです。いくら仕組みを作ってキャリア相談できますよ、どんな悩みもお聞きしますよといっても、なかなか利用してくれないこともあります。もっとキャリアという言葉を身近に考えて、キャリアを考えるハードルを下げる必要があると思っています。
3つ目は、キャリアアドバイザーのスキルです。資質も必要ですし、資格を取ったから面談できるわけではなく研鑽も必要です。世の中の変化に応じてキャリアアドバイザーもそれに対応していくことがとても大切です。キャリアアドバイザーのばらつきをなくし品質を担保すること、そして面談プロセスを理解したうえで相談に乗ることが大切です。
イベントでは、そのほかにも、キャリア面談が我流にならないための「キャリアコンサルティングスキル向上」の施策など、たくさん情報提供いただきました!
続くイベントレポート後編では、参加者と上條さんの質疑応答内容をご紹介していきます。
■イベントレポート後編は、こちら
イベント終了後の記念撮影にて。
(左)リコークリエイティブサービス株式会社 上條様 (右)日本マンパワー水野
「全社員のキャリア自律支援」「キャリア相談機能の設置」について、日本マンパワーでまとめた資料をご用意しております。ご興味のある方は、ぜひ下記からダウンロードください!
★ご紹介資料 全社員のキャリア自律支援
★ご紹介資料 キャリア相談機能の設置