2023年1月31日、イベント『サッポロビール様の事例から学ぶ 社員のキャリア自律支援~自分のキャリアは自分で切り拓く~』を開催しました。
ゲストは、サッポロビールのキャリア自律支援を担当されている小山様。
サッポロビールでは、2010年から社内キャリア相談をスタートされ、2012年には「自分のキャリアは自分で切り拓く」という人財育成ビジョンを掲げられて、さまざまなキャリア支援施策を実施、継続されています。様々な施策を展開される中で、社内への情報発信や告知に工夫を凝らされている事例など、社内のキャリア支援に関心のある方々にとって参考となるお話をたくさんいただきました。
社員のキャリア自律をテーマに取り組まれている企業にとって、従業員の認知度をどのように上げて、施策を浸透させるかは、常に大きな課題になっているかと思います。ぜひご一読ください!
【イベントゲスト】
サッポロビール株式会社
人事部 キャリア形成支援グループ
マネージャー 小山祐介(こやまゆうすけ)様
【イベントモデレーター】
株式会社日本マンパワー
マネジメントコンサルタント 秋本暢哉
【レポート執筆】
株式会社日本マンパワー ソリューション企画部
黒田留以
目次 *クリックすると、各章にジャンプします
1.「自分のキャリアは自分で切り拓く」という人財育成ビジョン
小山様(以下敬称略):「サッポロビールでは、『自分のキャリアは自分で切り拓く』という人財育成ビジョンを掲げています。これは、2012年から継続的に打ち出していまして、キャリア自律という言葉も最近かなり聞くようになりましたが、当社では割と早くから言っていたのでは、と思っています。また、このビジョンの実現に向けた私たちの約束事として、以下の3つを掲げています。」
自分のキャリアは自分で切り拓く
①ひとりひとりが自己実現への物語を描けるように支援します。
②自らの意志で選択できる施策や、部門や部署を越えてお互いに教え学び合い、切磋琢磨し合う施策を提供します。
③学び・気付きがそれぞれの現場で実践され、成果につながる機会を創出します。
②自らの意志で選択できる施策や、部門や部署を越えてお互いに教え学び合い、切磋琢磨し合う施策を提供します。
③学び・気付きがそれぞれの現場で実践され、成果につながる機会を創出します。
2.“人財”に関する課題
小山:「以下の3つを主なサッポロビールの人財に関する課題ととらえていました。」
サッポロビールの“人財”に関する課題
(1)社員の高年齢化、高い継続雇用率
(2)新人事制度、ポストオフ導入
(3)年代別の悩み、若手~中堅の課題
(1)社員の高年齢化、高い継続雇用率
(2)新人事制度、ポストオフ導入
(3)年代別の悩み、若手~中堅の課題
小山:「まず、(1)社員の高年齢化、高い継続雇用率についてですが、継続雇用率が高いこと自体を問題視してはいないのですが、継続雇用率が高いということは当然年齢が高い社員がどんどん増えていくことですので、社員における50代、60代の比率が高くなっていくことを前提にさまざまな制度や施策を整えていく必要がある、ということです。
(2)新人事制度、マネジメント職務における任免ルール(以降「ポストオフ」と表記)導入については、2020年に人事制度を改定しまして、未来に向けた挑戦を引き出すために、管理職が管理型から支援型になることであったり、変化に対応できるスピード感を重視するであったり、こちらも様々な施策に紐づいていっています。
なかでも、ポストオフを新規に導入したことは、実際にポストオフを経験する本人たちに大きな影響を及ぼしていまして、マネジメント職務終了後に向けた準備をどうしてもらうかであったり、キャリアの課題にどう支援をしていくかであったり、等の課題がありました。マネジメント職として会社への影響が大きいポジションで、高いパフォーマンスを発揮していた人たちが、モチベーションが下がって機能しなくなってしまうと、マイナスのインパクトがとても大きく、周囲への影響も大きくなります。今後、対象となる社員が確実に増えていくことがわかっているので、なんとかしなければいけない、という課題感を持っています。
最後に(3)年代別の悩み、若手~中堅の課題ですが、実際に社員は何を考えていて、何に悩んでいるのかを1回きちんと明らかにしたい、という話になりました。アンケートを実施したところ、1500人弱ぐらい、全体の65%ぐらいの社員が回答してくれ、各年代の課題が明らかになりました。そこから、年代別でキャリア研修を実施していくような、キャリア自律支援の施策体系が必要だという話になり、整備していきました。」
3.キャリア自律支援の取り組み
小山:「ここからは、実際の打ち手について話していきます。」
打ち手(1) キャリアWebサイト導入
打ち手(2) 既存ツールの活用
打ち手(3) キャリアカイタク研修
打ち手(2) 既存ツールの活用
打ち手(3) キャリアカイタク研修
小山:「1つ目のキャリアWebサイトは、日本マンパワーさんが提供しているキャリアに関する情報などが詰まったツールで、これを導入しました。自分のキャリアについて考えるのが大事だとわかっていても実際にはどうやったらいいのか分からないという人も多いので、統一のガイドになると考えました。ていねいにシンプルにまとまっていて、Q&Aなどの実際のセルフワークのシートなども用意されているツールとして導入しています。
ただ、導入しただけですと見ない人も多いと考えまして、周知と活用促進のために、管理職向けの30分のオンラインの説明会を複数回、実施し、半分以上の管理職の方に来てもらいました。説明会はアーカイブも公開しています。また、社内のキャリア研修や中途入社向けの研修でも、キャリアWebサイトを活用しています。
2つ目は、今まで使っていたツールを改めて活用するようにしています。
1つは『マイキャリアマップ』というものです。100名以上の社員に自己紹介やどんな仕事をしているか、入社後から今までの経歴、その都度どんな気持ちだったか、どんなことが得られたかなどを書いてもらい、これをイントラ上で見られるようにしています。
1つは『マイキャリアマップ』というものです。100名以上の社員に自己紹介やどんな仕事をしているか、入社後から今までの経歴、その都度どんな気持ちだったか、どんなことが得られたかなどを書いてもらい、これをイントラ上で見られるようにしています。
もう1つは『ミッショントーク』というツールです。社内の全ての部署に、自部署の紹介をしてもらっています。部署のミッション、魅力、求める人財像(マインドやスキル)を公開することで、自身のキャリア選択に活用してもらえる情報提供ツールとなっています。
3つ目の打ち手は、『キャリア研修』です。自社の「カイタクしよう」という行動規範にもとづいて、キャリアカイタク研修という名前にしました。ポストオフ後・定年退職後への備えが喫緊の課題であったことから、50代前半(53歳役職者必須)と50代後半(58歳必須)の研修から導入し、その後20代(26-7歳公募)、30代(30代前半公募)、40代(43歳必須)まで拡大しています。
研修実施後のアンケートでは、各研修とも80%以上の方が「キャリアを考える機会として有効だった」と回答しています。また、「自分では気づかなかった強みをフィードバックしてもらって自信がついた」、「同年代の仲間とのグループワークで多くの気づきを得られた」などの声も多く得られています。
今後、内容をブラッシュアップして継続して実施していきたいですし、継続して実施していくことが重要だと思っています。
今後、内容をブラッシュアップして継続して実施していきたいですし、継続して実施していくことが重要だと思っています。
4.キャリアサポート制度
小山:「2010年から社内キャリア相談として、キャリアサポート制度をスタートさせています。1時間ぐらいの面談を希望者に対して実施をするというものです。人事部とは別組織であるキャリアサポート事務局(小山さん含めた3名)が運営し、キャリアサポーター15名が本来業務との兼務で社員の相談対応にあたっています。
課題として、多くの社員にもっと気軽に利用してほしいなというのがありました。今日はその課題解決のために行った2022年の取り組みを少しご紹介させていただきます。
1つはターゲット層を決めて、期間を区切って面談をするというものです。
事務職から総合職に転換した方、新任のマネジメント職、入社2年目社員などをそれぞれターゲットにして、期間を決めて、「秋の集中面談」というような感じで、申し込みの専用のサイトも立ち上げて実施しました。
また、管理職向けにこの制度の説明会を30分ほどで複数回実施し、400人以上の方に参加してもらいました。これは、結果としてマネジメント職からメンバー層へキャリアサポート面談を推奨してくれることにつながり、22年の相談者は21年の倍になりました。
事務職から総合職に転換した方、新任のマネジメント職、入社2年目社員などをそれぞれターゲットにして、期間を決めて、「秋の集中面談」というような感じで、申し込みの専用のサイトも立ち上げて実施しました。
また、管理職向けにこの制度の説明会を30分ほどで複数回実施し、400人以上の方に参加してもらいました。これは、結果としてマネジメント職からメンバー層へキャリアサポート面談を推奨してくれることにつながり、22年の相談者は21年の倍になりました。
5.成果と今後の方向性
小山:「自分のキャリアは自分で切り拓くということで様々な施策を展開していますが、社員に対してただ『意識を変えてよ』っていうだけでは、意識は変わらないと思っています。会社の風土や職場の環境、上司、仲間、人事制度や会社の支援などをきちんとやっていかないと根付かないですよね。
そのために、心理的安全性の推進には、近年一生懸命取り組んできました。また、1on1の質的向上のための支援であったり、相互フィードバックと呼んでいる、社員がお互いに「あなたのこういうところがいいですよ」とか、「もっとこういうところを伸ばせますよ」といったフィードバックをしていく仕組みを展開しています。
こうした取り組みは、2020年のプラチナキャリアアワードの優秀賞を受賞した際の記事でもお話しています。また、心理的安全性アワード2022年のシルバー賞も受賞しています。従業員意識調査にて、「キャリアに役立つ教育が行われている」、「将来の進路を考えて人事管理が行われている」などのスコアが上がってきていて、今までお話ししてきた様々な取り組みも影響していると思っています。
今後の課題と取り組みの方向性としては、まず私たちが用意しているさまざまな施策やツールについて、認知度や活用度を高める取り組みを継続していきたいです。
2023年~26年の中期経営計画の人財戦略では、あるべき姿として「多彩な“らしさ”を輝かせ 未来をカイタクする イノベーション集団となる」を掲げています。
多彩な“らしさ”を輝かせるために、まずは自己理解の促進が必要だと思っています。自分を理解したうえで、さらにコミュニティの中できちんとしたコミュニケーションが生まれることによって、相互理解が進み、支え合い学び合い高めあうことによって自分のキャリア実現につながっていくのではと思っています。
多彩な“らしさ”を輝かせるために、まずは自己理解の促進が必要だと思っています。自分を理解したうえで、さらにコミュニティの中できちんとしたコミュニケーションが生まれることによって、相互理解が進み、支え合い学び合い高めあうことによって自分のキャリア実現につながっていくのではと思っています。
弊社の経営理念には、『お客様に「サッポロビールを選んでよかった」と言われる企業でありたい』という一文があるのですが、私はサッポロビールの社員が、『サッポロビールを選んでよかった』、『サッポロビールで働いてよかった』と思える企業になれるといいなと思っています。引き続きその姿を目指して、2023年以降も取り組みを進めていきたいと考えています。」
後編は、こちら
「全社員のキャリア自律支援」「ミドル・シニア社員のキャリア支援」について、日本マンパワーでまとめた資料をご用意しております。ご興味のある方は、ぜひ下記からダウンロードください!
★全社員のキャリア自律支援 ご紹介資料
★ミドル・シニア社員キャリア支援の考え方とポイント ご紹介資料
大学で臨床・社会心理学を専攻。営業、教材制作、調査研究等を経験し,現在企画開発部門マネジャー。
趣味は、ダイビング、写真、ラグビー観戦、演劇(演じる方)など
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