ますますグローバル化が加速するいま、キャリアコンサルタントをはじめとするキャリア支援者にもグローバルリテラシーが求められます。でも、それをどのように身に付けたら良いのかわからない・・・。そうした課題に応えるワークショップが去る4月15日(日本時間)に開催されました。
主催したのは、日本キャリア開発協会(JCDA)。同協会は一昨年、会員が2万人に達したことを期に、会員内に閉じず様々な境界を越えて繋がるこれからのコミュニティのありたい姿を「人の可能性を信じるヒューマン・ウェブ」と定め、その想いを多様なステークホルダーと共有するワークショップを開催して来ました。そして今回、「グローバル」というテーマのもと、パートナーでもあるアジア太平洋キャリア開発協会(APCDA)との共催にチャレンジしました。
本稿では、この海外のキャリア支援者も参加したこのイベントの中で、どのようなことが語られ、参加者にどのような変化・気づきをもたらしたのかをレポートいたします。
日本キャリア開発協会(JCDA) https://www.j-cda.jp/
アジア太平洋キャリア開発協会(APCDA) https://apcda.wildapricot.org/
目次 *クリックすると各章にジャンプします
1.“地球市民(Global Citizen)”という概念
開催されたワークショップのタイトルは「『物語ワークショップ』-グローバルへ。翼を広げるヒューマン・ウェブ(英文タイトル:JCDA/APCDA Workshop:Career Construction Theory and the Human Web)」。このワークショップはサビカス博士が提唱するキャリア構成主義の理論に基き、「これまで」「いま」「これから」の3つのテーマで参加者同士のナラティブが紡がれる構成となっています。
当日は、日本を含む全7カ国、28人のキャリア支援に携わる人たちが参加しました。JCDA大原良夫理事長とAPCDA浅賀桃子理事長による開会の挨拶で幕を開け、続いて行われたのは、日本とアジア太平洋、両協会の活動を理解するAPCDA/JCDA双方からのインスピレーショントーク(基調講演)。
APCDAからは、全米キャリア開発協会(NCDA)でも大きな功績を残されたExecutive DirectorのDr.Marilyn Mazeさんが登壇。協会の活動概要や開発したメソッドについて紹介する中で強調されたのは「ある国の相談者が抱える問題は、他の国の相談者が抱える問題と驚くほど似通っている」こと。そして、国を越えたキャリア支援者の在り方として“地球市民(Global Citizen)”という概念を提案しました。
「APCDAは地球市民であることに価値を見出しているカウンセラーが集まっています。本日ここにいる私たちは地球市民として必要なスキルを大切にしており、そのスキルの向上のために今ここにいることに気持ちが高鳴っています」
そしてJCDAからは佐々木好(よしみ)事務局長が、協会の概要や歩みと共に、会員1万人記念大会で立野会長が発表された理念(共に生きる)について紹介されました。そこには、このような一文があります。
「人も、お金も、情報も国境を越えて様々(さまざま)な国の様々な人に伝わります。経済をはじめとした様々な社会活動は、その国一国で完結されるものではありません。アジアの国々と「共に生きる」日本、世界の国々と「共に生きる」日本であり、お互いに支えあい、受け入れあい、共に生きる時代です」。
2.「言葉の壁」を超える
お二人の講演の後は、いよいよワークショップへ。グループに分かれて、まずは自己紹介と共に「これまで:キャリア支援に携わることになった動機」について紹介し合いながらラポールの形成。場が温まったところで、続く対話のテーマは「いま:キャリア支援をする上で、現在、自分が案じている課題や悩み」。国・文化や活動の領域が異なる者同士が自己開示をしたりアドバイスをし合ったりすることで、思いもしない気づきが生まれました。そして、日本人グループと非日本人グループに分かれての気づきのシェアを挟んで、一人ひとりが「これから:自分はこんなキャリア支援者になりたい!」宣言でワークショップは閉幕となりました。
このワークショップの大きなチャレンジのひとつは「いかに言葉の壁を超えるか」。
「グローバルへの興味がありリテラシーを高める必要性はわかっているが、言葉の壁があって踏み出すきっかけがつかめない」。主催者であるJCDA事務局は、そんな悩みを抱える方々にこそ参加して欲しいという思いから、言葉の壁を低くするための様々な工夫を凝らしました。そのひとつが、通訳を兼ねるグループワークでのファシリテーター制度。海外に住まわれた、あるいはグローバル企業でお勤めをされた経験を有する12名の方々が自ら協力を名乗り出ました。この強力な助っ人軍団の献身的なサポートによってワークショップは参加者に大きな学びを提供するものとなりました。それを証明するように、開催後のアンケートには以下のコメントが寄せられました。
「自分の身の回りの課題が他国でも同じように問題になっていること、他国ではキャリアコンサルタントが日本よりは知られているということを聞き、自分の今後の活動へのビジョンを持てたこと、自分の夢に他国の方から“素晴らしい”と言ってもらえたことで、活動のモチベーションアップに繋がりました」。
「アメリカ、中国、日本の3カ国間の違いや課題、AIの発達により想定されるキャリアの変化など、想定以上の興味深いテーマについて話し合うことができました」
「対立ではなく相互理解で解決する視点は万国共通だと感じました」
このように、海外からの参加者との対話ならではの学びや気づきのあった本イベント。後編では、文中にもあった通訳も兼ねたファシリテーターを担当したお二人に、ワークショップの中で語られたことや気づきについて、具体的に伺います。
キャリアのこれから研究所プロデューサー。美大の大学院に飛び込んで
自ら創造性の再開発を実験中
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