今回は、子どもたちが、プログラミングやデジタルなものづくりにふれる機会を創出しているMinecraftカップに携わっている栗原咲子さんにインタビュー。
後編では、地域と連携する教育のあり方などについて伺いました!
■前編はこちら
後編では、地域と連携する教育のあり方などについて伺いました!
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■お話を伺った方
栗原咲子さん(Minecraftカップ運営委員会事務局プランニングリーダー)
■インタビュー・記事執筆
海野 千尋(キャリアのこれから研究所メンバー・NPO法人ArrowArrow代表)
栗原咲子さん(Minecraftカップ運営委員会事務局プランニングリーダー)
■インタビュー・記事執筆
海野 千尋(キャリアのこれから研究所メンバー・NPO法人ArrowArrow代表)
目次 *各章にジャンプできます
1.Minecraftは、教育の現場でどう活用されているのか
―――Minecraftは教育現場でどのように取り入れられていますか?
栗原さん(以下敬称略):Minecraftカップで推奨している教育版Minecraftは、プログラミング教育・情報教育・協働学習などに役立つものです。また、技術の進展により社会が激しく変化していく中、社会課題解決のために文部科学省が重視しているSTEAM教育(※)にも、おおいに活用できます。
※STEAM教育 科学、技術、工学、芸術、数学の5つの領域の学習を実社会での問題発見・解決に活かしていくための教科横断的な教育
*写真はイメージです
現在、文部科学省が進めているGIGAスクール構想の影響もあり、教科横断的な学習やクラブ活動などで、Minecraftが活用される機会が増えてきました。このGIGAスクール構想は、2019年に始まったもので、2023年度末までに、全国の小中学校で、子ども1人に1台ずつパソコン端末を用意、合わせて通信ネットワーク環境を整備し、学校のICT化を進めるというものです。
しかし、ハード面は整いつつあるものの、どう活用するかソフト面で悩んでいるとの声も、学校関係者からお聞きします。現在、GIGAスクールサポーター・ICT支援員など外部の方々と協力しながら、試行錯誤している状況のようです。
学校現場での実際の取組みで、うまくいっている事例を1つご紹介します。
ほかの学校でも参考になりそうな事例です。
ほかの学校でも参考になりそうな事例です。
*写真はMinecraftカップHPから転載したものです
鹿児島県垂水市の新城小学校では、郷土教育にICTを取り入れる教育活動を展開されています。これまでも取り組んできた景観学習の最終目標を「未来の新城の街づくり」とし、SDGsの観点から探求したことを、マインクラフトで作る未来の街に活かしています。そして、完成したものを保護者や地域に発表したり、他校とのオンライン交流で発表したりしています。
このような取り組みを後押しするため、Minecraftカップの事務局でも、学校の先生方向けにワークショップを行っています。
また、Minecraftの教育的効果をまとめた報告書を各自治体の教育委員会に送ったりもしています。Minecraftを通じて、STEAM教育の現場でもっと貢献していけたらと願っています。
また、Minecraftの教育的効果をまとめた報告書を各自治体の教育委員会に送ったりもしています。Minecraftを通じて、STEAM教育の現場でもっと貢献していけたらと願っています。
2.Minecraftを通じて、学校と地域リソースをつなげる
―――今、教育の現場で、外部協力者も増えてきているんですね。
栗原:プログラミング教育について、学校の先生だけでは十分に手が回らないので、地域の方に協力いただいているケースも増えてきているようです。
沖縄県名護市立稲田小学校パソコンクラブの事例を紹介します。
沖縄県名護市立稲田小学校パソコンクラブの事例を紹介します。
*写真はMinecraftカップHPから転載したものです
この稲田小学校では、子ども達から「Minecraftをやりたい!」という声が挙がったものの、担当の先生はMinecraft初心者。そこで地元のCoderDojo名護に相談し、Minecraft Cupに応募するための作品づくりをサポートしてもらったそうです。
クラブ活動の初回は、先生ではなく、Minecraftに詳しい子が教師役をつとめ、掘る・ブロックを出すといった基本動作を学んだという微笑ましいエピソードも伺いました。
また、同小学校では、CoderDojoの例に限らず、地域住民の方が、学校運営に参画するコミュニティスクール構想も進んでいるそうです。
また、同小学校では、CoderDojoの例に限らず、地域住民の方が、学校運営に参画するコミュニティスクール構想も進んでいるそうです。
―――稲田小学校のように、学校と地域のCoderDojoとの連携は、他の地域でも進んでいるのでしょうか?
栗原:そうですね。私たちMinecraftカップは、地域のCoderDojoやプログラミング教室の運営者、学校の先生、関心のある保護者たちが自由に情報交換できるオンラインコミュニティを作っています。熱心に取り組まれている方と出会う機会も多く、そういった方々を、学校や自治体にご紹介させていただいています。
「子どもたちにプログラミングの楽しさを伝える」という同じ志があるもの同士がつながることで、お互い活性化すると思いますし、今後も学校と地域リソースをつなげる取組みは続けて、増やしていきたいですね。
3.地域との連携事例
―――Minecraftに関わる大人たちの連携によって、良い影響が出ているんですね。他にも何か地域との連携事例があれば教えてください。
*富山市 景観まちづくりワークショプの写真。MinecraftカップHPから転載
栗原:富山市での取り組み事例をご紹介します。
富山市からオファーをいただき、駅前を歩きたくなるアイデアをMinecraftで作るというワークショップを開催しました。
富山市からオファーをいただき、駅前を歩きたくなるアイデアをMinecraftで作るというワークショップを開催しました。
ワークショップ当日は、景観まちづくり課の職員さんから景観の概念について講義をしてもらったり、実際にみんなで駅前の公園を歩きながら景観づくりのポイントを教えてもらったりしました。そして、そこから考え出したアイデアをMinecraftで作りました。このワークショップは、応募者数が定員の10倍以上に達し、大変好評を博したワークショップでした。
また、Minecraftを使って学ぶ機会をもっと作ろうと、富山市の「未来共創」交流スペーススケッチラボとCoderDojo富山が連携をして、Minecraftカップ出場に向けた仲間づくりと作品づくりの機会も作りました。
どれだけオンラインでつながれる時代になっても、子どもたちにとっては住む地域で実体験できることがその後につながります。大好きなMinecraftに取り組めて、真剣に、でもとても楽しそうな表情は印象的です。
こうした事例をきっかけに、地域全体で子どもたちを応援する気運も高まってきています。
こうした事例をきっかけに、地域全体で子どもたちを応援する気運も高まってきています。
4.未来の仕事&読者へのメッセージ
―――今後、未来の働き方はどのようになっていくとお考えですか?
栗原:私たち大人は、「AとBは別分野で繋げられない」と縦割りで考えてしまいがちですが、子ども達はとても柔軟です。Minecraftで子どもたちを見ていると、彼らの中では全てが一緒の大きな枠組みの中に入っていて「本当に良い!誰かのためになる!」と思っているものだけを、ピッと掬い取って表現している印象を受けます。
将来、思いもよらないものをつなげるコネクターとかトランスレーター(翻訳者)など、新しい枠組みの職業も出てくるのではないかと思います。
―――最後に「キャリアのこれから」を考える皆さんへのメッセージをお願いします。
取材時の栗原さん
栗原:私は会社員をしながら、NPOの活動をする働き方をずっとしてきました。そこで気づいたのは、会社の評価軸が全てではないこと、また活躍する場所はいくつもあるのではないかということです。
同じ人間でも、場所を変えることで、違った自分の才能や強みが発揮できるのではないかと思っています。
同じ人間でも、場所を変えることで、違った自分の才能や強みが発揮できるのではないかと思っています。
今、時代の後押しで副業する人も増えてきました。また、NPO活動だけでなく、地域活動、PTAなどで頑張る経験もとても素晴らしいものだと思います。
必ずしも収入を得る形でなくとも、別の世界に足を踏み入れてみることで、新しい世界が広がります。
必ずしも収入を得る形でなくとも、別の世界に足を踏み入れてみることで、新しい世界が広がります。
また、複数の場所に身を置く中で、場所が変わっても変わらないもの(価値観など)も発見できるかもしれません。私自身は、支援する対象が社員であっても子どもであっても、それぞれの特性をうまく引き出したり、生かしたりする場を作ることを大事にしたいと思っていることに気がつきました。自分の活動の軸として大事にしています。
そんな風に、自分の居場所を複数持つことが、その人の暮らしや人生を豊かにするのではないかと強く思っています。
働き方・働くことに関する企画・編集。NPO法人ArrowArrow代表。複数の場で「働く」を実験中。
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