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キャリこれ

キャリコンスキルを人事以外でも活用するために ~企業事例:1on1から組織風土改革まで~ (後編)

イベント

2024.5.28


2024年2月21日(水)、新たなアプローチで企業内キャリアコンサルタント資格取得を推進し、そのスキルを有効活用されている企業事例紹介のイベントを実施いたしました。ご登壇いただいたのは、出光興産株式会社キャリアデザイン部の山本義之様および山崎正憲様、キリンアカデミア事務局の森美江様です。皆さまのさらなる施策展開に向けて、ぜひご参考にしていただければ幸いです。
〇登壇者
出光興産株式会社
キャリアデザイン部 キャリアデザイン課
山本 義之 様
山崎 正憲 様
キリンアカデミア事務局
森 美江 様
〇司会
株式会社日本マンパワー
坂室 繁

3.【キリンアカデミア様の事例】
キリンアカデミアの紹介と
社内にキャリコンを増やす取組みについて
○登壇者
キリンアカデミア事務局
森 美江 様

(1) キリンアカデミアの概要
 キリンアカデミアとは、キリングループの企業内大学の名称です。2015年に入社した4人が、2019年1月に非公式の有志活動としてスタートしました。会社主導ではなく、若手社員が自主的に立ち上げたものです。私は2021年に事務局として参画しました。
 キリンアカデミアのビジョンは「挑戦風土」です。キリングループには多様なメンバーがいますが、若手・ベテラン、本社・地方問わず交流し、学びを共有する場を提供することで、日々の業務でも長期的なキャリアデザインでも挑戦できる風土を作っていきたいという想いを込めています。
 大切にしていることは、「視座を高めたい」「視座を広げたい」という2点です。前者は「仕事の責任感を感じてみる」、後者は「外を見て危機感を感じてみる」ということです。自分たち自身がわくわくするアイディアを企画して実現したいとの想いで、このような価値観を持っています。
 現在の運営メンバーは14人です。当初は4人でしたが、5年経ってここまで増えました。若手から役員まで、年齢も職種も多様なメンバーで構成しています。
 なお、2023年には企業内大学らしく学部制を導入しました。イノベーション学部、キャリア学部、つながり学部の3学部があります。

キリンアカデミア運営体制

(2) キリンアカデミアの活動内容
 2022年の活動実績をご紹介します。
セミナーやワークショップなどのイベントを26回、平均で月2回以上開催しました。
さらに持ち込み企画もあります。運営メンバー以外の社員が「やってみたい」「発表してみたい」という企画が13本もありました。実際に、「フェムテック」「アンガーマネジメント」「時間管理術」などのイベントを行いました。
参加希望の応募総数は延べ3,740人です。これは全グループ社員の約19%に上ります。
 活動実績のうち、私が企画・運営をしたキャリアセミナーを一部抜粋してご紹介します。
・片付けパパに学ぶ「キャリアの整え方」
・最先端キャリア理論“プロディアン”で未来を切り拓く
・会社を辞めない起業
・パラレルキャリアを加速させる6つのアプローチ
・キャリアの新常識!プロが語る最先端のキャリア形成・働き方とは?
・“「働かないおじさん問題」のトリセツ”の著者に訊く
70歳就業時代のキャリアデザイン
・「サラリーマン」から「ローカルプレナー」へ!
・“変わるチカラ”の見つけ方。
 アカデミアのイベントへの参加者は、図のように全世代に広がっています。
 2020年には入社10年以内の23~33歳が一番多くを占めていましたが、2022年には46歳以上のミドルシニアが46%を占めています。入社年度でみると、90年代入社の参加比率が最も多い状況です。そもそもは若手社員のために作った企業内大学ですが、今ではミドルシニアまで浸透しています。

キリンアカデミア参加者推移

 こうした活動が認められ、日本経済新聞社が運営するウェブメディア「日経リスキリング」の取材を受け、記事にしていただきました。「若手4人のモヤモヤからキリン大学 シニアも巻き込む」というタイトルです。ぜひご参照ください。
 また、約50の企業内有志団体が集う実践コミュニティ「ONE JAPAN」主催の有志活動総選挙で、キリンアカデミアがグランプリを受賞しました。私も個人部門でMVPをいただきました。

(3) 社内にキャリア支援者を増やす取組み
 なぜ、私がこうしたキャリアセミナーを企画するようになったかについてお話しします。
 まず、キャリアコンサルタント(以下「キャリコン」という)資格を活かした会社貢献をしたいと考えたからです。私は2016年にキャリコン資格を取得しましたが、当時は企業内キャリコンで成功したロールモデルが少ないと感じていました。そのため、何かしら参考になるような成功事例を作りたいと考えていました。
 そうした中で、社内の「50歳のキャリアセミナー」でグループディスカッションがありました。その場で、ある男性社員が「この会社で60歳を過ぎて働くのは結構辛いぞ」と言いました。そうしたら別の男性も「やっぱりそうか」という旨を発したのです。私は「いやいや、いい会社ですよ」と思いながら聴いていましたが、「じゃあ、定年退職したらどうですか?」「いや、そういうわけにもいかないんだ」という流れで話が進んでいきました。
 その後、折に触れてこの会話が思い浮かび、「あの人たちはなぜあんな発言をしたのだろう?」と考えました。そして、「会社の中の世界しか知らないのではないか」「キャリアの選択肢がほかにないからではないか」という仮説を立てました。そうであるならば、外の世界を見てキャリアの選択肢を増やしてもらえばいい。そういう想いでセミナーを開始したのです。
キリンアカデミア森美江様
キリンアカデミア事務局 森 美江 様
 また、2021年からキリングループを対象にキャリコン養成講座の説明会を開催しています。
 当時、会社の業績が悪く、社内に閉塞感があるように感じられました。みんな一生懸命がんばるのですが、なかなか成果につながっていませんでした。そうした状況下で私は「なんとか風穴開けられないか」と思いを巡らせていました。
 そこで思い出したのが「V10推進プロジェクト」です。これは、キリンビールが2001年にビールシェアで首位を明け渡したことをきっかけに、社内の風土改革のために始まったプロジェクトで、コーチングを導入して風土改革につなげました。逆に考えれば、コーチングが自律的な風土醸成に有効であることを証明しました。
 「V10推進プロジェクト」成功のポイントは2つあります。1つは、4年間で400人と、大規模にコーチを増やしたこと。もう1つは、人事が強制的に研修やコーチ指名を実施したのではなく、手挙げで募集するなど社員の自主性を尊重しながら実施したことです。
 その時のコーチたちがまだ会社に残っていて、コーチングスキルが社員にあるため、キャリコンとの親和性が高いのではないか。また、ダブル資格で相乗効果が生まれるかもしれない。そう思いつき、キャリコン養成講座説明会を開催するに至りました。
 説明会開始からの3年間で44人の養成講座申し込みがありました。なぜ、これほどの申し込みがあったのか、個人的な推測をお話しします。
キリンアカデミア森様2
 まず、2022年に人事の基本理念で「自律的なキャリア形成」が打ち出されたことが、大きいと思います。そこには「自らのキャリアに責任を持ち、競争力のあるプロ人材として、絶えず学習し、専門性を高める」と書かれていました。
 人事の皆さんは違和感なく受け止められるでしょうが、当時の現場リーダーたちは非常に困惑していました。実際にヒアリングしてみると、たとえば「今まで自分のキャリアは会社(人事)が決めてくれると思っていたのに……「自分のキャリアさえ考えたことがないのに、部下のキャリア育成なんて無理」などの声が聞かれました。

 一方で、「何から手をつけていいかわからないのでとりあえず養成講座の説明会に来たら、キャリアについて体系的に学べることを知ったので、すぐに申し込みます」という社員もいました。同じように「自律的なキャリア形成」に影響を受けた人がいるのではないかと思います。

 参考までに、その時(2022年1月)のキャリコン養成講座説明会のアンケート結果をご紹介します。
 申込者は184名。年代は40~50代で6割以上。30代も20%以上いました。所属会社は、キリンホールディングスとキリンビールを合わせて6割以上でしたが、非常にさまざまな会社から参加していただきました。参加した感想は「満足」「ほぼ満足」が7割以上を占めています。
 参加の目的は、「社内で活かしたい」「社外で活かしたい」「自己啓発に活かしたい」の3つに大別することができます(下表参照)。具体的には、「部下や同僚のキャリア支援をしたい」「部内の組織開発に活かしたい」「将来人事の仕事をしたいので取っておきたい」「管理職になったときのために取っておきたい」「自分のキャリアの可能性を知りたい」「自分のことについて知りたい」「キャリアコンサルタントの資格で何ができるかを知りたい」などの声がありました。

キリンアカデミア説明会アンケート結果

 日本マンパワーさんにもご協力いただき、これまでに説明会を4回実施しました。初回は参加者が20~30人もいれば御の字と思っていましたが、なんと募集初日に100名弱の応募、最終的に258人が申し込んでくださいました。2回目以降も毎回100名以上の申し込みをいただいています。
 最後に、今年度の新しい取り組みを3つご紹介します。
 まず、ボランティアによるキャリアコンサルティングの実施です。アカデミアをきっかけにキャリコン資格を取った人が社内にキャリコンチームを作り、キャリアコンサルティングを計画しているのです。すでに「社内キャリアコンサルタント活用のススメ」というイベントも実施しました。チームメンバーは現在6名ですが、随時募集しているようです。
 2つめは、2024年4~12月に「キャリア自律のつどい」の実施を予定しています。こちらはグループ会社人事部の男性の呼びかけで、私も含めた有志4人で運営しています。平均年齢はアラカン(還暦前後)です。呼びかけ人から「グループ会社でミドルシニア向けのキャリア施策を実施したいので、アカデミアでイベントを補強してほしい」と依頼があったのがきっかけです。現在、企画を詰めているところです。
 最後が、キリングループ内のLGBTQのアライコミュニティ「KAZ(キリン・アライズ)」の活動支援です。現在メンバーが100人程度なのですが、代表の方から「2027年までにメンバー1,000人を達成したいので力を貸してくれませんか」と依頼されました。今後アカデミア内でセミナーなどのイベントを実施予定です。

4.Q&A/深掘りタイム

(1) 出光興産様:ライフキャリアドックの試行錯誤
坂室:
出光興産様のライフキャリアドックは非常にオリジナリティがありますが、それに至るまでには試行錯誤やご苦労があったかと思います。どのような経緯で現在に至ったのでしょうか。
日本マンパワー坂室繁
司会 株式会社日本マンパワー 坂室 繁
山崎:
いろいろ苦労をした中で特に難しかったのは、研修直後は意気込む人が多い一方で、動き出すことができない。また、本人がその気でも、それを発揮できる場が提供されなければどうしようもない。それらの課題をどうすればいいかを考えました。
 そこで、研修の事前課題から3回の戦略会議まで計4ヵ月にわたって内省を深め、それを自分で言語化して「ありたい姿」を考えてもらうことを全体に組み込みました。研修でも戦略会議でも、言語化ワークの時間を設けています。
 また、質問紙票には5つの項目を記載しています。それを社員に「上司はこれを聞きますから、しっかりと自分の言葉で話せるようになって臨みましょう」と伝えた上で、班担がティーチングにならないように留意しながら、本人の気持ちを聴いて言語化をお手伝いするようにしました。
出光興産山崎正憲様
出光興産株式会社 山崎 正憲 様


(2) キリンアカデミア様:人事との連携

坂室:
キリンアカデミア様は有志の活動とのことですが、一方で会社の人事でもさまざまな施策を行っていることと思います。人事との連携はいかがでしょうか。
森:
連携というよりは棲み分けかもしれません。有志活動ではありますが、「企業内大学」なので会社の方針や人財戦略を意識した活動をしております。
キリンアカデミア森様3
「今年度の新しい取り組み」として紹介しました「ミドルシニアの集い」では、人事部から「外部講師を招いてセミナーを考えているのだけれど、せっかくなので他のグループ会社のミドルシニアにも参加してもらいたい。アカデミアで企画・運営してくれませんか。講師料は払うので」との提案をいただきました。
 それを受けて、人事では扱いづらい社外転進やキリン退職後の幸福な働き方などのテーマを検討しています。
 社員がキャリアの選択肢を増やし、自分らしくいきいきと働くための支援を続けていきたいですね。
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