イベントレポート 「大鵬薬品工業様の事例から学ぶ キャリア支援の体系づくりと部下のキャリア支援に対する上司へのサポート」(前編)
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2023.5.26
2023年2月21日、大鵬薬品工業 人事部の清水様をお招きし、「キャリア支援の体系づくりと部下のキャリア支援に対する上司へのサポート~上司と部下の良好な『キャリア対話』を目指して~」というテーマで大鵬薬品工業様のお取り組みをご紹介いただきました。
本日は、その大好評だったイベントの様子をレポートします!
目次
新たなキャリア支援体制を構築する上で大切にしたこと
清水さんからは、まず大鵬薬品工業でキャリア支援の方向性を変えた背景についてのお話がありました。
同社では、2014年に人事部内にキャリア相談室を開設、翌年に「人財開発シート」の提供を開始し、「35歳研修」「47歳研修」など、年齢に応じたキャリア研修を展開されてきたそうです。 その後年々、社員1人1人が自分のキャリアについて考えようという機運が高まりつつあるなか、2021年に「人財開発シート」をより自己探索を深めることができる「キャリアデザインシート」にリニューアル。
その「キャリアデザインシート」を対話ツールとした上司によるキャリア面談の推奨を始めるなど、これまでの人事部主導のキャリア支援から、現場主導のキャリア支援へと活動方針を大きく転換されたとのことでした。
清水:「キャリア支援の方向性を変えた背景として、社員がキャリアを考えるタイミングが多様化してきたことがあります。
当社における背景として、2019年に人事制度を刷新、年功序列から成果基準になったことがあり、このことで昇進昇格のタイミングが年齢によらなくなってきました。また、とりまく社会環境も変化し、生き方・働き方の選択肢も増え、社員1人1人がキャリアを考えるタイミングとなる転機が多様化したことで、ある特定の年齢で何かをやるというのは少し実情に合わないかなといった流れになってきました。そして、このように多様化した社員1人1人にしっかり向き合うためには、人事部対2,700人の社員ではなかなか支援が行き届かないという現実に突き当たりました。
そこで、社員1人1人の近くにいる上司の力を借りよう、社員が自ら、自由にキャリアを考える環境を整えていこうという考えが持ち上がりました。
そして、下の三つを軸に、新しいキャリア支援体制を構築していこうと動き出しました。特に1つ目は、経営層の理解を得る上でとても重要になると思いました。」
新たなキャリア支援体制を構築する上で大切にしたこと
- 1.会社の方針、会社の成長に繋げる
- 2.現場の部門長と連携する
- 3.学びたいときに自由に学べる体制/環境を整備する
重要施策1:会社の方針・会社の成長につなげる
清水:「キャリア支援を主目的とするのではなく、キャリア支援は会社のテーマである「対話の文化」を醸成するための方法の一つという位置づけにして、「キャリア対話」という名称で推進をしていきました。このように会社のテーマに結びつけたことで部門長たちの反応が良くなったと感じております。
社員同士が、日常的に目指すキャリアについて対話することは、新たな気づきや、新たな人脈・新たな選択肢の獲得などにつながり、さらには、成長意欲、チャレンジ意欲を高めることにも繋がっていきます。そしてこれは、継続的に価値を創造する人財の育成、組織の活性化、会社の継続的な成長にも繋がっていくということに結びつけていきました。
こうして、キャリア支援で目指すテーマを、『社員同士がオープンにキャリアについて語り合える対話風土の醸成』として、旗揚げをしました。」
重要施策2:現場の部門長と連携する~上司と部下の「キャリア面談」をキーとする体制~
清水:「社員同士がオープンにキャリアについて語り合える風土の醸成といっても、キャリアを考えるタイミングが多様化する中、人事部主導の個人支援だけではなかなか全体に行き渡らせていくのは難しい。そこで、各社員を日常的に近くで見ていて、人事部より各社員を理解している上司という存在に着目しました。
上司と部下をキャリア面談をツールとしてうまく繋ぎ、部下のキャリアに興味を持ってもらうというだけではなく、部下との信頼関係の構築やコミュニケーションの活性化にも繋げていければというふうに考えました。」
清水:「そこから描いたのが、上司と部下の「キャリア面談」がキーとなる体制でした(上の図)。上司が社員個人へのキャリア支援をし、社員同士が自主的に対話し自由に学ぶ。人事部は「キャリア支援のサポーター」としてそれらを支える位置づけとしました。」
キャリア面談を進めていく上での現場の課題
清水:「以前はキャリア面談ではなくて育成面談という呼び方をしていたのですが、その頃から部下の将来のキャリアに向き合うことを推奨していました。しかしながらキャリア面談に対する上司側の意欲が低いという状況がありました。
キャリア面談後の調査で、上司側から「面談のメリットが分からない」「面談の方法が分からない」「自信がない」という声が挙がっていて、キャリア面談をなんとなく敬遠している状況が見えてきたのです。
一方で部下側からも、上記資料(上司と部下の「キャリア面談」の課題)であげたような不満が出ていました。このうち、「適切なアドバイスや希望に対する支援がもらえないので時間の無駄」という声に対しては、部下側のキャリア面談に対する誤解をただしていく必要があると思っています。
キャリア面談というのは自分のやりたいことを申告する場とか自分のやりたいことを上司が叶えてくれる場ではないのですが、そういった部下側の誤解が、上司側の課題に繋がっていて、部下に何かいいことを言わなきゃいけない、いいアドバイスをしなきゃいけない、部下はそれを期待しているんだと思ってしまっている。こういったことが、上司側の「キャリア支援に自信がない」という状況に繋がっているのかなと思っています。
ですので、この部下側の意識を変える取組みの1つとして、日本マンパワーさんのセミオーダー型「キャリアデザインサポートハンドブック」を全社員に配布し、キャリアの考え方やキャリア面談に対する正しい理解について少しずつ周知を広げているところです。」
●「キャリアデザインサポートハンドブック」の資料を含むキャリア面談サポートキットの資料DLはこちら
キャリア面談への意欲を高めるための3つの取組み 1.到達目標の誤解を解く
清水:
「一方で、上司に対しては、まずキャリア面談に対する気持ちのハードルを下げるところから始めようと思いました。キャリア面談において、部下思いの上司であればあるほど、部下と面談をするからには何か良いアドバイスをしたい、部下の希望を叶えてあげなくてはと思ってしまうんですよね。
でも、キャリア面談での到達目標は、次の2つ。
- ・部下が、広い視野で自分を外側から見て、自身の考え方の癖や思い込みに気づくこと
- ・部下の頭の中が整理され、思考が後戻りせずに前に進みやすくなること
-
必要なのは「傾聴(しっかり部下の話を聴くこと)」であって、上司が、部下の問題や課題を見つける必要はないし、画期的な支援提案も不要なんです。面談のなかで、上司の「理解しているよ」「応援しているよ」という姿勢を見せるだけで、部下にとっては、安心して一歩踏み出せる下地になります。こういったキャリア面談の正しい目標と面談における上司の役割というのをしっかり具体的に説明をしていきました。すると、その程度だったらできるかもしれないと、少し気持ちのハードルを下げてもらえたような感じでした。」取組み2.キャリア面談/支援について学ぶ機会の提供~「キャリア面談サポートハンドブック」「キャリア面談ツール」清水:「2つ目の取組みとしては、上司向けに2つの教材コンテンツを提供しました。具体的には、日本マンパワーさんのセミオーダー型の「キャリア面談サポートハンドブック」と「キャリア面談ツール」です。1つ目の「キャリア面談サポートハンドブック」には、キャリア面談の重要性やキャリア面談のメリットなど、上司がキャリア面談をやってみようと思えるようなことが丁寧に記載されています。」清水:「そして、もう一つが「キャリア面談ツール」です。実際にキャリア面談を行う際、手元に置きながら面談を進めていける資料になっており、キャリア面談のステップが丁寧に記載されていて、各ステップにおける効果的な問いかけ例も掲載されています。私は特にこの問いかけ例がいいなと思っています。例えば、部下が自己理解を深めるところではこんなふうに問いかけるといいよといった例が載っているんです。なので、ちょっとキャリア面談が苦手だな、心配だなと思う上司も、これを手元に置きながらキャリア面談をしてもらうことができます。これらの冊子やツールとキャリア面談の動画コンテンツを合わせたものをeラーニングとして毎年1回、継続的に今も配信を続けています。これらのコンテンツ提供後にとったアンケートでは、以前よりキャリア面談に対する意欲が高まった上司が67%いました。そして以前から高かった方も含めるとなんと上司の約9割がキャリア面談に前向きになっているという結果になりました。面談のやり方や面談を進める上でのポイントがわかりさえすれば、「部下とのキャリア対話」に興味を持ってもらえるんだと、コンテンツを導入して大変効果があったと感じております。」取組み3.上司同士が繋がる機会の提供清水:「3つ目の取組みとして、上司同士が繋がる場として「キャリア支援について話そう」というワークショップを、2022年に2回開催しました。上司って、結構孤独なんですよね。上司同士で守秘義務を守った上で、キャリア面談でこんなこと言われちゃって困ったんだよとか、こんなふうにうまくいかなかった、みたいなことを安心して話し合える場の提供というだけでなく、日常的に部下のキャリア支援について語り合える人脈を作ってほしいなという目的も含めてこのワークショップを開催しました。」-上司向けワークショップで出てきた参加者のリアルな声キャリア相談をやってみて良かったこと
※イベント投影資料からの一部抜粋
・業務上の面談では話さないことを聴けて、その後の声かけがしやすくなった
・部下が重視しているものが、自分が思っていたものと違っていた
・業務のアサインが適していなかったことに気づけた
・部下自身が自分のやる気スイッチが明確になって業務に前向きになった
・部下自身が自分のキャリア目標に繋がる業務目標を提案してきてくれた
・新しい自分に気づいたと嬉しそうだった
清水:「ワークショップは、参加者の中からキャリア支援に対して意欲的な方を事前にグループファシリテーターとしてアサインしたり、キャリア相談員がグループ巡回をしたりしたことも功を奏してか、とても活発で率直な意見が出ていました。部下の変化が見られて自分も嬉しかったという感想もありました。
事後のアンケートでも、有意義だったという回答が約9割で、参加してみての感想としては「悩みの共有ができて気持ちが楽になった。解決には至らなかったけれども、考え方やヒントを得ることができた」というものがあり、まずはテスト感覚でやってみたのですが、わりと好評だったので今後もぜひ継続してやっていきたいと思っております。」
清水:「これらの上司支援に取り組んだ結果についても、少し共有させていただきます。
まず、嬉しい変化の一つとして、これまでは、人事部から現場に対しての一方通行の支援が多かったのですが、最近は、現場から人事部にキャリア支援関連の依頼・相談が来るようになってきました。その中には、部内のコミュニケーション活性化のために、キャリアをテーマに何かできないかといった相談もあり、キャリア支援が組織の活性化に役立つという認識が生まれつつあることを、いい感じだなと思っています。」
【後編】につづく
☆マネジャーのキャリア支援力向上に関する資料
下の画像をクリックすると資料がダウンロードできます!
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☆キャリア面談力サポートキットに関する資料
下の画像をクリックすると資料がダウンロードできます!
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営業を経て、現在は研修等の企画開発を担当。
現在の夢はキャンピングカーでワーケーションすることです。
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