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【キャリこれ所長より皆さまへ vol.5】全米キャリア開発協会 グローバル・カンファレンス2021について

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2021.6.30


~キャリこれ所長よりみなさまへ~
月に一度、「キャリアの“これから”」に対する私の想い・視点・問いを言葉にしてお届けしています。今回のvol.5では、全米キャリア開発協会 グローバル・カンファレンス2021についてご紹介します。
2021年6月29日~7月2日まで、National Career Development Association (全米キャリア開発協会、通称NCDA)のバーチャル・グローバル・カンファレンスが開催されています。このNCDAの大会には、キャリアコンサルタント養成講座を受講された方にはお馴染みのマーク・サビカス博士なども登壇され、アメリカにおけるキャリア支援の最新の研究成果が集まります。この記事は、大会開催前に執筆しているので、講演の詳細は後日お伝えしますが、テーマやトピックが興味深かったので先行してご紹介いたします。

万華鏡は人生を象徴する

今年のNCDA大会のテーマは、”A Kaleidoscope of Career Interventions in an Age of Uncertainty” 「不確実性の高い時代におけるキャリア・インターベンションの万華鏡」です。Dr. Seth C. W. Hayden会長(会長は1年ごとの任期です)はタイトルの意味をこう表現しています。
「万華鏡は人生を象徴しています。万華鏡を覗くと、そこには不思議な光景が広がっています。一度揺らすと模様が崩れますが、そこには新たな、そして同様に美しい模様が現れて驚かされます。
キャリアの専門家は、創造性と専門性を通じて、人々の破壊された人生の模様を、充実した意味のある方法で組み立てなおすことで、人々を支援する万華鏡のような存在だと言えるでしょう。万華鏡は芸術的かつ科学的なツールであり、創造的かつ体系的なキャリア支援と研究に似ています。」
なかなかぐっとくる説明ですよね。破壊と創造、死と再生は発達のプロセスでもあります。崩されるのか、自ら崩すのか。みなさんの人生において、今、人生の万華鏡はどのように見えていますか?

最近ますます注目を集める「社会正義」

今年のNCDA大会は、セッション数なんと153。大会申込者はレコーディング映像を9月まで視聴できるそうです。昨年に続き、今年も、社会正義、公平性、包括性などにちなんだ発表テーマが多数見受けられました。
社会正義(Social Justice)については、2004年あたりから経済協力開発機構(OECD)や世界銀行などの動きを中心に、「正義と権利の維持に、キャリア支援者も努めるべきだ」という主張が発信され続けています。
アメリカでは歴史的背景もあって人種の問題が取り上げられやすいのですが、日本で格差を受けやすいのは非正規社員、障がい者、高齢者、女性などかもしれません。コロナ禍においては、特定の職業の方々も貧困や失業に追いやられやすい対象層と言えるでしょう。
特定の対象層の被る格差を当たり前とせず、積極的に働きかけ、エンパワーし、アドボカシー活動を行い、必要な情報や教育を得られるようにサポートすることがキャリア支援の現場でも推進されています。
西洋の人から見ると、日本の教育では義務を叩きこまれるけれど、権利は教えられていないと見えるそうです。自ら声を上げる力を高めるサポートはもちろんのこと、声が届くように支援をすることもキャリア支援の役割なのです。現場の相談者の様子を(個人を特定できない形で)上に報告する機能を担うことも、社会正義の機能の一つと言えるかもしれません。
みなさんの職場や周辺で、声にならない声はありますか?その人たちの声を届けることも、社会をより良くする上では大切なことです。私たちは、少しでも知ることで、自分と異なる人の場合はどうなのかを想像する力が備わっているはずです。

時代のキーワードは「誠実さ」「協力」「本物」「全体性」「共同体」「エコロジー」

また、昨年来のコロナ禍の影響か、NCDA大会のセッションに、次のようなキーワードも目立ちました。インテグリティ(誠実さ)、コラボレーション(協力)、オーセンティシティ(本物である)、ホリスティック(全体性)、キャリア・コミュニティ(キャリアの共同体)、エコロジー(生態学)、脱構築、パンデミックへの対応、トラウマ、トランジション、など。
特にキャリアとエコロジーというテーマは今回はじめて目にしたので、どのような内容なのか今から楽しみです。

NCDAのテーマを俯瞰的に見ると、キャリアのこれから研究所でも追っている「人間性の発揮と社会の成熟」の方向に向かっているようにも見えます。混沌とした世界において、人と人とが誠実で本物であろうとすること、つながりあうこと、協力すること、そして人間のみならず地球全体を一つの共同体とみなすことなどのテーマが現れるということは、まさにキャリアが、単なる就職や職業選択という概念を超えて、人としての成長、在り方、社会づくりにまで進化している傾向のように感じます。
キャリアの捉え方が進化しているということは、当然キャリア支援者の支援内容も進化していく必要があります。答えや正解のない混沌とした世の中において、何をどう支援するのか?キャリア教育もキャリアコンサルティングも、新たなパラダイムの構築が求められていると言えるのかもしれません。
それでは、来月以降の記事で、実際のカンファレンスの様子をまたお伝えします。引き続きよろしくお願いします。
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水野みち プロフィール
キャリこれ研究所所長、株式会社日本マンパワー フェロー
NPO日本キャリア開発協会認定スーパーバイザー、ACCN理事、厚生労働省委託事業「SV検討委員会」委員。
【経歴】国際基督教大学卒業。1999年より日本マンパワーでキャリアカウンセラーの養成事業に参画。JCDAの立ち上げ、キャリアコンサルタント養成講座プログラム開発・テキスト執筆、普及推進に携わる。
2005年に米国で最も充実したキャリアセンターを持つペンシルバニア州立大学にて教育学修士(カウンセラー教育)取得。現在は企業内のキャリアカウンセリング、キャリア開発、組織開発、企業内キャリア支援のスーパービジョンに従事。
国家資格キャリアコンサルタント/CDA、MBTI認定ユーザー、組織開発ファシリテーター、産業カウンセラー、Dr.Robert Keganによる認定ITCファシリテーター。

■過去の「~キャリこれ所長よりみなさまへ~」
■vol4 「一人ひとりの成長を地球規模で考える」 こちら
■vol3 「新しいことへのチャレンジ ~アウェアネスの高まりやアートがもたらしてくれるもの~」 こちら
■vol.2「1月15日設立記念イベントのキーメッセージ&研究会に向けて (後編) 」こちら
■vol.1「1月15日設立記念イベントのキーメッセージ&研究会に向けて (前編) 」こちら