このとても難しいテーマをどう扱えば良いのでしょうか?
自らの特権を自覚し、意識を開く
特権は関係性の中にあるものなので、上には上がいます。また、ある文脈では自分が持つ者で、ある文脈では持たない者になることもあります。それでも自分が持つ側にいることを自覚し、罪悪感の先の行動として、自分自身の属する集団の外にいる人を尊重し、想像することが大切だとペイトン氏は言います。そして、次のような視点が役立つことを教えてくれました。
〇 特権に自覚的になるには、まず“私は誰も傷つけない”という誓いを手放すこと
誓いを手放すことで、自分が持つ特権や格差への加担についてよりよく見えてくると
いうのです。資本主義の社会に住む限り、自分は構造に加担しているのです。
誓いを手放すことで、自分が持つ特権や格差への加担についてよりよく見えてくると
いうのです。資本主義の社会に住む限り、自分は構造に加担しているのです。
〇 自分よりも特権を持たない人の声がいかに貴重かを自覚し、耳を傾ける
自分の盲点が見えている人は、特権を持たない人である可能性があります。
自分の盲点が見えている人は、特権を持たない人である可能性があります。
〇 外集団に対して想像力を働かせる
「彼らは10歳くらいの子供時代に何をして遊んだのだろう?何を食べていたのだろう?」
などと問い、人間的な共感脳を刺激してください。
「彼らは10歳くらいの子供時代に何をして遊んだのだろう?何を食べていたのだろう?」
などと問い、人間的な共感脳を刺激してください。
〇 謙虚さを取り戻す
自分の無力さを思い出すことで、謙虚さを取り戻すことが出来ます。残念ながら、
人が謙虚さを取り戻せるのは、特権を失ったときが多いようです。日本人が昔ながらに
大切にしてきた「謙虚さ」は単なる礼儀以上の深い意味があることを実感します。
自分の無力さを思い出すことで、謙虚さを取り戻すことが出来ます。残念ながら、
人が謙虚さを取り戻せるのは、特権を失ったときが多いようです。日本人が昔ながらに
大切にしてきた「謙虚さ」は単なる礼儀以上の深い意味があることを実感します。
〇 権力にまつわる個人的な影響を見直す
幼いころに家族が権力をどう扱っていたかを思い出し、その影響を考えてみます。
権力が失望や怒りなどの感情と結びついている可能性もあります。
幼いころに家族が権力をどう扱っていたかを思い出し、その影響を考えてみます。
権力が失望や怒りなどの感情と結びついている可能性もあります。
〇 トラウマを癒す
特権を持つものも、持たないものも、トラウマを抱えてしまうと、気楽さを忘れ、
攻撃的・防衛的になります。共感を通じてトラウマが癒されます。
特権を持つものも、持たないものも、トラウマを抱えてしまうと、気楽さを忘れ、
攻撃的・防衛的になります。共感を通じてトラウマが癒されます。
特権とリーダー像
また、ペイトン氏は、リーダーに対する社会の期待が及ぼす影響にも触れました。リーダーは、特権を得る代わりに、グループの期待に応えて力を維持することも求められます。そのため、個人的な自由さを抑えようとします。弱さを見せず、力強く、成果を出し、感情的に不安定さのないリーダーであろうとするのです。
この考え方は資本主義社会やマキャヴェリズムの中で長年私たちの文化に刷り込まれてきました。「権力を得たければ、つかみとらなければならない。図太くなれ。他の人が足をすくうから、気を付けなければならない」と。地位を維持するために、勝ち抜く力を持つことを証明しようとする人も多いようです。
このように、私たちの抱くリーダー像や期待もまた、リーダーが人間性を失うという構造強化に加担しているのかもしれません。
近年注目される、ハンブル(謙虚な)リーダーシップや心理的安全性などは、この特権にまつわる諸問題の解消にも間接的につながってくるのではないかと感じています。
キャリア支援者として
いかがでしたでしょうか?私たちキャリア支援者は、個々人の「自由で主体的なキャリア選択」を支援する専門家です。
しかしながら、「誰もが本当に自由なのか? 努力やチャレンジで何とかなるのか? 不平等な社会において私たちが出来ることは何か?」という問いを持ち続け、みなさんと一緒に考え続けていけることを願っています。
しかしながら、「誰もが本当に自由なのか? 努力やチャレンジで何とかなるのか? 不平等な社会において私たちが出来ることは何か?」という問いを持ち続け、みなさんと一緒に考え続けていけることを願っています。
昔、生活保護受給者を支援するキャリアコンサルタントの方とトレーニングの場を共にすることがありました。その際に印象的だった話がありました。
「前科を持つ若者の社会復帰のために、彼らを積極的に採用してくれる会社はあるんですよ。そんな会社の経営者は、同じく生活に苦労していたり、昔やんちゃをして社会から疎外されたりした経験を持つ方々なんです。」
得た特権を、自分のためだけではなく、社会や誰かのために使うというのはこういうことなのかと思い知らされました。
「前科を持つ若者の社会復帰のために、彼らを積極的に採用してくれる会社はあるんですよ。そんな会社の経営者は、同じく生活に苦労していたり、昔やんちゃをして社会から疎外されたりした経験を持つ方々なんです。」
得た特権を、自分のためだけではなく、社会や誰かのために使うというのはこういうことなのかと思い知らされました。
NCDA(全米キャリア開発協会)でも近年、社会正義(Social Justice)を盛んに取り上げています。まずは、自分の特権に自覚的になることがスタートラインです。自らの特権や恩恵に無自覚であると、キャリア支援者は相談者に対して「チャレンジしてみたら?」「やってみなよ!」などと気楽に言ってしまい、相手により多くの苦しみを感じさせてしまうからです。
そして、もし少しでも力を持つ側にいるのならば、持たない側の人の声が届きやすい組織や社会になるよう配慮し、手を貸していくということが大切なのだろうと思います。私自身も、組織や地域、社会の中で、どのような働きかけが出来るのかをさらに考えていきたいと思っています。
そして、もし少しでも力を持つ側にいるのならば、持たない側の人の声が届きやすい組織や社会になるよう配慮し、手を貸していくということが大切なのだろうと思います。私自身も、組織や地域、社会の中で、どのような働きかけが出来るのかをさらに考えていきたいと思っています。
この記事が、みなさんが改めて考えたり、身近な人と対話したりするきっかけになることを願っています。
水野みち プロフィール
キャリこれ研究所所長、株式会社日本マンパワー フェロー
NPO日本キャリア開発協会認定スーパーバイザー、ACCN理事、厚生労働省委託事業「SV検討委員会」委員。
【経歴】国際基督教大学卒業。1999年より日本マンパワーでキャリアカウンセラーの養成事業に参画。JCDAの立ち上げ、キャリアコンサルタント養成講座プログラム開発・テキスト執筆、普及推進に携わる。
2005年に米国で最も充実したキャリアセンターを持つペンシルバニア州立大学にて教育学修士(カウンセラー教育)取得。現在は企業内のキャリアカウンセリング、キャリア開発、組織開発、企業内キャリア支援のスーパービジョンに従事。
NPO日本キャリア開発協会認定スーパーバイザー、ACCN理事、厚生労働省委託事業「SV検討委員会」委員。
【経歴】国際基督教大学卒業。1999年より日本マンパワーでキャリアカウンセラーの養成事業に参画。JCDAの立ち上げ、キャリアコンサルタント養成講座プログラム開発・テキスト執筆、普及推進に携わる。
2005年に米国で最も充実したキャリアセンターを持つペンシルバニア州立大学にて教育学修士(カウンセラー教育)取得。現在は企業内のキャリアカウンセリング、キャリア開発、組織開発、企業内キャリア支援のスーパービジョンに従事。
国家資格キャリアコンサルタント/CDA、MBTI認定ユーザー、組織開発ファシリテーター、産業カウンセラー、Dr.Robert Keganによる認定ITCファシリテーター。
■過去の「~キャリこれ所長よりみなさまへ~」
■vol7 「格差と特権やパワーについて(前編)」 こちら
■vol6 「Z世代のキャリア観」 こちら
■vol5 「全米キャリア開発協会 グローバル・カンファレンス2021について」 こちら
キャリアのこれから研究所・所長、日本マンパワー・フェロー、JCDA認定スーパーバイザー、CDAインストラクター、
趣味:物語づくり、いろんな人と会っておしゃべりすること
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