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越境と体験から学ぶジョブクラフティングの本質と実践(前編)

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イベント

2023.4.28


2022年11月29日、イベント『越境と体験から学ぶジョブクラフティングの本質と実践』を開催しました。
第1部はサッカー元日本代表の石川直宏さんをゲストにプロフェッショナルの世界におけるジョブクラフティングの可能性を考え、第2部ではジョブクラフティング研修の体験セッションを行いました。
少し遅くなってしまいましたが、当日の様子をダイジェストでお届けします!
■イベント登壇者 等
【ゲスト】サッカー元日本代表 石川 直宏(いしかわ なおひろ)氏
【ファシリテーター】株式会社Criacao 北原 亘(きたはら わたる) 氏
【レポート執筆】株式会社日本マンパワー 中村 裕(なかむら ゆたか)
■第2部「セルフマネジメント力が高まるジョブクラフティング研修の体験セッション」はこちら

1.なぜアスリート(スポーツ)の世界から学ぶのか
はじめに、体験会ファシリテーターを務める北原さんから、第1部のねらいやゴールについて触れました。
北原氏:本日(第1部)のゴールは2つあります。1つ目のゴールは、「問いの探求・深堀りを行い、実務遂行のヒントを持ち帰る」こと。というのも、私たちは今、変化が激しい時代に生きていて、一つの解を見つけ出し、それが正解と伝えるのは難しい状況にあります。今、重要なのは、まずは「良質な問い」を立て、その後に「ソリューションの質を上げる」ことで課題解決やイノベーションを起こすことです。本日も、皆さんと共に問いを立てて深めていくというところを一緒にしていきたいと思っています。
2つ目のゴールは「越境学習」の要素を体験いただくことです。アスリートやスポーツの世界に越境していただき、アナロジー(類推)を効かせて、ぜひ自組織やご自身の学びにつなげていただければと思っています。
北原氏:アスリートが生きている環境には、上記のような特徴があります。ビジネスの世界も、アスリートの生きている環境同様、現在は非常に変化が激しく、予測不可能な状態になってきました。
この環境変化の激しいVUCAの時代、どのように自分が変化し、問いをたてて課題解決していくか、スポーツの世界が気付きを深める参考になれば幸いです。

2.心の感度や人生の豊かさを求めて
続いて、本日のゲスト 石川さんが登場。Jリーガーの平均引退年齢が25-26才と言われる中、17年間の長きにわたり、7回の大ケガを乗り越え、現役選手として活躍し続けたキャリアストーリーが語られました。
サッカー選手として日本代表選出やオリンピック出場、数々のタイトル獲得など輝かしいキャリアをお持ちの石川さん。現在はJリーグFC東京のクラブコミュニケーターとして、チームやファン・サポーター、行政や地域社会を「つなぐ」役割を担っています。
それだけでなく、パラスポーツを通じた社会貢献活動、少年院でのサッカー指導に力を入れたり、アスリートの身体を作る「食」に着目して農家とのコミュニティを作ったりするなど、異なる分野にも越境しながら活躍の場を広げています。

3.3割の喜びで7割の苦しみを乗り越える
ここから、いよいよ本題に入っていきます。
石川さんは、事前に書いてきてくれたライフラインチャートを使って、ご自身のキャリアをこう振り返っていました。

※石川さんのライフラインチャート(怪我ver.)
石川氏:サッカーを通じた自分の中での満足度を振り返ったときに、7割は苦しかったです。外的要因に左右されながら変化を求められる中で、変化を乗り越えた先に勝利やプレーでの喜びがありますが、喜びの割合は3割程度です。ただ、その3割の価値は、7割の苦しみの乗り越え方で変わってくることをサッカー選手としてのキャリアを歩む中で感じました。
大きなケガによる身体の変化、監督交代によって求められることが変わっていくなど、現役時代は苦しみや難しさの連続だったという石川さん。ライバルや若手選手とのポジション争いもあります。そんな中、自身と向き合い、心がけていたことが4つあると石川さんは言います。
石川氏:上のこの4つを続けていくと、新たな自分に進化していきます。7割の苦しさや難しさに向き合いながら、変化を受け入れて変換した結果、3割の価値ある喜びに繋がる。この繰り返しだったと思います。

4.うまくいかない時の自分との向き合い方 ~地道な積み重ねが、チャンスにつながる~
チームや日本代表での活動も含めると、現役生活18年間で約20名の監督のもとでプレーした石川さん。日本代表ではジーコ監督や岡田監督とも一緒に戦ってきました。ここではプロ契約して最初に移籍するまでの監督との向き合い方・成績が振るわなかった(うまくいかなかった)時の自分の向き合い方についてお話いただきました。
石川氏:監督によって本当に十人十色で、求められ方も変わります。プロ1年目~2年目、ほとんど試合に出られず3年目を迎える頃。当時は横浜F・マリノスというチームにいました。試合に出られないから監督にも見てもらえないし評価のされようもない。どうチャンスをものにするか自問自答を繰り返していました。ただ、試合に出ようが出まいが、取り組む姿勢は変えず、PDCAを積み重ねることを重視してきました。
監督に評価を受けるというより、どんな状況でもどれだけ自分自身を高められるかということにフォーカスをして、そのときだからこそできることを自分の中で続けました。
そうした地道な努力を積み重ねたことで、石川さんに予期せぬチャンスが訪れます。
石川氏:2軍の試合で何もできずに終わってしまったことがありました。自分でもどうしたらいいかわからないという感情が生まれて、試合後にボールをかき集めてひたすらゴールに向かってボールを蹴っていた時のことです。
その様子を、たまたまFC東京の監督が見ていたのです。僕としては、何かをアピールしようと思ってやっていたわけではないのですが、ボールをひたすら蹴る姿にエネルギーを感じたとのこと。FC東京はちょうど同じポジションの選手たちが相次いで怪我をしてしまったこともあり、移籍するチャンスをいただきました。
そして、その5日後に試合に出て活躍の場を得て、試合にも勝ちました!翌年は、日本代表に選ばれ、結果的にFC東京には丸15年在籍しました。
どこにチャンスがあるかわからないので自分と向き合ってコツコツ積み重ねていくこと、自分でチャンスをつかみにいくこと、与えてもらったチャンスをしっかりと自分の中で責任を持って結果にして恩返ししていくこと、そんな気持ちが芽生えた一番最初の移籍での監督や自身との向き合い方でした。
地道な努力の積み重ねが思わぬチャンスにつながり、移籍のチャンスをものにした石川さん。
私はこの話を聞いてキャリア理論の「ハップンスタンスセオリー」を思い出しました。「計画された偶発性理論」とも言われます。
この理論では、好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心を持つことで、偶然をキャリアの機会として利用できるとしています。石川さんのエピソードは、予期せぬ出来事も含めて、自分に起こったことをいかに意味づけして自分のとってのよいキャリア形成につなげていくのか、そんな示唆に富んだ経験談でした。
変化を受け入れることには難しさもあるが、新たな自分と出会える
石川さんは、この後も様々な監督の下でプレーします。中にはプレースタイルの180度変更を求められたこともあるそうです。
石川氏:監督によって求められ方は違いますが、その変化をまずは「あるがままに」受け入れることを大切にしています。受容する中で、コーチ・監督や周りの選手たちにしたいことを伝えたり、逆に傾聴したりして自分なりに変換して進化していく。
こういうことを繰り返していって、また日本代表に復帰することができました。プレースタイルを変えると自分が自分でなくなってしまうのではないか、そんな葛藤はありました。変化を受け入れることには難しさもありますが、結果的に新たな自分と出会えたと思っています。

5.なぜ久保建英選手は若くして世界で活躍できているのか ~変換する力~
東京オリンピックやカタールワールドカップで、日本代表として活躍した久保建英選手。一緒にプレーをした経験のある石川さんは、こう語ります。
石川氏:結果を残す選手とそうじゃない選手の大きな違いは、変化に対して敏感に反応し、なおかつそれを受け入れてコミュニケーションを取り、自分なりの変換をして進化に繋げられることができるかどうかです。これを驚くようなスピードでできるのが久保建英選手です。
僕も彼をライバルとして見ていましたが、受け入れる姿勢、謙虚な姿勢、自分はこう思うと言葉で伝えられるコミュニケーションスキルが彼には備わっていました。だからこそ成長速度も速い。もちろん技術や戦術の理解度も高いですが、彼の姿から学んだのは「変換する力」でした。

6.自分ができること・変えられることに注目する
ファシリテーターの北原さんが深掘りをします。
北原氏:サッカーは、監督やチームメンバーが速いペースで変わるし、戦略・戦術もどんどん更新されますよね。石川さんは、成績が振るわない・なにか上手くいかないといった時、監督やチームメイトのせいにするなど、心のベクトルが外的要因に向くことはなかったのでしょうか?
石川氏:もちろんありました。ただそんな自分でいると冷静にプレーできない、周りとの関係性も悪化する、そして孤立するという悪循環に陥ります。そんな時でも自分のできることや自分が変えられる部分を変えていこうというマインドにシフトチェンジしました。誰かのせいにするのではなく、この環境は逆に自分が成長するチャンスととらえ、今だからこそできることを一つでも多く増やす。
環境や誰かのせいにして、何もしないままでいると、自身の成長もなく、いざチャンスが来たときにつかめません。移籍した時の経験が、自分のあり方に大きく影響を与えていると思います。やはり、日々の積み重ねによって、チャンスが来た時の自分の状態で大きな差が生まれると思います。

7.「自分のため」から「誰かのため」にプレーすることで見えてきた景色
続いてのテーマは「ケガとの向き合い方」です。大きなケガを7回も経験している石川さん。
サッカー選手は試合でのプレーで存在価値を発揮しますが、ケガはその場を奪います。やりたいことができない葛藤、先が見えない不安との闘い、自分の代わりはいくらでもいるのではという焦燥感。
どうやって、そういった感情を乗り越えてきたのでしょうか。石川選手は、1回目に大ケガをした時のリハビリ期間中の出来事を語ってくれました。
石川氏:リハビリ中は、何よりファン・サポーターの存在が一番大きかったです。自分が怪我して、代わりに出た選手、チャンスを掴んだ選手が活躍する。この現実を受け入れなくちゃいけない葛藤がありました。それがリハビリ中、一番大変なことでした。それを受け入れられるようにしてくれたのがファン・サポーターでした。
石川氏:入院中にFC東京の試合をテレビで見ていた時、「俺たちはナオを待っている」という横断幕が掲げられていました。この瞬間です。この横断幕を見たときにサッカー人生が自分だけのものじゃなくなりました。自分のためだけの頑張りでは限界があります。どれだけ頑張っても報われないときもあります。だけど、たくさんの人たちに支えてもらったり応援してもらったりしていると、そういう人たちのために頑張ろうと新しいエネルギーが湧きます。
この横断幕は僕が試合に出てない中、1年ずっと味の素スタジアムでの試合のたびに掲げられていました。1年後の復帰戦で横断幕のメッセージは「俺たちはナオを待っていた」に変わっていました。これを見たときに僕はピッチの上で涙しました。「自分のため」にやってきたサッカー人生から「誰かのため」にと変換しました。変換できたのは、ファン・サポーターのおかげであり、怪我があったからこそだと思います。
誰しも、仕事がうまくいかないときやしんどい時に、「自分以外の誰かや何かのために」頑張ることで、モチベートされたり、気持ちが鼓舞されたりした経験はあるのではないでしょうか?

8.「絶対解」でなく「最適解」や「納得解」を導き出す
北原氏:石川さんのお話を伺って、理念をしっかり持たれていると感じました。サッカーはあくまでツール。自分が成し遂げたい「WILL(ファン・サポーターを喜ばせたい)」がしっかり見えていたからこそ、サッカーができないときの苦しさも、乗り越えられたのではないかと思いました。
石川氏:多様なメンバーがいて、みんな上手くなりたいし、勝ちたいし、有名になりたい。ただ、「自分のため」だけを考えていては、各メンバーとの信用・信頼は築けません。
また、サッカーという競技は目まぐるしく状況が変わるのでこれをやっていけば勝てるみたいな「絶対の解」を求めても出てきません。
絶対解を求めると多くの場合に監督やチームメイトと喧嘩が起こります。そうでなく、お互いにとっての「最適な解」や「納得できる解」を、そのたびそのたびに導いていった方が結果的にチームの結果が出て、自分のパフォーマンスも上がります。

9.参加者との質疑応答 ~やったことが結果につながらない時の心のもちようは?~
ここからは参加者と石川さんの対話の時間に移りました。多くの質疑応答がありましたが、参加者の大多数の方がうんうんと頷かれていたものを、1つだけピックアップしてお届けします。
質問:自分がやっていることが結果や成果につながらないときにモヤモヤしてしまいます。その時の心の持ちようや考え方にアドバイスをいただきたいです。
石川氏:目に見える変化や進化が感じられないとそれが本当にいいことなのか、不安になりますよね。ただ、結果として表れなかったとしてもそこに向かっていく「積み重ねの差」はきっとあると思います。結果がすぐに出ない中でそれを積み重ねる難しさはもちろんありますが、その中での成長を感じたり、それが別のところで新しい価値につながったりします。
積み重ねることをどう意味付けしていくのか。自分を信じて積み重ねることでこの先には何か必ず新たな景色が待っていることをイメージしながら自分をモチベートする。絶対解を求めすぎずに、納得できる部分とか最適解というのを導き出しながら積み重ねることが必要なのかなと思います。
北原氏:「バックキャスティング」と「フォアキャスティング」という考え方があります。バックキャスティングでは、実現したい未来を起点に、やるべき行動を考えます。フォアキャスティングでは、現在を起点に、目の前のことを積み重ね未来を導き出します。どちらが良い悪いではなく、今自分がどっちを選んでいるのかを整理しながら進んでいくことが大切ではないかと思います。
「情熱=情けない熱」を大切にチャレンジし続ける
最後に石川さんから参加者にメッセージが贈られました。
石川氏:僕は「情熱」というものを大事にしています。これも自分なりの意味づけですが、情熱は「情けない熱」と書きます。いいときの熱ばかりでなくていいと思っています。
苦しくてうまくいかなかったときの情けない熱もエネルギーです。それを無駄にするのでなくどう貯めて情熱に変えていくか。他人や環境のせいにするとその熱自体が外に出て行ってしまいます。文句を言ったりするのでなく自分の中で向き合ってその熱を貯めて次に繋げる。その変換の先にはたくさんの喜びがあります。その情熱を大事にしながら、これからもチャレンジし続けたいと思います。
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