いま急速に関心が高まっているジョブ型雇用。その現象を多角的に検証し、その本質を考えて行くことを目的としてスタートした本連載。前回に引き続き、グローバルメドテックカンパニーとしての変貌を遂げつつある中、職務型(ジョブ型)人事へと舵を切ったオリンパス株式会社の取組みをレポートします。
■オリンパス株式会社の取組みレポート前編は こちら
御社がグローバル一体化経営やジョブ型制度を導入されることによってキャリアの位置づけは、今後どのように変化していくでしょうか?
当社全体の階層を大きく括ると、このピラミッドのようなイメージとなります。(図)。ノンマネージャー層、一般課長層を含めて各機能を束ねるリーダー層、事業などの機能のトップ層、そして役員層です。このときに「キャリアは上がる一方ではない」ということをきちんと理解浸透させていきたい、と思っています。例えばノンマネージャーとしての仕事をやり続ける選択肢もあります。その一方、年齢に関係なく、その役割に適任と判断した時点で早く上がるチャンスはありますと。但しその役割が難しければ、1回出直すのもありだよ、と。
「キャリアの道が色々ある」という理解浸透に向けては、制度を構築するチームと概念を育てるチーム(組織人材開発チーム)が連携して取り組んでいます。
ここで難しいのは「キャリアパスをどこまで作るか」という問題です。正確に作り過ぎてしまうと、会社が与えたものになってしまう。今回の制度の趣旨でいくと、グローバル人材では「自立(自律)」というテーマが一番大きく、自立した人材のためのキャリアパスをどこまで描くべきか・・・。
キャリアパスを作りすぎるとそれに頼ってしまい、逆に作らなさすぎると何もないからよくわからない、と言われてしまう・・・。そこをどう落としどころを作っていくのか、現場のマネジメントと丁寧にコミュニケーションしながら人材マネジメント全体のあり方を考えていく、というのが次の課題です。
それ(キャリアパスをどこまで作るか)によって、能力開発のあり方も変わってきますね。
変わっていきます。たとえば自己学習ツールを増やしたり、オンボーディングにおいてきちんと情報提供をして、役割認識できるようにフォローしたりしていきます。また、専門知識をつけたりビジネススキルやリーダーシップスキルをつけたりという部分は動画を使った自己学習などを用意して「自らやってください」という風土作りが必要かなと思います。
新卒採用は大事なので継続しますし、会社に入ってもらった以上、一定のところまで育てる責任もあるので、ローテーションをしながら教育の機会を提供していく取組みを引き続き行っていく必要がある、と考えています。
ただ、ある一定のレベル以上になると、自分でその仕事に興味関心を持って自分を磨いて挑戦する社員にチャンスを与えて行きます。どこまで手をかけるかということが課題です。
ただ、ある一定のレベル以上になると、自分でその仕事に興味関心を持って自分を磨いて挑戦する社員にチャンスを与えて行きます。どこまで手をかけるかということが課題です。
今後の教育体系は、階層別という名前は残していますが、職務型(ジョブ型)に作り直していきます。
自律学習という部分では、グローバル標準のビジネススキル、全世界共通のロジカルシンキングやコーチングといったテーマを、グローバル共通軸でジョブに合わせたレベルで用意しています。これまでは会社として受講してくださいという研修が多かったのですが、これからは自分で決めて選んでください、という考え方に変えていきます。
自律学習という部分では、グローバル標準のビジネススキル、全世界共通のロジカルシンキングやコーチングといったテーマを、グローバル共通軸でジョブに合わせたレベルで用意しています。これまでは会社として受講してくださいという研修が多かったのですが、これからは自分で決めて選んでください、という考え方に変えていきます。
また、リーダーシップ強化については全世界で共通のコンピテンシーを用意して、その理解を深めるワークショップをグローバル教育担当部門が企画していて、そのプログラムを通じた次世代リーダーシップ育成へのチャレンジを、今後やっていきます。
採用戦略も変わっていきますでしょうか?
採用戦略については、職務型(ジョブ型)制度によってポジションやそれに伴うJob Description(職務記述書)が明確になっていきます。それによって、ポジションの空き状況が明確になりつつあります。ポジションが空いたら社内で公募しますし候補者がいなければ外から取ります、という形での社内の流動性と社外採用の連動を今後やっていくことになりますし、よりダイレクトリクルーティングの色が濃くなっていくと思います。
意識改革がすごく大事だという点では、今後、マネジメントやリーダーに求められる能力の変化を、どのように捉えていらっしゃいますか?
グローバル共通のリーダーシップコンピテンシーを制定したのですが、その中で、社内的に弱いと言われているのが、戦略的思考、イノベーション推進の能力、組織を導くコラボレーション人材育成、意欲の喚起といった部分です。
ここをいかに強化していくかが、全世界のテーマになっています。リーダー、マネージャー以上には、このリーダーシップコンピテンシーを作ることで360度フィードバックをしたり、ワークショップをしたりといった様々な手法で、このコンピテンシーを持ってもらう動きを、これから二、三年かけてやっていきます。
ここをいかに強化していくかが、全世界のテーマになっています。リーダー、マネージャー以上には、このリーダーシップコンピテンシーを作ることで360度フィードバックをしたり、ワークショップをしたりといった様々な手法で、このコンピテンシーを持ってもらう動きを、これから二、三年かけてやっていきます。
今回の職務型の人事制度の導入に伴う、社内のキャリア支援者やキャリアコンサルタントの活用の可能性、期待値や課題感について、お聞かせいただけますか。
マネージャーやダイレクターのキャリア支援に加えて、第3者の視点も必要で、HRとしてはキャリア支援者やキャリアコンサルタントの活用などで、社内のキャリア面談等の支援をするということは非常に重要だと思っています。
実際それを始めていて、様々な現場の声や、HR施策に対する提言や、そこから出てくる問題意識や課題は非常に有意義なものになるので、今後積極的に検討していきます。
実際それを始めていて、様々な現場の声や、HR施策に対する提言や、そこから出てくる問題意識や課題は非常に有意義なものになるので、今後積極的に検討していきます。
《 ジョブ型雇用とキャリア 過去の記事 》
■ジョブ型雇用とキャリアvol.2 より自由で、より公平なキャリアをめざして(前編)
労働政策研究・研修機構 キャリア支援部門 下村氏インタビュー こちら
■ジョブ型雇用とキャリアvol.1 -その“なぜ”を問う- こちら
■ジョブ型雇用とキャリアvol.2 より自由で、より公平なキャリアをめざして(前編)
労働政策研究・研修機構 キャリア支援部門 下村氏インタビュー こちら
■ジョブ型雇用とキャリアvol.1 -その“なぜ”を問う- こちら
キャリアのこれから研究所プロデューサー。美大の大学院に飛び込んで
自ら創造性の再開発を実験中
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