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これからのキャリア開発に大切な「ジョブクラフティング」~第4回:千葉興業銀行様での導入事例~

連載記事

2021.8.13


連載第1~3回目(こちら)まで、ジョブクラフィティングの基礎知識やジョブクラフティング研修について解説してきました。
今回は、実際に「ジョブクラフティング研修」を導入いただいている企業様の声をお届けしたいと思い、入行3年目行員を対象に研修をご導入いただいている千葉興業銀行の人材開発室室長 加藤陽介様へインタビュー致しました。ぜひご一読ください!
(※とくに、研修導入を検討されている企業様にとっては参考になる情報が満載です!)
〇ゲスト
株式会社千葉興業銀行
人事部 部長代理 人材開発室 室長
加藤 陽介 様
〇インタビュアー・編集
株式会社日本マンパワー マネジメントコンサルタント
秋本 暢哉

Q1. 貴行で「ジョブクラフティング研修」を導入された背景を教えてください

当行では、2004年以降、自律した行員の育成を図るべく、キャリアディベロップメントプログラムを主軸としたキャリア開発支援に取り組んでいます。その一環として、節目毎にキャリア開発研修会を開催しております。
現状の研修体系は以下のとおりです。
①新入行員【新入行員研修会・新入行員フォロー研修会】
②3年目行員【ヤングキャリア研修会】・・・本件
③役付き前の行員(26~30歳)【キャリアメイキング研修会】
④17年目行員(40歳前後)【キャリアプランニング研修会】
⑤50歳行員【ワークライフプランセミナー】
その中の1つである3年目行員【ヤングキャリア研修会】に「ジョブクラフィティング研修」を採用した背景についてお話しいたします。
当行では、「コンサルティング考動」をコア戦略としており、そのための期待する人材像を「自律成長型人材としています。
「自律成長型人材」になるためには、従業員自らが能力開発を積極的に行うことが求められており、そのための動機付けをいかに図るかが課題となっています。
3年目行員は、「検索~試行期(自分の適性や能力について確信まで持てない時期)」にあるといっても過言ではなく、「確立または発展期(自分の適性や能力がどのようなものか理解できるようになる時期)」まで到達できる者はごく一部の行員です。
また当行における入行3年目は大きな節目の年となっております。彼らは2年間の新入行員育成プログラムという育成期間を卒業し、3年目になると担当顧客を持ち始め、本格的な営業活動をスタートさせます。
そのため周囲からの仕事の期待が大きくなり、その期待に応えられるか不安を感じている者が多い状況です。
さらに人事異動を経験する人が出始めるタイミングでもあります。人事異動になると、数年上の先輩の後釜を担うため、それまで以上に大きな期待を背負うことになります。中には、その期待に押しつぶされ、メンタルダウンや退職に至るケースもあります。
そうした課題・問題点に対応すべく、従来、自前で行っていた「自己理解・環境理解・キャリアビジョンの設定」というオーソドックスなステップで実施していたキャリア開発研修を、私が手直しして実施してみましたが「何か違うな」としっくりこないものを感じていました。
しっくりこない理由としては、「業務と離れている感、つまり業務への紐づけが今一つ」「身に付けたスキルの抽象化ができない受講者が多い」「強みのスキルを使っているはずだが、本人は気づいていない」などがありました。
もっと研修の中で「業務や強みと紐づけが出来るように研修内容を見直す時期だ」と考えていた折、マンパワーさんにジョブクラフィティング研修のご提案をいただき、課題・問題点への対応にフィット感があり、2018年から入行3年目向けのキャリア研修として導入しました。

Q2.入行3年目向けのキャリア研修としてジョブクラフティング研修を採用した理由を具体的にお聞かせいただけますか?

ジョブクラフティング研修を通じて3年目行員に気づきや学びを与えたいポイントは4点あります。
1点目は、この不安定な時期を乗り越えるためには、周囲からの期待や「やるべき仕事」ばかりに目を向けるべきではないこと。
2点目は、期待された役割が発揮できないからと言って、早々に「自分には合わない仕事」「自分には他の仕事があっている」と判断すべきではないこと。
3点目は、入行3年目には自分の適性・能力の可能性を狭めて欲しくない。「まだまだたくさんの可能性を秘めている」という視点をもって仕事に取り組んでもらいたいこと。
4点目は、「これはやりたい仕事、これはやりたくない仕事」と考える毎日を過ごすのではなく、「現在の仕事をポジティブに捉え、仕事経験を通して気づいた課題に対して、能動的な学習による能力を獲得していく」という習慣をつけて欲しいということ。
これらを満たしてくれるプログラムとして、ジョブクラフティング研修を採用しました。
※対談はマスク着用の上実施。撮影時のみマスクを外しております。

Q3.ジョブクラフィティング研修の導入をしてみていかがでしょうか?

以前のキャリア研修では、キャリアビジョンを半期、1年に設定して受講者に「キャリアビジョンの設定」を描いてもらっていましたが、ビジョンが描けない人が多くいました。私自身、キャリアビジョンよりもPlanned Happenstanceへの想いもあったことから、ジョブクラフティング研修のご提案により、これまでのキャリア研修を大きく見直すきっかけの1つになりました。
無理やりキャリアビジョンを考えてもらうよりは、目先のことを考えたいという若手が多くなっているので、ジョブクラフティング研修は今の若手にフィットしているように感じます。研修では目先のキャリアや仕事をまずは考えてもらうことで、仕事に楽しさや充実感を感じてもらえれば良いなと思います。

Q4.ジョブクラフィティング研修の導入後の受講生における効果はいかがでしょうか?

定量面、定性面から以下のような効果があると認識しています。

<定量面>

2010年から、無記名で「組織活力調査」(エンゲージメント)を毎年実施しています。50個の調査項目の中で「適職感」「自分力発揮」「能力向上」「社員尊重」の満足度指数が良化し、人材定着や成果を上げる可能性が高まっています。
組織活力調査 20歳代の前年比
・今の仕事は自分のやりたい仕事である 62%→69%(+7)
・今の仕事に意義や意味を感じられる 68%→77%(+9)
・今の仕事は自分の力を十分に発揮できる 53%→61%(+8)
・仕事にやりがいを感じることができる 64%→71%(+7)
・仕事上のノウハウやコツ、成功事例を共有する場がある 65%→70%(+5)
・今の仕事は自分のキャリアアップ、能力向上に役立っている 74%→77%(+3)
このように数値は高く、前年比を少しづつ超えています。2018年からジョブクラフティング研修を採用したヤングキャリア研修会受講者の比率が多くなっているので、20歳代の数値の向上に貢献していると思います。

<定性面>

前年度の受講者に対して研修受講の1年後に「研修受講後の変化」についてヒアリングしたところ、以下のような声がありました。
~受講者の声~
●任される仕事が増えて忙しくなり、モチベーションの維持が難しくなっていたが、自分の将来や銀行で働く意味を再確認することで、仕事へのモチベーションが保てるようになった。仕事が辛くなったとき、やめたいと思うときに働く意味を考え直し、諦めずに取り組むように自分の気持ちを整えられるようになった。
●改めて社会人としての自分を見つめ直す良い機会となり、経験に基づいて行動できるようになったと思う。自分の特徴を理解できるようになってから、失敗や成功が目の前で起こっても冷静に判断できるようになったので、イレギュラーな事に順応できるようになった。自分の場合、取組でなく「考え方」を変えた。
●自身の成功体験は紙に残すようになった。見返すことで自身の励みやモチベーションの向上に繋がった。自身の仕事に対する責任感が強まった。これにより、預かり資産の新規獲得、収益獲得に繋がった。
●不得意な事・苦手意識のあるものに対してもプラスに見て自分の強みとして考えられるようになった。成功体験、反省点を振り返りメモするようになった。成功体験があると自信がつくし、反省と対策を意識できるようになり改善されていったと思う。
●細かく目標を立て、その目標に向けて日々意識して行動するようになった。上司へ日次報告を毎日行うようにした。毎週金曜に週間行動予定表を振り返り、上手く話せたお客さまや成約したお客さま欄へ○をつけるようになった。小さな目標ができて前向きに行動するようになった。自分の強みと弱みが何か分かるようになった。
●スモールステップの考え方を活用するようになったので、事細かに上司に報告をするようになった
●行動予定表において自己評価をするようになった(うまくいった人〇 ダメだった時△など)。そして成功体験を活かすようになってきた。
●俯瞰してみることが出来るようになり、イレギュラーへの対応が出来るようになった。
●つらくなった時に、働く意義など、見返すことで冷静になれた。

Q5.ジョブクラフィティング研修は、研修後に「経験学習」を5か月間実践することを事後課題としています。上司にもその支援をしていただいていますが、上司からの反応はいかがですか?

上司からは、次のようなコメントがありました。
●部下が自分自身の成功体験を紙に書きだすようになり、見直している姿を見るようになった。
●自分の仕事を俯瞰的に見るようになり、責任感が強くなっている様子も見えてきて、営業としてのスキル、成果も上がっている

Q6.多忙な上司に経験学習の支援をお願いしていますが、上司からの不満の声はありませんか?

上司からの不満の声はありません。 成功体験から持論を言語化し、上司がしっかりフォローすることで仕事での成果につながっていると思います。

Q7. 今後に向けた課題や施策を教えてください

主に2つあります。
1つ目は、受講者の研修当日や研修後の「経験学習」について書いている内容を見ると、受講者によって内容の質・量に顕著な差があります。これに対しては、何らかの仕掛けをしていきたいと考えています。現在は、1ヶ月のスパンで経験学習の振り返りをしていますが、短いスパンで振り返りをしていくことも検討していきたいです。
今年度から入行1年目の行員はチームを組み、週次、日次で目標設定と振り返りを行っています。振り返りテーマは、業務習得目標や行動目標の結果に対して行っています。まだ、取り組み間もない施策ですが、それなりの手ごたえを感じています。この方法を入行3年目行員の経験学習の実践においても採用してみるのも面白いと考えています。
2つ目は、後輩が先輩から良い点を学べる仕組みづくりをしていきたいと思います。
例えば、「先輩が研修中に作成し、研修後の経験学習の実践を記録したワークシートをレベル別・職種別にして開示してみる」「ヤングキャリア研修会のフォローとして持論の発表をテーマにしたワークショップを開催し、持論や成功体験を後輩に聞いてもらう」など先輩がジョブクラフティングや経験学習で実施した成果を後輩と共有し、相互啓発できるような場を創っていきたいと思います。
秋本:今日は、今後の研修プログラム開発に向けた貴重なお話をありがとうございました!
■過去のジョブクラフティングに関する記事
【第1回】ジョブクラフティングが企業で求められる背景とは?
 こちら
【第2回】具体的な方法と日本マンパワーのジョブクラフティング研修~ こちら
【第3回】ジョブクラフティングを活用した効果的1on1ミーティングの進め方 こちら